![](https://img.huffingtonpost.com/asset/67ad84e91600001400aff7b9.jpg?ops=scalefit_720_noupscale)
冬が旬のりんご。出荷のピーク時期が続き、さまざま品種のなりんごが店頭を飾っています。
ところで、りんごを二つ切りにしたとき、芯のまわりの果肉に黄色く透き通った部分が現れていることがあります。ハチミツのような色味から「蜜」と呼ばれるそうですが、“よく熟しているのだろうな”と、食べる前からりんごのおいしさを感じさせてくれる存在でもあります。
りんごの蜜とはどんなもので、ハチミツのように他の果肉より甘いのか。また、なぜ蜜が入っているものと入っていないものがあるのかなどについて、青森のりんご生産者団体、りんご産地市場などが運営するバーチャル大学「りんご大学」の三上聖華(みかみ・さとか)さんに詳しく解説して頂きました。
りんごの蜜の正体は?
まず、りんごの蜜の“正体”とはどのようなものなのなのでしょうか。
「蜜はりんごの果実が完熟していく過程で自然に発生する『ソルビトール』と呼ばれる糖分です。
果実にこの成分を含む、バラ科ナナカマド属のオウシュウナナカマドの学名『Sorbus aucuparia L.』が語源とされています。ソルビトールはりんごの蜜のほか、梨やプレーンにも多く含まれていて、化粧水などにも利用されています。
ソルビトールは葉で光合成によって作られ、果実へと運ばれます。そこでソルビトールは果糖やショ糖、ブドウ糖などの糖分に変換されて、果実の細胞に蓄えられようとします。
ところが、りんごは完熟期になると、すでに細胞内が果糖など別の糖分でいっぱいになってしまっています。そのためソルビトールは細胞の中に入れず、細胞と細胞のすきまにたまるようになり、そこで水分を引き寄せます。これが、蜜になるのです。
ソルビトールはそれほど甘いものではなく、砂糖の甘さを100とすると、60くらいになります」(三上さん)
蜜入りのりんごが「甘い」と感じる本当の理由
ソルビトールは「それほど甘くない」のに、蜜入りのりんごは甘いと感じます。なぜなのでしょうか。
「まず、りんごの果実内の糖分の中で、最も多く含まれている果糖が、砂糖の甘さの1.15~1.73倍と最も甘い糖だからです。
さらに、蜜は完熟の証(あかし)で、『このりんごは果糖などの糖分に満たされ、そのうえソルビトールが余って蜜になるくらい、甘さに満ち満ちていますよ』という目印になるからです」(三上さん)
蜜が入りやすい品種は?
![蜜が入りやすい品種の代表格「サンふじ」](https://img.huffingtonpost.com/asset/67ad857d1600001800aff7bd.jpg?ops=scalefit_720_noupscale)
りんごの蜜はどんな品種にも入っているのでしょうか。
「蜜が入りやすい品種と入りにくい品種があります。『サンふじ』や『ふじ』、『スターキング』、『デリシャス』などには蜜が入りやすいのですが、『ゴールデンデリシャス』や『つがる』は完熟しても、蜜が入りにくいことが知られています」(三上さん)
蜜は時間の経過とともに減少する?
りんごを長く置いておいても、蜜はずっと保たれているのでしょうか。
「りんごの蜜は貯蔵中に、少しずつ減っていきます。その原因は、蜜が水分を発散させながら徐々に果肉に吸収されてしまうからです。
蜜が減ると甘みは変わりませんが、シャキシャキ感やジューシーさが少なくなってしまいます。
りんごの果実そのものも収穫後に呼吸をして水分を発散しています。長く保存していると果肉成分を消耗して水分が抜け、軟らかく食味も悪くなってしまいますので、なるべく早く食べきるのがベストといえます」(三上さん)
蜜入りに限らず、りんごを保存する際のポイントはありますか。
「水分の蒸発を防ぐため、薄めのポリ袋に入れて冷蔵庫に入れてください。入りきらない場合は、温度変化の少ない冷暗所に置きましょう。
長期間保存する場合は、りんごを新聞紙に包んでからポリ袋に入れます」(三上さん)
三上さんによると、最近よく見聞きする「葉とらずりんご」は、葉が多いので作られるソルビトールも多く、蜜が入った甘くておいしいりんごができる栽培方法のひとつだそうです。
旬のりんごの美味しさを味わってみてはいかがでしょうか。
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