熊本県八代市にある球磨川温泉 鶴之湯旅館の公式X(@tsurunoyuryokan)が投稿した「後継者がいなく、途絶えてしまう職業がいくつもあります。その職業の中に、えつりという仕事があります」というポスト。その「えつり」という耳慣れない言葉に注目が集まりました。
築70年を超える木造3階建ての趣きある建物が目を引く、鶴之湯旅館。現在は、球磨川水系治水の一環のかさ上げ工事を行うとして、休業しています。
そんななか、投稿されたのがこの「えつり」という仕事についてのポスト。投稿には、続けてこのような説明があります。
「えつりとは、伝統的な日本建築の手法で、主に土壁の施工に関する技術の一つです。特に、土壁を作る際に竹や木を編んで骨組みを作る《竹小舞》を支えるための枠組みや、その施工方法を指します」
この投稿以降、えつりを行う様子や完成形などを収めた画像や動画が次々とポストされています。
鶴之湯旅館の支配人・土山大典さんによると、この作業は土山さんがすべて1人で行っているといいます。「80代の方達は色々覚えていたのでお話を伺い、やり方を教わりました」と土山さん。
また、投稿には作業に欠かせない竹や藁縄(わらなわ)を手に入れるにも苦労するとつづられています。
えつりの職人が途絶えてしまったように、藁縄を製造する後継者がおらず、人手不足に陥っていることが影響しているとのこと。
「1日に2つ作るのがやっとなのだそうです」と土山さんは話します。
こうした現状をSNSを通して伝えようと試みた投稿に1万の「いいね」が集まり、「日本の伝統は残していきたいですね。こういったものに日本政府は補助金など支援を行えば良いのになと思います」「伝統を大切にしてくださっているのですね。豊かさとは、とつくづく感じます」などのコメントが寄せられました。
反響について、土山さんは「最近はSNSを通じてたくさんのお客様と繋がることができています。このように古い建物や伝統技術に興味を持ってくださる若い方がたくさんいるので、とても嬉しいです。皆さんの応援を励みに、1日も早く再開できるように努めたいと思います」と話しました。