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旬を迎えた魚介類が店頭にずらり。脂がのった寒サバや寒ブリなど、冬ならではの味覚を楽しむ機会も増えます。
刺身や寿司など、新鮮な魚を生で食べる文化が根付いている日本ですが、気になるのは「アニサキス」による食中毒。毎年多くの人が体調を崩すケースが報告されています。
一方、ちょっとした知識と対策を知っていれば、海の幸を安全に楽しむことができます。アニサキス症の原因や予防法をわかりやすく紹介します。
アニサキスとは?予防の3ポイントとは?
アニサキスは寄生虫の一種で、「白色の細長い糸」のような形をしています。
幼虫の体長は2~3センチほどで、サバ、サンマ、アジ、カツオ、サケ、スルメイカなど、さまざまな魚介類に寄生。魚介類が死亡し、時間が経過すると内臓から筋肉に移動することが知られています。
このアニサキス幼虫が付いた魚介類を生で食べたり、冷凍や加熱が不十分な状態で食べたりすると、アニサキスが胃壁や腸壁に刺入して食中毒を引き起こします。
死亡例は報告されていませんが、具体的には次のような症状が出ます。
①食後、数時間~10数時間で、みぞおちの激しい腹痛、吐き気、嘔吐
②食後、10数時間~数日後に、激しい下腹部痛、腹膜炎症状
![サバに寄生したアニサキス幼虫の写真](https://img.huffingtonpost.com/asset/67aaa9e11600001500aff508.png?ops=scalefit_720_noupscale)
「食中毒統計資料」をもとに作成された厚生労働省のデータによると、2021〜23年の3年間では、食中毒全体の約50%がアニサキスによるものでした。
23年の月別の発生患者数を見ると、最も多い月は3、4月で59人。続いて、5月の46人、1、6月の38人、2月の37人でした。
予防のポイントは主に3つあります。
①鮮魚を丸ごと一尾で購入したらよく冷やして持ち帰り、すぐに内臓を取り除く
②アニサキス幼虫は主に内臓の表面に寄生するが、鮮度の低下や時間の経過とともに筋肉(可食部)内に移動することがあるため、鮮度が落ちないよう氷や保冷剤で冷えた状態を保つ
③魚の内臓を生で食べない。アニサキスがいないかよく確認して食べる
また、アニサキス幼虫は、十分に冷凍(マイナス20度で24時間以上)したり、加熱調理(中心温度60度で1分以上)したりした場合は死にます。
特にシメサバ(自家製など冷凍処理されていないもの)によるアニサキス症が多く報告されているため、厚労省は「できるだけ早く内臓や内臓周りの筋肉を除去し冷凍すること」を呼びかけています。
アニサキスを巡る「迷信」に注意
アニサキス幼虫を巡っては、「酢や塩、しょうゆ、ワサビなどにつければ死ぬ」という情報も聞かれますが、調味料では死なないことがわかっています。
また、「噛めば大丈夫」という人もいますが、アニサキス幼虫はとても小さく、どこに潜んでいるかわかりません。表面はなめらかで丈夫、かつ細い糸のような形状のため、噛み切ることは困難です。
アニサキス幼虫に対する効果的な治療薬はなく、治療法は胃アニサキス症の場合、「胃内視鏡検査時に胃粘膜に穿入する虫体を摘出」になります。
腸アニサキス症では対症療法を行い、場合によっては外科的処置が施されることもあります。
アニサキスアレルギーに対しては、アレルギーに関する対処療法を行いますが、アナフィラキシーの場合、緊急に医療処置を行う必要があるといいます。
厚労省は、激しい腹痛があり、アニサキスによる食中毒が疑われる際は速やかに医療機関を受診するよう呼びかけています。