シリアでは2011年、「アラブの春」が波及する形で民主化を求める抗議活動が起きたが、アサド政権が武力で弾圧。
武装した反政府勢力との戦闘が内戦となり、ISなどの過激派組織も加わる複雑な紛争へと発展した。
国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)によると、2011年の紛争開始から2022年までに推定で30万6000人以上の民間人が死亡し、1400万人以上が国外へ逃れた。
この長期化した内戦に苦しむシリア難民の窮状を伝え、世界中に衝撃を与えた写真がある。
2015年9月2日にトルコ・ボドルムの海岸で亡くなっているのが見つかった、2歳のアラン・クルディさんの写真だ。
アランさんの家族はシリアから逃れた後、ヨーロッパを目指してゴムボートでトルコからギリシャのコス島に向かっていた。
しかし、途中でボートが転覆。アランさんの遺体は海岸に打ち上げられた状態で発見された。この転覆で、アランさんと5歳の兄ガーリブさんと母親リハナさんを含む12人が亡くなった。
トルコの警察官に抱え上げられるアランさんの写真は多くのメディアで取り上げられ、紛争で日常を奪われて生きる場所を命がけで探し求めるシリア難民の象徴になった。
一命を取りとめた父親のアブドラさんは、家族を失った悲しみの中、ハフポストアラビア版の取材に「逃げるための費用を工面するのは容易ではなく、ライフジャケットを買うことができなかった」と語った。
内戦の間、アランさん家族のように国を逃れた多くのシリアの人たちが、船やボートの事故で亡くなった。
アサド政権が崩壊した後、ソーシャルメディアには「幼いアラン・クルディさんのことを思い出した」「あなたを忘れない」「生きていたら11歳になっていた」など、9年前に亡くなったアランさんを追悼するメッセージが投稿されている。