
「ミソジニスト(女性蔑視主義者)」を自称し、「マノスフィア(男性至上主義のコミュニティ)」のリーダー格として知られるアンドリュー・テイトと弟のトリスタン・テイトが2月27日、身柄を拘束されていたルーマニアで釈放され、アメリカ・フロリダ州に到着した。
アメリカとイギリスの二重国籍を持ち、元キックボクサーでソーシャルメディアインフルエンサーとして知られるアンドリュー・テイトは、複数の女性に対するレイプや人身売買、組織犯罪などの容疑で2022年にルーマニアで逮捕され、起訴された。一方、テイト兄弟は容疑を否認している。
ルーマニア政府は27日朝、国外渡航制限を突然解除し、テイト兄弟はその日のうちにアメリカに向かった。
渡航制限がどのような経緯で解除されたのかは明らかになっていない。しかしトランプ政権がルーマニア当局に制限解除を求める圧力をかけたという報道もある。
一方トランプ氏は27日、記者団の取材に短時間だけ応じ、テイト兄弟の渡航制限解除への自身の関与を否定した。
女性蔑視発言を繰り返してきたアンドリュー・テイト
ソーシャルメディアで大きな影響力を持つアンドリュー・テイトは、一時期マノスフィア最大のインフルエンサーだった。
若い男性に「金持ちになる方法」や「女性とセックスする方法」を説き、公然と女性への暴力を勧めて数百万のフォロワーを獲得した。
出演していたリアリティ番組『ビッグ・ブラザー』では、ベルトで女性を殴打する映像が流出して番組を降板になった(女性は後に、動画は合意のもと撮影されたと述べた)。
さらに、浮気を疑う女性には「マチェーテ(山刀)を振りかざして顔面に叩きつけ、首をつかむ。黙れ、ビッチ」という扱いをするとTikTokの動画で発言している。

そのアンドリュー・テイトはトランプ大統領の熱心な支持者として知られる。トランプ大統領の家族もテイトに好意的な姿勢を示してきた。
ドナルド・トランプ・ジュニアは2023年、テイト兄弟の投獄を「狂気の沙汰だ」と非難している。
またテイト兄弟の弁護士の一人であるポール・イングラシア氏は、現在ホワイトハウスで司法省との調整役を務めている。
トランプ大統領もまた、有害な男らしさ(トキシック・マスキュリニティ)を長年肯定してきた。
トランプ氏自身もこれまでに何十人もの女性から性的暴行やレイプで告発されており、2023年には、1990年代にE・ジーン・キャロル氏に性的暴行を加えた罪で、総額500万ドルの損害賠償金支払いを命じられた。
そのトランプ氏の2024年の大統領選挙での当選に大きく貢献したグループの一つが、アンドリュー・テイトのような女性蔑視で暴力的なマノスフィア系インフルエンサーだ。
トランプ氏の大統領就任後に勢力を増すマノスフィアにとって、テイト兄弟の釈放は大きな勝利となった。
釈放は、女性への性的虐待が見過ごされるだけでなく、むしろ称賛されることにつながりかねない。
しかし、釈放は共和党の政治家からも批判されている。
兄弟が飛行機で到着したフロリダ州のデサンティス知事は27日、「フロリダは、そのような行為をする者を歓迎する場所ではない」と述べた。
また、共和党のジョシュ・ホーリー上院議員は、「保守派がこの男を称賛するべきではない。ましてや政府が影響力を行使して、ルーマニアでの極めて深刻な罪から彼を救い出そうとするべきではない」とハフポストUS版の取材に語った。