USAID(米国際開発庁)とは?トランプ氏が閉鎖を計画。何が問題になっているのか

最近アメリカのニュースでよく耳にするUSAIDとは?
USAID本庁の外に掲げられていた旗
USAID本庁の外に掲げられていた旗
Kevin Dietsch via Getty Images

アメリカ政府の主要な対外援助機関である「国際開発局」(USAID)が今、存続の危機にさらされている。トランプ政権がUSAIDの職員を大幅に削減し、閉鎖する計画を打ち出したためだ。

USAIDとはどんな組織で、何が問題になっているのか。経緯を振り返る。

USAIDとは

USAIDとは、世界各地で人道支援などを行うアメリカ連邦政府の独立機関だ。1961年に設立され、飢餓に苦しむ国々への食料提供から人権保護、教育支援まで、その内容は多岐に渡り、100カ国以上で活動している。

一方、トランプ氏大統領は、海外援助や開発支援は無駄だと主張し、2025年の大統領就任後には、人道支援などへの数十億ドル規模の資金提供を停止した。

トランプ大統領に「政府効率化省(DOGE)」のトップに指名されたイーロン・マスク氏はUSAIDを「腐敗したウジ虫の塊」と呼び、同庁を「閉鎖しようとしている」「閉鎖すべきだという意見にトランプ氏も同意した」と述べた

トランプ大統領は、記者の質問に「USAIDの閉鎖に議会の承認は必要ない」と主張している。だが、USAIDは法律に基づいて設置された機関で、米国連邦議会調査局は、議会の承認なしに閉鎖する権限は大統領にはないと報告している。

混乱が続く中、多くの資金提供が停止されたことで、世界中のプログラムが閉鎖に追い込まれている。

USAIDの公式サイトは2月1日に突然閲覧できなくなり、Xアカウントも停止されている。

2月4日には、アクセスできなくなっていたUSAIDの公式サイトに、海外で駐在している職員に対し、30日以内に帰国するよう命じる通知が掲載された。しかしそれに対し、労働団体らが提訴。連邦地裁は7日、連邦地裁は7日、数千人の職員を休職にするなどのトランプ氏の計画に一時差し止めの命令を下した。

AP通信は、トランプ政権は海外を含め1万人以上いる職員を、約300人まで削減する計画を示していると報じており、すでに多くのスタッフが休暇扱いされ、数百人が同庁のコンピューターシステムへのアクセスを遮断されている。

7日には、ワシントンD.C.にある本庁の建物のサインも取り外された

ロイター通信によると、トランプ政権は、USAIDを国務省に統合することを検討しているという。

今後どうなるのか

USAID閉鎖の動きに対し、元USAID長官のアンドリュー・ナツィオス氏はMSNBCのインタビューで、世界90カ国に及ぶ「病気の早期警告システム」を失うことがアメリカへの大きなリスクになると指摘した。

「飢饉が起こると人々はどうしますか?一斉に動き出します。もし支援を停止すれば、世界中で飢饉が起こり、その人たちは最終的にヨーロッパとアメリカに行き着くのです」

ナツィオス氏は過去の飢饉を振り返り、「人々はパニックになると動き出す。そして私たちはのちにその代償を払うことになるんです」と述べた。

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