お酒は身体にどんな影響を与える?心臓、肝臓、体重、がんリスクとアルコールの関係

アルコールが身体に良いという研究結果もありますが、実際はどうなのでしょうか。専門家に聞きました
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Kinga Krzeminska via Getty Images
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お酒を飲む機会の多い年末年始を過ごした後、1月にアルコールを断つ「ドライ・ジャニュアリー」を実践しようと決意をした人もいるのではないでしょうか。

飲酒にさまざまなリスクが伴うことに、疑問の余地はありません。

米疾病予防管理センター(CDC)は、アルコールは高血圧やがん、心臓病、肝臓病などの疾患のほか、自動車事故や暴力など多くの問題と関係すると指摘しています。

米保健福祉省の最新ガイドラインは、男性は1日に2杯以下、女性は1杯以下までの飲酒を「適度な量」としています(日本の厚生労働省によると、適度な飲酒量は1日平均で純アルコール約20g程度)。

その一方で、赤ワインは心臓に良い適度なアルコールは長寿と関連しているなどの研究結果もあり、「アルコールには身体にとって良い面もあるのではないのだろうか」と考える人もいるかもしれません。

専門家によると、「アルコールは身体にとって良いこともあるのか」という問いに対する答えはとても複雑です。

今回は、アルコールが心臓、体重、肝臓、そしてがんリスクに耐える影響を専門家に聞きました。

アルコールが心臓に与える影響は

心臓専門医のドン・ファム氏は、「アルコールは心臓に良いのか」という質問について「本当のところ、まだよくわかっていないのです」と、ハフポストUS版のメール取材に説明しました。

ファム氏によると、アルコールが心臓に良いという説は、1990年代に注目された『フレンチパラドックス』に由来します。

フランスの人々は飽和脂肪の摂取量や血圧、喫煙率が他国と変わらなかったにも関わらず、心臓病での死亡リスクが低く、注目されたのが赤ワインを多く飲んでいたことだったといいます。

しかし、ファム氏は「直接的な因果関係があるのか、もしくは健康的なライフスタイルや他者との交流の多さによるストレス軽減など、他の要因が関与しているのかは不明です」と述べています。

赤ワインに含まれる抗酸化作用のあるポリフェノール「レスベラトロール」が心臓に良い影響を与えるとも言われていますが、実際はどうなのでしょうか。

ファム氏によると、レスベラトロールが善玉コレステロールを増やし、心臓病や脳卒中、糖尿病のリスクを低下させる可能性を示唆する研究もあります。

ただし同氏は、レスベラトロールには炎症や血栓を減らす可能性があるものの、「データにはまだばらつきがあり、さらなる研究が必要」と説明します。

確実にわかっているのは、大量の飲酒は避けるべきということです。

「アメリカ心臓協会は、お酒を飲む場合は適度な量にするのが重要だと推奨しています」

「これは女性の場合は1日1杯、男性の場合は1~2杯に相当します。なお、短時間に大量に飲む『ビンジ飲酒』は、女性で2時間に4杯以上、男性で5杯以上と定義されます」

アルコールが体重に与える影響は

管理栄養士のマギー・ミカルチック氏によると、体重を減らしたい場合は特に飲酒に注意が必要です。

「アルコールには1グラムあたり約7キロカロリー含まれています。さらに、多くのアルコール飲料には甘味料や砂糖が加えられているため、カロリーが増加します」

アルコールを代謝(分解・合成)する肝臓では、脂肪も代謝されます。

ミカルチック氏は「アルコールが脂肪の代謝と蓄積を遅らせるため、結果的に体重増加につながる可能性があります」と説明します。

また、生活習慣の観点からも良くない影響があるといいます。

「多くの人は、お酒を飲むと二日酔いになり、睡眠の質や運動への意欲、翌日の健康的な食事選択など、多くの面で健康的な生活習慣に影響を与えて、悪循環を作り出すことがあります」

ミカルチック氏は赤ワインに健康効果がある可能性を認めつつ、アルコールの本当の利点は「得られる楽しさ」にあると考えています。

「食事と同様に、アルコールは楽しい時間を過ごすためのものになり得ます。ミクソロジー(カクテル作り)は一種の芸術とも言えるでしょう。私は、お酒に対する最善のアプローチは、バランスと計画的な利用だと考えています」

アルコールが肝臓に与える影響は

前述の通り、アルコールの大部分は肝臓で分解されます。そのため、飲酒が肝臓に負担をかけ、悪影響が生じる場合があります。

管理栄養士のジェン・シャインマン氏は「男性と女性のそれぞれに推奨されている1日の飲酒量を超えたり、ビンジ飲酒をしたりすると、肝臓がダメージを受け、脂肪肝や肝硬変などの病気を引き起こす可能性があります」と説明します。

シャインマン氏によると、過剰なアルコール摂取は、肝臓がんのリスクを高める可能性もあります。

「1日3杯の飲酒が肝臓がんのリスクを高めるという研究結果もあります。肝臓は体内でアルコールを分解し、排出するための働きをします。すでに肝臓病を患っている場合は、一切飲酒をしないことをお勧めします」

アルコールががんリスクに与える影響は

シャインマン氏によると、アルコールは肝臓がん以外のがん発症リスクも高めます。

「アルコールは、複数の方法でがんリスクに影響を与えます。まず、体内でアルコールが分解されると『アセトアルデヒド』という、有毒な化学物質が生成されます。アセトアルデヒトは、DNAを傷つけ、がんを引き起こす可能性があります。また、アルコールが体内で酸化ストレスを引き起こし、細胞にさらなるダメージを与えることもあります」

シャインマン氏は、アルコールがビタミンB群やビタミンC、Eといった重要な栄養素の吸収に影響を与える可能性があるとも述べています。

「多くのビタミンや抗酸化物質の不足は、がんリスク増加と関連しています。また、アルコールがエストロゲンなどのホルモンレベルを上昇させ、乳がんリスクを高める可能性もあります」

アルコールを完全にやめる必要はある?

一般的な話として、健康であれば、必ずしもお酒を完全にやめる必要はありません。ただし、健康のために飲酒を勧める医者はいないでしょう。

研究によると、飲酒をするのであれば、定期的に飲まない期間「休肝日」を設けることが健康に良い影響を与える可能性があります。

また、どんなお酒を飲むにしても、常に適量を守ることが重要です。

ハフポストUS版の記事を翻訳しました。