福島・ 南相馬、今年も18歳に応援メッセージ。「さあ、行っといで」のポスター、「涙が出る」と過去に話題

福島県南相馬市が新たな門出に立つ「18歳」を応援するメッセージポスターを今年も制作。初年度は「熱い」「涙が出る」とSNS上で注目を集めました。

福島県南相馬市は2月21日、新たな門出に立つ「18歳」を応援するメッセージポスターを制作したと発表した。2022年度から実施している「18歳巣立ち応援事業」の一環で、今年で3年目となる。

初年度は「さぁ、行っといで。」という温かみのあるキャッチコピーや、ポスターに登場する地元住民の応援メッセージが反響を呼び、「熱い」「涙が出る」とSNS上で注目を集めた。

今年度は市内の公共施設など約180カ所に応援メッセージポスターを掲示し、3月1日には「卒業おめでとう撮影会」というイベントも開催する。

送り出す実家の雰囲気を表現

南相馬市によると、この事業は東北初の取り組みで、新たな門出に立つ18歳にエールを送るとともに、18歳の市民に祝い金5万円を支給するもの。

キャッチコピーの「さぁ、行っといで。」は、市内に残る人、市外に出る人、全ての18歳に向けた言葉で、「玄関先で背中をポンと押し、送り出す実家の雰囲気」を表現している。

2022〜23年度は計970人に祝い金が支給され、18歳からは「応援されているという気持ちになる」「頑張ろうという気持ちになる」という声が集まった。

地元住民からも「自分の店にもポスターを貼りたい」「市民として涙が出た」などの意見が寄せられたという。

南相馬市「巣立ち応援18歳祝い金支給事業」の応援メッセージポスター
南相馬市「巣立ち応援18歳祝い金支給事業」の応援メッセージポスター
福島県南相馬市

今年度のメッセージポスターは8種類を用意。7組の“まちの人”からのメッセージが掲載されている。

例えば、地元で長年愛される「すずき食堂」の家族は、「自分に嘘をつかないこと。恥をかくことを恐れず、わからないことは素直に、やりたいことには真っ直ぐに。」というメッセージを送った。

膝の上に座った子どもは写真撮影に緊張して泣いているように見えるが、肩を寄せ合った家族の笑顔や「食堂すずき」の看板からも温かみが伝わってくる。

「すずき食堂」の応援メッセージ
「すずき食堂」の応援メッセージ
福島県南相馬市

また、地元の海とともに生きるプロサーファー・佐藤広さんは、「大きな波を前にしたらやるしかないんだ」という力強い言葉を伝えている。

佐藤さんは東日本大震災の津波で自宅を流され、原発事故で実家に避難指示が出た経験がある。海外の大会で「福島出身はクレイジー」と罵られたこともあった。

それでも「福島の子どもたちに地元の海の楽しさを伝えたい」と決意し、2017年に南相馬の海に戻ってきた

佐藤さんのポスターには続けて、「海外の大きな波も、大事な大会も、そりゃ緊張するよ。けど、その挑戦は地元で積み重ねた日々の延長線上。だから覚悟を決めて立ち向かっていける。」と、18歳の背中を押す言葉が記録されている。

プロサーファー・佐藤広さんのメッセージ
プロサーファー・佐藤広さんのメッセージ
福島県南相馬市

地域の農業を支える「I Loveファームおだか」は、「大丈夫。思いっきりやってらっしゃい。」という言葉を送った。

「親は『いつでも帰っておいで』とかつい言っちゃうんだけどね、本当は自信を持って送り出したいの。あなたなら大丈夫。責任持つことを楽しんでね。」

写真に映った3人もとびっきりの笑顔だ。帰ってきたくなるような地元の魅力が伝わってくる。

「I Loveファームおだか」のメッセージ
「I Loveファームおだか」のメッセージ
福島県南相馬市

応援する気持ちはずっと変わらない

南相馬市こども家庭課は公式noteで、「成人になる、進学・就職する、引っ越すなど、いままでの環境から大きく変わるこの時期に、祝い金を原資にして、自分の世界を広げてほしかった」と事業の目的を説明。

ポスターは、新たな環境に進む18歳がふと思い出し、少しでも温かい気持ちになってくれたらと、市内の見慣れた風景で撮影したという。

また、それぞれのポスターに添えた“まちの人”のメッセージも、本人の言葉からその応援の想いを紡ぎだしたとしている。そして、同市は次のような言葉をおくっている。

「ポスターもずっとは貼っておけないし、市外に出てしまえば普段目にすることはなくなってしまうけど、みなさんを応援する気持ちはずっと変わらない」

「このnoteをたまに見てもらうことで、南相馬市を思い出して懐かしく思ったり、気にかけたり、何かの時に励まされたりするような、一つのきっかけになれば嬉しい」

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