イスラエルと武装組織ハマスが1月15日、パレスチナ自治区ガザの停戦で合意した。
合意には42日間の停戦や、ハマスによる人質解放、イスラエルの刑務所に収容されているパレスチナ人の釈放、イスラエル軍のガザ地区からの撤退、避難したガザ北部住民の帰還などが含まれる。停戦は早ければ19日から始まる予定だ。
ハマスは2023年10月7日にイスラエルを攻撃して約1200人を殺害し、200人以上を人質にした。今も人質の約半数が拘束されていると見られている。
一方、イスラエル軍はアメリカの軍事支援を受けてガザに大規模な攻撃を続けており、これまでに4万6000人以上のパレスチナ人が殺害され、広範囲が破壊された。
イスラエルの軍事行動は、人権団体や国連の専門家から「ジェノサイド」と批判されてきた。
停戦に慎重な見方も
15日に停戦合意が発表されると、ガザとイスラエル両方の住民から、喜びの声が上がった。
しかしイスラエルは、これまで国際社会を無視してガザ攻撃を続けてきた。また、イスラエルは11月にレバノンでヒズボラとの停戦に合意した後も攻撃を行った。そのため、合意が守られるかどうかについて、懐疑的な見方もある。
ガザで医療支援をするメドグローバルの共同設立者ジョン・ケイラー博士も、慎重な姿勢を崩していない。
それでも「少しでも爆撃が止まるのであれば、それだけで大歓迎です」とハフポストUS版に語った。
一方、停戦や人質解放の合意が近づいた際にイスラエル軍が攻撃を激化させたことがあるため、ガザ政府のメディア局は「警戒と最大限の注意」を住民にテレグラムで呼びかけた。
ガザ保健省によると、停戦交渉が進められていた14日の早朝以降、イスラエル軍の攻撃で少なくとも57人のパレスチナ人が死亡した。
停戦だけでは不十分
また、支援者からは「停戦だけでは不十分だ」という声も上がっている。
パレスチナのアルメザン人権センターは「武力によるパレスチナ人の殺戮を減らすための重要な一歩」と停戦合意を歓迎。その上で、「停戦だけでは、イスラエルによるガザのパレスチナ人ジェノサイドを止められない」と述べた。
「イスラエルが現在行っているすべてのジェノサイド行為を終わらせ、ガザを解放し、国際社会が責任者に説明責任を果たさせる必要があります」
15カ月に及ぶイスラエル軍の攻撃で、ガザは壊滅的な状況に陥っている。
さらに、イスラエル軍が多くの支援ルートを封鎖したため、支援物資の搬入が大幅に制限されてきた。
ガザで医療支援をしたメドグローバルのサイド・サイード博士は、「患者を治療できる部屋がなかった」と現地の状況を説明している。
「できる消毒は非常に限られており、抗生物質が足りず、包帯も不足しています。手袋が足りないため、片手だけで患者を診察することもありました」
国際人道法などを専門とする基金、グローバル・ライツ・コンプライアンスのアンナ・ガリーナ氏は、停戦後、すぐに支援を提供できるようにする必要があると強調する。
「この戦争の特徴の一つは、イスラエル軍が人道支援を意図的に妨害・制限したほか、支援活動者を攻撃し、国際人道法の基本原則の無視してきたことです」
「その結果、ガザではこれまでにない規模の民間人が死傷し、度重なる避難を余儀なくされ、広範な飢餓に直面しました。今こそ、すべての関係者が、ガザの基本的な生活基準の回復と永続的な平和の実現のための努力を続けることが不可欠です」
15カ月の紛争の間、ガザで活動していた人道支援者らも犠牲になった。
国際協力NGOケアの世界人道支援ディレクターであるディープマーラ・マハラ氏は「私たちは今日、支援を必要とする人々を助けるための職務を果たそうとして命を落とした数百人の人道支援活動家を称え、この停戦が広範囲に及ぶ壊滅的なニーズに対応するための道を開くことを願っています」と声明で述べた。
現在、ガザでは少なくとも190万人が避難を強いられ、その多くが、凍てつくような寒さの中で住む場所がない状態に置かれている。
栄養失調に苦しむパレスチナ人、特に子どもたちの回復には長い時間がかかると見られている。
NPOの中東理解機構は14日、「この停戦は命を救うでしょう――しかし、イスラエルがガザの人々に与えた壊滅的な影響を終わらせるものではありません」とXに投稿した。
「イスラエルはガザの病院を侵略し、下水施設や浄水場、農地などの重要なインフラを破壊しました」
「たとえ今日ガザの再建が始まったとしても、イスラエルのジェノサイドの影響で、パレスチナ人は何年も苦しむことになるでしょう」
ハフポストUS版の記事を翻訳・編集しました。