アカデミー賞2025はいつ? 授賞式を見る方法、作品賞のノミネート、受賞予想、日本での公開日は【注目ポイント】

作品賞の本命は「ANORA アノーラ」?主演女優賞では、40年超のキャリアで初ノミネートされたデミ・ムーアに注目。日本からは「Black Box Diaries」など3作品が候補になっています。
(左から)マイキー・マディソン、ショーン・ベイカー、デミ・ムーア、エイドリアン・ブロディ
(左から)マイキー・マディソン、ショーン・ベイカー、デミ・ムーア、エイドリアン・ブロディ
Getty Images

第97回アカデミー賞の授賞式が、日本時間3月3日(月)に行われる。日本で見る方法や、作品賞のノミネート、日本公開日、受賞予想などの注目ポイントをまとめた。

<記事の主な内容>

・日本で授賞式を見る方法は?

・作品賞ノミネートと日本での公開日

・作品賞の受賞予想。本命は「アノーラ」?

・「ポップコーン女優」と言われたデミ・ムーアが主演女優賞で有力

・パレスチナ人とイスラエル人共同監督の「ノー・アザー・ランド」

・日本からは「Black Box Diaries」など3作品がノミネート

▼日本で見る方法は?

日本では、NHK BSが3月3日(月)の朝8時から12時30分まで授賞式やレッドカーペットの模様を生放送

NHK総合では9日(日)の深夜に総集編が放送されるほか、WOWOWオンデマンドでも4日(火)の午前9時より授賞式の字幕版が配信される

授賞式はアメリカ・ロサンゼルスのドルビー・シアターで開催され、司会はコメディアンのコナン・オブライエンが務める。

▼作品賞ノミネートは? 日本での公開日

最注目の作品賞、ノミネートされたのは以下の10作品。日本での公開・配信日とあわせて紹介する。

ANORA アノーラ」2月28日

ブルータリスト」2月21日

教皇選挙」3月20日

デューン 砂の惑星 PART2」24年3月15日に公開、現在はデジタル配信中

アイム・スティル・ヒア」8月公開予定

「ニッケル・ボーイズ」2月27日にAmazon Prime Videoで配信

サブスタンス」5月16日

▼作品賞、「アノーラ」か「教皇選挙」?

ハリウッドの「最高の栄誉」作品賞は、今年は混戦状態とされていたが、今一番勢いがあるのは、アカデミー賞の前哨戦として最も信頼できると言われているPGA(製作者組合賞)を受賞した「アノーラ」だ。

「ANORA アノーラ」
「ANORA アノーラ」
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ニューヨークでストリップダンサーをしているアノーラが、ロシア人の御曹司と結婚したことで大騒動に巻き込まれるというストーリー。作品賞のほかにも、監督賞(ショーン・ベイカー)、主演女優賞(マイキー・マディソン)など6部門でノミネートされている。

監督のショーン・ベイカーは「タンジェリン」や「フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法」などで高い評価を得て、2月のインディペンデント・スピリット賞も受賞している。スピーチでは、映画作りの喜び、そしてインディーズのクリエイターたちの経済的困窮や資金調達システムの問題について率直に語り、業界内外で熱い支持が広がっている。

このまま「アノーラ」が作品賞の本命になるかと思われていたが、PAGと並んで重要視される前哨戦、SAG(全米映画俳優組合賞)で最高賞に輝いたのは「教皇選挙」だった。

本作はローマ教皇選挙の舞台裏と内幕に迫ったミステリー。エドワード・バーガーは監督賞からは外れたものの、主演男優賞(レイフ・ファインズ)など全8部門でノミネートされている。

▼主演女優賞はデミ・ムーア? 40年超キャリアで初ノミネート

主演女優賞で最有力視されているのは、「サブスタンス」のデミ・ムーアだろう。40年超のキャリアで初めてアカデミー賞にノミネートされた。

「30年前に“ポップコーン女優”と言われた。大金を稼ぐ映画に出ることはできても、(演技が)認められることはないと思い込み、それに長年蝕まれていた」などと明かした、ゴールデングローブの受賞スピーチも大きな話題になった。前哨戦でも主演女優賞を獲得していることから、今年はムーアが脚光を集めることになりそうだ。

主演男優賞部門は、「ブルータリスト」でホロコーストを生き延びてアメリカへ渡ったハンガリー系ユダヤ人建築家を演じたエイドリアン・ブロディか、「A COMPLETE UNKNOWN」で若き日のボブ・ディランを演じたティモシー・シャラメ、どちらかの受賞が有力だ。

賞レースの前半はブロディがリードしていたものの、SAGでは、24年12月に29歳になったばかりのシャラメが最年少でサプライズ受賞。

ブロディは2002年公開の「戦場のピアニスト」で、史上最年少の29歳343日でアカデミー賞主演男優賞を受賞していることから、もしシャラメがオスカーに輝けば、その記録も塗り替えることになる。

なお、「ブルータリスト」をめぐっては、俳優らのハンガリー語の発音の調整のためにAIを使った問題も指摘されており、これが受賞にどのような影響を与えるかにも注目だ。

そのほか、助演男優賞は「リアル・ペイン〜心の旅〜」のキーラン・カルキン、助演女優賞は「エミリア・ペレス」のゾーイ・サルダナが確実視されている。ちなみにカルキンは、「ホーム・アローン」でケビンを演じたマコーレー・カルキンの弟だ。

▼パレスチナ人とイスラエル人によるドキュメンタリー「ノー・アザー・ランド」も候補に

「ノー・アザー・ランド 故郷は他にない」
「ノー・アザー・ランド 故郷は他にない」
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その他の部門で注目されているのは、長編ドキュメンタリー部門。

イスラエルの軍事支配下に置かれているパレスチナ自治区ヨルダンの現状をとらえたドキュメンタリー映画「ノー・アザー・ランド 故郷は他にない」はパレスチナ人2人・イスラエル人2人が共同で監督を務めた。

ベルリン国際映画祭で最優秀ドキュメンタリー賞と観客賞の2冠に輝いたが、イスラエル軍の攻撃を批判する内容であることから、ベルリン市長やドイツ文化省などが受賞に異議を唱え、監督らが殺害予告や脅迫を受ける事態にもなった。

アメリカでは一般公開はされていなかったが、2月に監督らが自主配給を発表し上映規模も広がっている。イスラエル人のユバル・エイブラハム監督は、映画会社による配給が決まらなかったのは「政治的な理由であることは明らか」だと批判。一方で、世間の関心は高く、批評家賞やインディペンデント・スピリット賞も受賞している。

日本の作品としては、ジャーナリストの伊藤詩織監督の「Black Box Diaries」がノミネート。性被害の告発後に自身に起きたことを撮影・記録し、日本の司法制度のあり方を問うドキュメンタリーだ。

チューリッヒ映画祭で最高賞のドキュメンタリー賞と観客賞をW受賞するなど国際的に評価されている一方、作品をめぐっては伊藤監督の元代理人弁護士が、本作の一部に、「裁判以外では使用しない」と誓約して提供されたホテルの防犯カメラ映像や、許諾のない映像や音声が使用されているなどとして、法的・倫理的に問題があると指摘。その後、伊藤監督は「ブラックボックスにされた性加害の実態を伝えるためには、この(ホテルの防犯カメラの)映像がどうしても必要だった」と説明した。また、許諾のない映像の使用に関しては謝罪し、個人が特定できないように差し替えるなどの対応をすると発表した

ドキュメンタリー映画は近年世界的に増えており、その重要性も再確認されている。今年は他にも、ロシアによる侵攻で、兵士として戦場に立つことを余儀なくされたウクライナのアーティストたちを追った「Porcelain War」がノミネートされるなど、力作揃いだ。

▼日本のノミネートは?

「Black Box Diaries」の他にも、日本のドキュメンタリーとして「小学校 それは小さな社会」(山崎エマ監督)から生まれた「Instruments of a Beating Heart」が短編ドキュメンタリー部門でノミネート。

また、韓国の絵本作家ペク・ヒナの作品を、「ふたりはプリキュア」シリーズでタッグを組んできた西尾大介監督・鷲尾天プロデュースで映像化した「あめだま」(英題:Magic Candies、東映アニメーション製作)が、短編アニメーション部門の候補となっている。

1月にトランプ大統領が就任して以降、初めての開催となるアカデミー賞。ハリウッド自体もこの数年で、コロナ禍以降の映画不況、賃上げや生成AIからの保護を求める俳優らのストライキ、ロサンゼルスを襲った大規模火災など、毎年のように大きな変化が起きている。

世界的にもウクライナ戦争やガザ侵攻で多くの市民が犠牲になる中、受賞作やスピーチを通してどのようなメッセージが掲げられることになるのか注目したい。

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