アシックスが2月1日、自動車用レザーの端革を再利用した靴を発売した。
かかとやサイド部分に自動車のハンドルの製造過程で廃棄される予定だったレザーを使っている。
自動車製造工程の廃棄を減らそうと、大手自動車部品メーカーの豊田合成株式会社と共同で開発した。
車をつくる過程での廃棄を減らす。再利用の動き活発に
シックな黒色のシューズ「SKYHAND OG(スカイハンドオージー)」は、サイドとかかと部、ベロ部(甲を覆うパーツ)に端革で作ったスエードとスムースレザーを採用。異なる素材のコンビネーションがクールな印象を生み出している。
2月1日からアシックスフラッグシップ原宿、アシックス大阪心斎橋、アシックス神戸、アシックスオンラインストアで販売している。
使用された端革は、自動車を製造する工程で生まれた、「捨てられる予定」だった素材だ。
自動車製造の工程では、実は多くの廃材が出てしまう。自動車業界では今、工程で発生する廃材を再利用することで、社会全体としての廃棄を減らそうという動きが活発化している。
再利用した素材は、豊田合成のベトナムにある工場で発生したハンドルの打ち抜き端材。アシックスがアップサイクルの靴を同じベトナム国内で製造することで、廃棄物だけでなく端材輸送時の二酸化炭素排出量を削減しているという。
また、端材を無駄なく活用するため、小さなピースをパッチワーク状に組み合わせるなどの工夫も取り入れた。
アシックスと豊田合成がコラボレーションするのは今回で2回目。
2023年には、廃棄されるはずだったエアバッグの生地を活用したスニーカーを共同開発し、「2024年度グッドデザイン賞」のグッドデザイン賞を受賞した。
背景には自動車業界の大きな課題
豊田合成は、アシックスとのコラボ以外にも、2020年からアップサイクル商品を揃えたエシカルブランド「Re-S(リーズ)」を展開。
リサイクルすることが難しいエアバッグ生地やハンドルの本革の端材をバッグやペンケースなどに生まれ変わらせることで、廃棄物のさらなる低減を図っていた。
同社がこのような取り組みに力を入れる背景には、自動車メーカーが抱える大きな課題がある。
各自動車メーカーは、環境配慮型のエコカーや車両のリサイクルなどにも力を入れているが、製造工程でも多くの廃棄物が発生しており、対策は喫緊の課題だ。
豊田合成は「工場、生産技術、材料技術、製品設計部門と連携し、廃棄物低減プロジェクトを発足させ、発生源対策の強化」を図っている。
各工場で廃棄物排出量削減に努め、外部の専門家のアドバイスも受けながら、ゴム、樹脂、廃液の低減を実施。さらに、グループ全体で廃棄物量を減らしていくために、国内外のグループ会社を対象に知見を共有する勉強会を開いている。