
クラフトビールメーカー「ヤッホーブルーイング」が販売する「飲みづらい」グラス、「ゆっくりビアグラス」が話題になっている。
1個1万2980円(税込・送料別、よなよなエール1缶と専用クロス付き)するにも関わらず、販売すれば即完売。職人がひとつひとつ手作りしているため生産が追いつかず、現在約1200人が入荷待ち状態だという。
なぜそんなにも人気なのか?その秘密を探るため、実際に試飲してみた。
【「飲みづらい」ビールグラスの開発秘話はこちら】爽快感ゼロ!「飲みづらい」ビールグラスが話題。作ったのはビールメーカー...。なぜ?
大人気で現在入荷待ちのこのビアグラス。ヤッホーブルーイングオフィスを訪問し、特別に体験させてもらった。
テーブルに置かれたグラスは綺麗な砂時計型をしており、まるでアート作品のよう。薄く、持ち上げると軽さが分かる。実際の重さは約90グラムで、初販のグラスから約3分の1に軽量化されたそうだ。
砂時計型グラスのくびれ部分によってビールの流れる量が制限され、ゆっくり飲むことができる仕組みになっている。
【注ぐ】
早速、同社のクラフトビール「よなよなエール」を缶から注いでみるーー。
予想したとおり、くびれで詰まってしまい注ぎづらい。まず、飲むまでに時間がかかりそうだ。
ゆっくり数回に分けて注ぐと、ポコポコと音を立てながらビールが砂時計の砂のように下に落ちていく。その様子を見るのも楽しく、まるでドリップコーヒーを淹れているような感覚だ。辛抱強く注ぎ続けると、350ml缶1本が丁度入りきった。
【飲む】
さて、1人で乾杯。グラスに口をつけると、まず真ん中のくびれまでのビールは普通に出てくる。飲み口周りがワイングラスのように内側にカーブしているため、香りをより感じる気がする。
飲み進め、グラスのビールがちょうどくびれを過ぎる頃、ついにこのグラスの売りである「飲みにくさ」の壁にぶち当たった。
「で、出ない...!」
予想はしていたが、本当に「つーーー...」としかビールが出てこない。角度を垂直に近づけると流れは多少強まるが、どうやってもグラス下半分のビールは「ゴクゴク」飲むことができない。
しかし、決して嫌な飲みづらさではない。
綺麗なグラスを黄金色のエールが一筋「つーっ」と流れ落ちる様子は目に美しく、口に届くとクラフトビールの美味しさを丁寧に味わうことができる。
まさに、ワインのようにビールを嗜む、といったところか。
また、一度グラスを置くとビールが下半分に流れ戻るため、再び飲む時はまた流れ出てくるまで時間がかかる。
注ぐのも飲むのもまさに「ゆっくり」なビアグラスだ。
【洗う】
素敵なグラスのデザインだが、誰もが疑問に思うのが「どうやって洗うの?」ということだろう。
取材では洗う体験まではしなかったものの実際に購入したら手入れは必要だ。
担当者に聞いたところ、中性洗剤を水で薄めた液体につけおきし、その後水でゆすぐことを推奨しているという。これもまた、くびれがあるためつけるのも水を切るのもなかなか時間がかかりそうだ。
【感想】
個人的な感想になるが、率直にいい!ナイスアイデアな商品だと思った。
どちらかといえばワインをちびちび飲むのが好きなのだが、まさにビールをちびちび飲むという感じだった。
「ビールはやっぱり喉越しでしょ!」と思うし、確かにラガーはキンキンに冷やしてゴクゴク飲みたい。私もビールは暑い夏に屋外でプハーッと飲むのが好きだ。
しかしクラフトビールはぬるめが美味しいと言われており、実際にこのグラスでゆっくり飲むことで香りや味をより楽しむことができた。
私は他にも、グルグルねじれたパーティーストローで飲むなど、「飲みづらい」方法を試したが、ストローでは香りは楽しめず、やはり最適な方法ではなかった。
「ゆっくりビアグラス」は値段は高価だが、お酒が大好きだけど減らしたい人や、もしくはそんな人へのプレゼントなどにうってつけの商品だと思う。
そして、理由がなくとも、ただただ楽しく美しいグラスだ。
あまりの人気で現在まだ入荷待ち状態の「ゆっくりビアグラス」だが、今すぐ体験したい人には朗報がある。よなよなエール公式ビアレストラン「YONA YONA BEER WORKS」の新虎通り店・吉祥寺店の2店舗では、よなよなエール1缶を「ゆっくりビアグラス」で提供(税込880円)している。気になる人は、ぜひ足を運んでみてほしい。