フジテレビ会見、性加害「社員は関与していない」と判断。『まつもtoなかい』継続した理由とは【中居・フジテレビ問題】

女性が被害を受けた後も、中居正広氏の番組出演『まつもtoなかい』を継続したことについて、同社は「本来、中居氏への調査をもとに適切に判断されるべきでした」と謝罪した。
記者会見で謝罪するフジテレビの港浩一社長
記者会見で謝罪するフジテレビの港浩一社長

芸能界を引退した中居正広氏による女性への性加害に、自社社員が関与したと報じられているフジテレビが1月27日、2回目となる記者会見を開いた。

会見では、現時点では「社員は問題の食事会には関与していない」との判断を示した。ただ、被害を受けた女性への聞き取りはできていないという。

この問題を受け、フジテレビの港浩一社長、フジとフジ・メディア・ホールディングスの嘉納修治会長が同日付で辞任すると発表。社長の後任は、フジ・メディア・ホールディングスの清水賢治専務取締役が就任する。

港浩一社長は、女性が被害を受けた後も、中居氏に対して適切な検証を行わずに番組出演を継続してしまったことなどについて、「放送業界の信用失墜にもつながりかねない理解を招いてしまった」とし、謝罪した。

◆社長への事案の共有は2カ月後

午後4時に開始した会見には、同社の嘉納会長、港社長、遠藤龍之介副会長、親会社フジ・メディア・ホールディングスの金光修社長らが出席した。

フジテレビは、現在までに把握している概要について報告。2024年末からの一部報道を受けて、関係社員や中居氏からの聞き取りなど、社内調査の範囲であり、第三者委員会があらためて調査する方針だという。

同社が会見で説明したのは、主に以下の3つだ。

① 事案を把握してからの女性への対応
② 中居氏への対応
③ 事案が発生した食事会に、社員の関与があったかどうか

1点目は、女性からの報告を受けた後の社内の対応について。同社は2023年6月、ある社員が被害を受けた女性と話をし、事案を認識した。その内容から、 同社は「当事者2人の極めてセジティブな領域の問題」と判断。女性の体調面の状況把握、回復が第一と考え、専門医の指導に基づき対応したという。

一方で、「女性からは、とにかく事案を公にせず、他者に知られずに仕事に復帰したいという強い意向がありました」と説明。女性の意思を尊重し、情報が漏れることのないように、極めて機密性の高い事案として情報管理を行った、とした。

事案の性質から、最終的には同社の幹部、社員、役員に共有され、当時の港社長に報告されたのは2023年8月だった。 

◆『まつもtoなかい』継続の理由は

2点目の中居氏への対応について。同社は、「人権侵害が行われた可能性のある事案でありながら、事案が一部社員で認識された後、適切に社内で共有されず、 中居氏に関しても正式に調査が行われませんでした」と不備を認めた。

判断の理由については、「もし正式な調査に着手することで新たに多くの人間が知ることになると、女性のケアに悪影響があるのではないかと危惧した」と説明。「仮に調査を受けた中居氏から女性に連絡が行くようなことがあれば、さらに傷つけてしまうのではないかという考えもありました」とした。

その一方で、「2023年7月に中居氏から弊社社員に連絡があり、中居氏が女性とは異なる認識を持っていることを把握しました」とした上で、「2人だけの場の出来事であり、当事者以外が介入しづらい難しい問題と捉え、その後、 当事者間で示談の動きが進んでいくとの情報が加わったことも調査を躊躇する一因になりました」と説明した。

また、中居氏の番組出演『まつもtoなかい』の継続については「本来、中居氏への調査を基に適切に判断されるべきでした」と述べた。

同番組が始まったのは2023年4月であり、「開始から間もなく唐突に終了することで憶測を呼ぶことを憂慮し、 当初、番組を中止するような大きな動きを作ることを控えたいという考えがありました」と説明。

一方で、2024年1月に出演者である松本人志氏が芸能活動休止を発表し、 番組出演を休止したことを理由に、番組を終了する機会があった可能性があったことを認めた。

また中居氏の他番組の出演は続いており、「判断が適切だったのかどうか、第三者委員会の調査に委ねる領域」とする一方、「本来は、同社グループが23年11月に策定したグループ人権方針に基づき、 女性へのケアとは別に、中居氏に対する調査を行った上で、番組出演の継続について判断する必要があった」との考えを示した。

◆食事会、「社員Aは関与していない」と判断

3点目は、事案が発生した食事会について、社員Aによる関与があったかどうか。2024年7月、女性が社員らと面談した際に、社員Aに対する嫌悪感を示したことがあったという。だが、面談した社員らは、「社員Aが中居氏と女性の関係に対して、何か問題のあるような関わりがあるとは認識しませんでした」と説明。

2024年末の報道を受け、コンプライアンス推進室を含む社員約10人が、弁護士の助言を受けながら事実関係を調べた。なお、女性への聞き取りはできていないという。

その結果、社員Aは「当日の食事会の存在を把握しておらず、会の設定もキャンセルしたこともない」と話したという。また、スマートフォンのショートメッセージやLINEなどの履歴も確認したが、社員Aが関与したとみられる内容は確認できず、報道後に中居氏に複数回聞き取りをしたが、中居氏も「社員Aは食事会に関わっていない」と話したという。

◆記者会見の制限「説明責任欠くものだった」

この問題を受け、同社が会見を開くのは2回目。1回目となる1月17日は、参加媒体は記者会加盟社に限定し、クラブ未加盟のウェブ媒体や週刊誌の参加、報道機関による動画撮影も認めないなど、大きな批判を招いた。

港社長は「一部のメディアに限定し、テレビカメラを入れない形で行うという判断は、テレビ局としての透明性や説明責任を欠くものでした」とした上で、「メディアの信頼性を揺るがしたことを痛感しております」と謝罪。

人権侵害が行われた可能性のある事案に対して、「社内での必要な報告や連携が適切に行われなかったこと、中居氏に対して適切な検証を行わずに番組出演を継続してしまったこと、 そして、本件の背景にあると考えられるタレントや関係者との会食のあり方などについて検証できていなかったことなど、今振り返れば、対応に至らない点があった」と説明。

「最終的に、女性は長い療養期間を要することとなり、希望されていた仕事への復帰が叶わない状況になってしまいました。弊社に対する様々な思いが積み重なっていたであろうこと、弊社のこれまでの対応が、彼女にとって深い失望を抱かせてしまったのだと思います。申し訳ありませんでした」と頭を下げた。

◆中居氏・フジテレビ問題、経緯は

週刊文春などは2024年12月、芸能関係者の女性が中居氏から意に沿わない性的行為を受けたと報道。記事によると、フジテレビ社員を交えた複数人で会食をする予定だったが、当日は中居氏と女性以外は会場に現れなかったという。

中居氏は公式ウェブサイトで「トラブルがあったことは事実」とする「お詫び」を発表。示談が成立していることを明かした上で、「このトラブルについては、当事者以外の者の関与といった事実はございません」と報道を一部否定した。

フジテレビも公式ウェブサイト「記事中にある食事会に関しても、当該社員は会の設定を含め一切関与しておりません。会の存在自体も認識しておらず、当日、突然欠席した事実もございません」と否定した。

1月17日には港社長が1回目となる会見を開き、事実関係の調査を進めることを明かした。だが▼詳細な回答を避け、独立性が不透明な調査委員会を設置しようとしたこと、▼記者会に参加するメディアを限定したことなどから、SNSなどで批判が噴出。

日用品大手「ライオン」をはじめ、20日までに75社がCMを差し止めたほか、「会見のやり直しと日弁連のガイドラインに基づく第三者委員会による徹底調査」を求める署名活動も行われた。

フジテレビの社員らで作る労働組合も経営体制の刷新などを求めている。

中居氏は1月23日、公式ウェブサイトで芸能活動の引退を発表。「これで、あらゆる責任を果たしたとは 全く思っておりません。今後も、様々な問題、調査に対して真摯に向き合い、誠意をもって対応して参ります」などとした。

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