
米起業家イーロン・マスク氏が指揮をとるアメリカの米政府効率化省「DOGE」の話題があとを経たない。設立後、連邦職員の大幅な削減や、USAIDなど重要機関の閉鎖や縮小などをものすごいスピードで進めているからだ。
DOGEとはどんな組織で、なぜ注目されているのか。経緯を振り返る。
DOGEとは
DOGEとは、連邦政府の支出削減などを目的に設立された政府効率化省(Department of Government Efficiency)の略。名称は、マスク氏が柴犬かぼすちゃんで知られる犬のインターネットミーム「ドージ」にちなんで考案したものだ。
2024年11月12日、大統領就任前のトランプ氏がDOGE設立の計画を発表し、トップにイーロン・マスク氏と起業家ヴィヴェック・ラマスワミ氏を指名した。
トランプ氏は声明で「2人の素晴らしいアメリカ人が、我々の政権で政府の官僚主義を解体し、過剰な規制と無駄な支出を削減して、連邦機関を再構築する道を切り開いてくれるでしょう」と述べたが、ラマスワミ氏は1月に離脱した。
トランプ氏が大統領就任後の1月20日に発令した大統領令によると、DOGE設置の目的は「連邦政府のテクノロジーとソフトウエアの現代化を通じて、連邦政府の効率性と生産性を最大限に高めること」だ。
これまで政府のITサービスの簡素化と改善を担ってきた行政管理予算局傘下の「米国デジタルサービス」を「米国DOGEサービス」に改称し、大統領府内に再編するという。
米国DOGEサービス内に、トランプ氏の掲げる政府効率化の取り組みに専念する「DOGE臨時組織」を2026年7月4日まで設置することも発表。
各連邦機関にエンジニアや弁護士などからなる少なくとも4人の「DOGEチーム」を設置することも大統領令に盛り込まれた。
トランプ大統領はマスク氏を「DOGEの責任者」と述べているが、ホワイトハウスのキャロライン・レビット報道官は2月18日、マスク氏の肩書きはホワイトハウスの「特別政府職員」で、「大統領の代わりにDOGEを監視する任務を任されている」と説明している。

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DOGEは何をしているのか?
DOGEのウェブサイトによると、不正検出や契約解除、人員削減などですでに計650億ドル(約10兆円)の支出を節約したとしている。しかしリストの内容には間違いも散見されており、信頼性のなさが指摘されている。
議会が管理する政府支出を抑制しようとするDOGEとマスク氏の行動には、すでにいくつもの訴訟が起こされている。DOGEによる連邦職員の不正な休職措置や、各機関が不当に機密データへのアクセスを許可したことに対するもので、司法からの差し止め命令が相次いでいる。
マスク氏は「国民は政府の大改革に投票した。だからそれを実現する」「それこそが民主主義だ」と述べ、自身の政策を正当化している。
急速に進む大量解雇
トランプ氏が1月に大統領に就任してから、マスク氏は新設DOGEのリーダーとして、できるだけ多くの連邦政府職員を解雇するため、ものすごいスピードで動いている。ホワイトハウスは、連邦政府職員の10%を削減目標に掲げている。
約240万人いる連邦政府職員のうち、これまで何人が解雇されたかは明らかではない。人事管理局は、約7万5000人の職員が退職後も一定期間給料が支払われる「早期退職」の提案を受け入れたといい、トランプ氏が連邦政府機関に「試用期間中」つまり勤続1年以下の職員を解雇するよう命じているという。人事管理局の2024年3月時点のデータによると、約22万人の職員がこれに該当する。
しかし、大量解雇を急ぐトランプ政権は、実際にどんな役割の人材を解雇しているのか十分に理解しておらず、再雇用する必要があったケースも発生している。
これまで政府は、国家核安全保障局で核兵器を監視する職員や、農務省で鳥インフルエンザやその他の動物の疫病の症例を確認する職員、FDA(食品医薬品局)で食の安全や医療機器審査などに関わる職員を大幅に削減したが、その後どれも重要な職員だったと認識し、再雇用しようと奔走することになったという。
ハフポストUS版の記事を翻訳・編集・加筆しました。