同居人⇒縁故者⇒妻(未届)に変えても守られない関係、動かない国。同性カップルが司法に違憲判断求める(結婚の平等裁判)

石破首相は結婚の平等(同性婚)について「注視していく」とコメント。裁判の原告はどう受け止めているのでしょうか

法律上同性カップルの結婚を認めていない民法などの規定は違憲だとして、性的マイノリティ当事者が国を訴えている裁判。東京2次訴訟の審理が1月28日に東京高裁(増田稔裁判長)で行われた。

この「結婚の自由をすべての人に」訴訟は、全国5カ所で6件の裁判が提起され、これまでに9件の地裁・高裁判決のうち8件で、違憲もしくは違憲状態という判決が言い渡された。

このうち2024年12月の福岡高裁では、「法の下の平等」を定めた憲法14条1項や「婚姻に関する法律は個人の尊厳に立脚して制定されるべき」とした憲法24条2項に加え、「個人の尊厳と幸福追求権」を保障する憲法13条にも反しているという判断が示された。

28日の審理では、東京2次訴訟の8人の原告うち、鳩貝啓美さんと河智志乃さんが口頭弁論をして、不当な区別を解消するために明快な違憲判断を示してほしいと訴えた。

「結婚の自由をすべての人に」東京2次訴訟原告の鳩貝啓美さん(左)とパートナーの河智志乃さん(2025年1月28日)
「結婚の自由をすべての人に」東京2次訴訟原告の鳩貝啓美さん(左)とパートナーの河智志乃さん(2025年1月28日)
HuffPost Japan

住民票の続き柄は変わっても

人生の伴侶として18年ともに生きてきた鳩貝さんと河智さんは、結婚が認められないため、公正証書を作るなどして将来の不安に備えてきた。

2018年にはパートナーシップ制度がある東京都世田谷区に転入。最初は住民票を別々にしていたものの、2019年に台風災害を目の当たりにしたことで、少しでも家族として扱われる安心を得ようと世帯を合併した。

世帯合併で続き柄は「同居人」になり、その後区の方針変更に伴い「縁故者」、さらに2024年には「妻(未届)」に変更した。

そうした努力を続けても、異性婚と同じ法的保障がないことに変わりはなく、税制優遇や扶養控除、相続、遺族年金などの制度も利用できない。

鳩貝さんは、「異性の夫婦であれば婚姻届を出すだけで済むことに、お金や時間、心のエネルギーをたくさん注ぎ込んでも、異性の夫婦と全く同じ状態にならないことに虚しさを感じる」と語った。

年齢を重ねるにつれて増すのが、緊急時や医療施設などで家族として扱われるかどうかの不安だという。

河智さんは2021年にがんと診断された際、鳩貝さんが病院の説明などから除外されるのではないかと不安だったと振り返った。

「病気への不安は誰もが一緒ですが、同性カップルは安心して医療にかかれません。大切な伴侶が、治療方針の説明や決断の場から排除され、病室に入ることすら許されない、そんな恐ろしい目に遭うかも知れないのです」

また「病気になった時にはそばにいて、動けなくなったら扶養家族として養い、先立った時には相続で守る、そんな当たり前のことが同性同士では叶わない」とも訴え、同じような境遇にある多くの性的マイノリティ当事者のためにも、現在の状態は違憲だと判断してほしいと述べた。

「注視する」首相コメントに思うこと

この訴訟では、全国各地の地裁や高裁で合計8件の違憲/違憲状態判決が言い渡されているが、与党は違憲を解消するための動きを見せていない。

石破茂首相は28日、参院本会議で結婚の平等の実現のための法整備について問われ「国民生活の基本に関わるもので家族観とも密接に関わる。国会の議論や同性婚訴訟の状況なども注視していく必要がある」という考えを示した

鳩貝さんは審理後、「首相は結局『注視』するというコメントにとどまり、国が私たちが求めている婚姻平等を実現しようとする動きは全く見えません。司法には国を動かすだけの違憲判断をしてほしい」とハフポスト日本版の取材に述べた。

注目記事