伊藤詩織さん監督映画「Black Box Diaries」、米アカデミー賞の受賞逃す

伊藤詩織さんが監督を務めた「Black Box Diaries」は、性被害の告発後に自身に起きたことを撮影・記録するという、性暴力サバイバーの視点で描かれたドキュメンタリー映画だ。
伊藤詩織監督
伊藤詩織監督
Hidemi Shinoda

第97回米アカデミー賞の授賞式が米ロサンゼルスで3月2日(現地時間)に開かれ、ジャーナリストの伊藤詩織さんが監督を務め、長編ドキュメンタリー部門にノミネートされていた映画「Black Box Diaries」は受賞を逃した。受賞したのは「ノー・アザー・ランド 故郷は他にない」(バーセル・アドラー、ユヴァル・アブラハーム、ハムダーン・バラール、ラヘル・ショール)だった。

性被害の告発後に自身に起きたことを撮影・記録するという、性暴力サバイバーの視点で描いた本作品。英アカデミー賞ドキュメンタリー部門でノミネートされたほか、スイスのチューリッヒなど海外の多数の映画祭で賞に選ばれている。

一方で作品をめぐっては、伊藤さんの元代理人弁護士が、「裁判以外で使用しない」と誓約して提供されたホテルの防犯カメラ映像のほか、事件を捜査した警察官と事件当時の状況を証言したタクシードライバーの映像や音声が許諾なく使用されているなどとして、法的・倫理的に問題があると指摘。

作品で防犯カメラ映像を使わないことに加え、警察官やタクシー運転手が特定されないよう修正することなどを求めていた。

これに対し、伊藤さんは2月下旬に声明を発表。許諾のない映像に関して、「映像を使うことへの承諾が抜け落ちてしまった方々に、心よりお詫びします」と謝罪した。その上で「最新バージョンでは、個人が特定できないようにすべて対処します。今後の海外での上映についても、差し替えなどできる限り対応します」と述べた。

元代理人が削除を求めたホテルの防犯カメラ映像については、ホテルから承諾を得られなかったため、外装やタクシーの形などを修正して使用したといい、「これに対してはさまざまな批判があって当然だと思います。それでも私は、公益性を重視し、この映画で使用することを決めました」「ブラックボックスにされた性加害の実態を伝えるためには、この映像がどうしても必要だったのです」と声明で説明した。

伊藤さんは2024年12月のハフポスト日本版のインタビューにも、「多くの性犯罪がホテルのような密室で行われるという事実を考えれば、今回のような貴重な映像こそ、防犯カメラの存在意義そのものだと思います。全国の宿泊施設などで、防犯カメラ映像の利用に関する判断基準が、性被害の実態に即した形で検討され、協力体制や防犯体制が改善されるよう願っています」と述べている

制作会社のスターサンズによると、本作は英国・米国・日本の共同製作。30以上の国・地域での配給が決定しているが、日本では未公開のままだ。日本での公開予定について、同社は「現状お伝えすることはありません」としている。

「Black Box Diaries」
「Black Box Diaries」
©伊藤詩織/Black Box Diaries 製作委員会

注目記事