片づけられない親への“NGワード”がこれだ。“実家片づけのプロ”が教えるケンカにならない「説得方法」

実家を片づけたいのに、親に「自分たちでするから」と拒否されてしまう…。1500軒以上を片づけたプロが教える“親の説得方法”とは?

年末年始の帰省は、実家を片づける好機。親が元気なうちに片づけを進めておくことで、将来的に在宅で介護を受けやすくなり、財産管理や遺品整理の負担も軽くなります。

しかし「実家を片づけたほうがいい」と分かっていても、先延ばしにしがちな大きな理由は「親が反対するから」。頑なに拒否する親をどのように説得すればよいのでしょう。片づけアドバイザーの石阪京子さんが出版した「『介護』『看取り』『相続』の不安が消える!実家片づけ」(ダイヤモンド社)から抜粋・編集してお届けします。《全3回の第1回/つづきを読む》

「もったいない」「いつか使う」「おけるから置いている」

片づけをしようとすると、必ず耳にするのが見出しの三つの言葉です。

実家が広い場合、置く場所はあるんですよね。狭い家だとしても、それは一応置けているから(どんなに邪魔だとしても)、「置いておけるモノをなんでわざわざ捨てなくてはいけないんだ」という心理が働いて、捨てるのを拒みます。「大事だから捨てられない」というよりも、「わざわざ捨てなくていい」という感覚です。

そういう場合の、切り返し方を左のページにまとめました。ポイントは、大事ではないモノを置いておくことで、いかに損するかを伝えること。言い方は、穏やかに。冷静に。第三者が客観的な意見を述べるようなイメージで伝えてください。

『実家片づけ』の著者で、片づけアドバイザーの石阪京子さん
石阪京子 『実家片づけ』 ダイヤモンド社刊
『実家片づけ』の著者で、片づけアドバイザーの石阪京子さん

「三大言い訳」にはこう切り返す!

①「もったいない」⇒「売れるかどうか、調べてみよう」

そのモノを客観的に見ると、実は価値がないということをわかってもらうのがポイント。値段を調べてみて、値がつかない場合はそれを伝える。また、仮に300円だった場合、「自分はここに1時間かけて片づけに来ている。それなのに300円のモノにこんなに時間をかけて対応していたら、時間と労力がもったいない」と、モノそのものではなく、時間と労力がもったいないと伝えるのも有効。

②「いつか使う」⇒「誰がいつ、どんなときに使うの?」

例えば、昔ギフトでもらったタオルが出てきた場合。箱から出して「はい、どうぞ。今すぐ使ったら?」と渡す。親はたいてい「今すぐは使わない」と言って拒むけれども、そのときは「じゃあ、いつか使うのは誰? 私ではないよ。私はいらない。お母さんはいつ使うつもりなの?」などと問いかけて。

③「置けるから置いている」⇒「ゴミの処理費が上がっているよ」

電化製品や大型ゴミなどは、ゴミを出すのもタダじゃないこと、その価格もどんどん上がっていることを伝え「今、処理しないと損をするよ」と伝える。

絶対に言ってはいけない「NGワード」とは?

片づけを拒む親に言ってはいけない言葉とは…?(イメージ写真)
maruco via Getty Images
片づけを拒む親に言ってはいけない言葉とは…?(イメージ写真)

カチンとくると、ついつい強い言葉を放ってしまうことがあります。
代表的な言葉は、次の三つ。

・「(頭ごなしに)捨てて!」
・「こんなの、いらないでしょう」
・「なんでこんなことしてるの?」

実はこれ、全部私も父に言いました。「捨ててくれないと、お父さんが死んだ後、私が困るのよ!」とか、効率の悪い家事のやり方を見て「なんでこんなことしてるの?」とか。自分のやり方を押しつけたり、相手の考えを否定したりするような言葉をたくさん言ってしまいました。

当然ながら、こんなことを言ったら相手は怒ります。「うるさい! もう放っておいてくれ」と心を閉ざします。そのせいで、ずいぶん遠回りをしてしまったし、父の心も傷つけたと思います。

だから、読者の皆さんはそうならないために、こういう言葉が口から出そうになったら次の言葉を心の中で唱えて、ぐっとこらえてください。

「これを言ったら前に進まなくなる」

暴言を吐いたら、ことが前に進まなくなるのでこちらの負けです。実家片づけは、親がモノに対して抱えている執着をはがしていく作業でもあります。北風と太陽ではありませんが、ビューンと冷たい風を吹きつけたら相手はガードを固くするだけ。

だからそうではなくて、「うんうん、わかるよ。大丈夫だよ」と、太陽のような温もりで相手を包んでいくことが大切なのです。

実家片づけは、親の「切ない気持ち」に寄り添いながら進めるのがコツなのだそう(イメージ写真)
Yusuke Ide via Getty Images
実家片づけは、親の「切ない気持ち」に寄り添いながら進めるのがコツなのだそう(イメージ写真)

「終活」ではなく、これからの人生を楽しむために片づける

片づけをすると、どんな楽しい未来が待っているのか。その具体的なイメージを伝えることは親の片づけスイッチをオンにする有効な手段です。

例えば、Cさんの実家はゴミ屋敷でした。モノが多くて危ないし、ホコリがすごいしトイレも汚い。Cさんは独身ですが、お兄さんは結婚して子どもがいました。けれども、そんな実家にお兄さんが初孫を連れて行くことはありません。ご両親がどんなに頼んでも、「危ないから無理」と断固拒否。当然ですよね。

そこで、両者を憂いたCさんが実家片づけを決意。腰が重かったご両親も、お兄さんの「片づいたら孫を連れてくるよ」という言葉に心を動かされ、最後までやり切ることができました。幸せな未来を想像させるというのは、親の片づけスイッチをオンにする最大のポイントです。

実家片づけというと、「終活」を思い浮かべて寂しい気持ちになる親御さんもいるかもしれません。でも、本来、実家片づけは、暮らしを再構築するためのものです。

若い頃の家のままだと、どうしても今の生活にはマッチしない部分が出てきます。過去のモノに空間を圧迫されて、未来を楽しむための余白がありません。だから、片づけて、風穴を開けて、暮らしを再構築するのです。そうすれば、親御さんも新しい思い出をまだまだたくさん作って、さらに充実した人生を送ることができます

80代のDさんは家を片づけていたらギターが出てきて、「そうそう、私、昔ギターが好きだったのよ」と、片づいたリビングで趣味に挑戦する意欲もわいてきました。散らかった部屋では、とてもそんな気は起こらなかったのではないでしょうか。

【PROFILE】石阪 京子さん

片づけアドバイザー。宅地建物取引士、JADPメンタル心理カウンセラー・上級心理カウンセラー、大阪で夫と不動産会社を起業、夢のマイホームを手に入れても片づかないことで理想の暮らしができないと諦めている多くの人に出会い、家の片づけを提案。独自のメソッドは、一度やれば絶対にリバウンドしないのが特徴で、直接指導した人は1500人を超える。ブログ「片づけの向こう側」でも発信中。