暦(こよみ)のうえではすでに立冬を過ぎ、温かいコーヒーを淹(い)れる機会も増えてきました。コーヒーを抽出した後に残るコーヒー粉を皆さんはどうしていますか?
ウェザーニュースが2022年に実施したアンケート調査では、コーヒーをドリップしている人のうち61%が抽出後に残るコーヒー粉を捨てているという結果になりました。ついそのまま捨ててしまう人が多いようですが、これは実にもったいないといいます。抽出後に残ったコーヒー粉には、活性炭(かっせいたん)の5倍もの脱臭効果があるのだそうです。
抽出後に残ったコーヒー粉がもつ驚きの特性とその再利用法について、UCCコーヒーアカデミーに解説して頂きました。
水分を含むと5倍以上の脱臭効果!?
抽出後のコーヒー粉には強い脱臭効果があると聞きました。それはなぜなのでしょうか。
「抽出後のコーヒー粉は『多孔質(たこうしつ)』といって、多数の目に見えない小さな穴(細孔=さいこう)が空いている素材です。
イヤな臭いのもとになる物質の代表としてアンモニアなどが挙げられますが、まず抽出後のコーヒー粉に含まれる水分がアンモニアを溶かし、多数の穴がアンモニアを捕捉します。さらに抽出後のコーヒー粉の分子がアンモニアを化学的に吸着(きゅうちゃく)・中和(ちゅうわ)します。
これによっていやな臭いが消える、脱臭効果が発揮されるのです」(UCC)
脱臭剤としては活性炭がよく用いられますが、抽出後のコーヒー粉はどのくらいの脱臭効果をもっているのですか。
「UCCの調べでは、抽出後のコーヒー粉のアンモニア吸収率は活性炭の約5倍という研究結果が出ています。
具体的には水分率7%の活性炭のアンモニア吸収率は17.3%ですが、水分率4%の乾燥した抽出後のコーヒー粉の吸収率は41.0%と活性炭の約2.37倍、水分率21%のしっとりした抽出後のコーヒー粉なら吸収率90.5%と、活性炭の約5.23倍にも達しているのです」(UCC)
環境にもやさしい、抽出後のコーヒー粉の脱臭効果をいかした再利用方法は、次のとおりだそうです。
脱臭効果をいかした再利用方法
(1)水分を含んだままトイレの脱臭剤に
水分を含んだままの抽出後のコーヒー粉は小皿に入れて、トイレの脱臭剤などに使うのがいいでしょう。
「家庭でレギュラーコーヒーを淹れた後に残ったコーヒー粉の水気を切って、皿などのなるべく平たい容器に入れます。あとはご自宅のトイレなど臭いが気になる場所に置いておくだけです。
コーヒー粉は1~2日をめどに交換してください。保管場所の温度が高くなるとコーヒー粉にかびが生えるリスクがありますので、注意が必要です」(UCC)
(2)乾燥させて靴や冷蔵庫の脱臭剤に
抽出後のコーヒー粉を乾燥させて、靴や下駄箱、冷蔵庫に入れて脱臭剤とする活用法もあります。
「まず、抽出後のコーヒー粉を十分に乾燥させます。乾燥したら皿などが置けない場所ではコーヒー粉が散らからないよう、お茶のパックのような不織布(ふしょくふ)など目の細かい袋に入れてください。袋の口をひもなどでしっかり結べばでき上がりです。
コーヒー豆のように小さな麻袋に入れて置くのも、おしゃれな雰囲気を醸し出してくれるのでおすすめです」(UCC)
雑草対策や肥料としての効果も
脱臭剤としてのほかに、抽出後のコーヒー粉の再利用法はありますか。
「ガーデニングや家庭菜園を造る際にも役立ちます。UCCと近畿大学農学部との共同研究で、抽出後のコーヒー粉を土に混ぜることが冬作(ふゆさく)のヒマワリ、夏作(なつさく)のライムギなどの緑肥作物(りょくひさくもつ)にさまざまな好影響を与えてくれることがわかったのです。
抽出後のコーヒー粉を土に混ぜた1年目は、植物の成長を抑えてくれる効果がみられました。これにより、コーヒー粉が雑草対策に役立つことになります。コーヒー粉に含まれるカフェインやポリフェノールなどの物質が、雑草の成長を抑えてくれたと考えられています。
抽出後のコーヒー粉を土に混ぜてから12ヵ月(1年)の間に植物の成長抑制効果は減少し、2年目には土壌の炭素や肥料となる窒素の含有量が増えるなどの土質改善効果が生じました。
12ヵ月の間に土壌内のかびや細菌などの微生物群が、抽出後のコーヒー粉に含まれていたカフェインとポリフェノールを分解して減少させます。さらにコーヒー粉に含まれるたんぱく質も分解されて無機窒素に変っていきました。これにより植物の成長抑制効果は2年目には失われることになり、作物の成長を妨(さまた)げなくなります。
無機窒素は『肥料の三要素』の一つですので、2年目には抽出後のコーヒー粉が肥料としての効果を発揮することになり、逆に作物の成長を促すようになったと考えられます」(UCC)
寒い日に温かなコーヒーを味わったら、残ったコーヒー粉は捨てずに脱臭剤としてリユースし、2年越しのガーデニングや家庭菜園の雑草対策や肥料としても活用してみてはいかがでしょうか。
取材協力・画像提供
UCCコーヒーアカデミー
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