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ブロードウェイの人気ミュージカルを映画化した「ウィキッド ふたりの魔女」が3月7日に公開されるのに先駆け、主演のシンシア・エリヴォさん、アリアナ・グランデさん、ジョン・M・チュウ監督が来日。2月19日に東京・日比谷でレッドカーペットとプレミアイベントに登壇した。
アメリカでは24年11月に公開され、プレミアイベントで世界各地を回ったが、今回の東京が3人にとっても最後の場所。シンシアさんは2020年、アリアナさんは2017年以来の来日で、レッドカーペットは東京ミッドタウン日比谷の1階のスペースで行われ、通行人からも大きな注目を集めた。
大歓声の中登場した3人は、日本のファンからのサインや撮影にも笑顔で応じ、久しぶりの交流を楽しんだ。
「自分自身であり続けることに恐れを抱かなくてもいい」
「ウィキッド」は「オズの魔法使い」の前日譚で、「西の悪い魔女」となる緑色の肌をしたエルファバと、「善い魔女」となるグリンダの友情や成長を描いた物語だ。エルファバ役をシンシアさん、グリンダ役をアリアナさんが演じた。
メガホンをとったジョン監督は、アジア系のキャストで撮った「クレイジー・リッチ!」を大ヒットに導き、その後のミュージカル映画「イン・ザ・ハイツ」でも高い評価を得た。
「ウィキッド」は第97回アカデミー賞で作品賞、主演女優賞(シンシアさん)、助演女優賞(アリアナさん)など10部門にノミネート。美術や衣装、音楽系の部門でも注目を集めている。
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舞台挨拶で、ジョン監督は「才能あるこの2人と、このタイミングで一緒に仕事ができてうれしい」とコメント。世界で共感を呼んでいる理由については、「正反対の2人(エルファバとグリンダ)が違いを乗り越えて友情を結ぶ。こういった物語を世界中の人が欲していて、こういう美しい物語、出会いが可能だということを、歌とダンスで見せてくれるからだと思う」と述べた。
シンシアさんも、「素敵だったのは映画を通じてファミリーを形成できたこと。愛、シスターフッド、成長が描かれていて、演じるのが光栄でした。特にこの素晴らしい2人と一緒にできたことが、この作品をより素敵なものにしている」と2人への感謝の気持ちを語った。
また、ミュージカル版「ウィキッド」を「22年間愛してきた」というアリアナさんも「人生の複雑さや、怖がらなくてもいいよ、自分自身であり続けることに恐れを抱かなくてもいいよと、この作品はたくさん語ってくれています」と、作品に込められたメッセージについて話した。
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「Defying Gravity」や「Popular」での撮影裏話
シンシアさんは、トニー賞ではミュージカル主演女優賞を獲得し、アカデミー賞でも今回が2度目の主演女優賞ノミネートになるなど、舞台と映画で活躍し、その歌声でも魅了してきた。
アリアナさんも、10代の頃にブロードウェイミュージカルでデビューし、その後歌手として数々の歴史的快挙を果たした。
そんなキャリアの2人だが、今回の「ウィキッド」出演にあたっては、プロのトレーナーの力も借り、様々な準備をして挑んだという。
シンシアさんは、「『Defying Gravity』では、飛んでいるときの気持ちがわからなければ歌えないと思って、スタントも自分でやりたいと思いました。飛びながら同時に歌えるレベルまで持って行けたのは、スタントとボーカルのコーチがいたからこそ」とスタッフにも感謝。「撮影現場でもライブで歌い、自分はこの瞬間を生きていると感じることで、作品をよりリアルにしてくれた」と撮影の裏側を明かした。
元々広い音域を歌うことで知られるアリアナさんは、「これまで自分で使ったことのない声やソプラノのトレーニングをした」と明かし、シンシアさんと同じように、「セットでライブで歌うことで、本当の意味で自分の感情を表現できました。『Popular』ではアドリブを入れ、シンシアのリアクションを感じることができた」と振り返った。
「真に迫っているか・リアルであるか」
舞台挨拶の途中からは、日本語吹替版キャストを務めた高畑充希さん、清水美依紗さん、kemioさん、ゆりやんレトリィバァさんも登壇。
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シンシアさんの大ファンというエルファバ役の高畑さんは、来日コンサートにも足を運んだといい、グリンダ役の清水さんも「いつも新しい姿をみせてくれるアリアナにまた勇気をもらいました」と話し、両者とも特別な思いをもって「ウィキッド」の吹替に挑んだことを明かした。
映画・ドラマのほかミュージカルでも活躍する高畑さんはシンシアさんに聞いてみたいこととして、「舞台と映像分野、パフォーマンスの観点で意識して演じ分けている部分はありますか?」と質問。
シンシアさんは「少しだけ調整していますが、どちらの場合も何より大事にしているのは、真に迫っているか・リアルであるかを追求することです」と明かした。
一方の清水さんは「数カ月かけて演じたグリンダについて新たに驚かされたことは?」と質問。
アリアナさんは「強さです。面白いところ、ふざけたところもあるけれど、何より自分を信じている。いろんな色を持っているところがとても好きで、その人間性からたくさんのインスピレーションを受けた」とグリンダの魅力について語った。
高畑さん、清水さんは本国でのオーディションを経て吹替キャストの座を掴んだ。舞台上では同じ役を演じた日米のキャスト同士がハグをしあう一幕もあった。

「ウィキッド」は二部作構成となっており、続編「Wicked: For Good」はアメリカでは25年11月に公開予定だ(日本では未発表)。
引き続きジョン監督がメガホンをとり、シンシアさんとアリアナさんも続投。今回の舞台挨拶でも、アリアナさんが登壇の際にロングドレスで階段を上るのに手間取っているとシンシアさんらが助けに行ったり、3人で楽しそうに通訳者と腕を組んだりして、会場を和ませるシーンもあった。映画の中ではなく、現実でも、3人の友情やチームワークのよさが感じられる時間だった。
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(取材・文=若田悠希)
◾️️作品情報
『ウィキッド ふたりの魔女』
3月7日(金)より、全国ロードショー
配給元:東宝東和
(c)Universal Studios. All Rights Reserved.