和歌山県は11月8日、「男性育休100%宣言」「勤務間インターバル宣言」「女性の再就職応援宣言」の3つを同時に宣言した。
3つの宣言は、コンサルティング会社「ワーク・ライフバランス」(東京都)が提唱しているもので、2019年から計260以上の企業や自治体が賛同している。
岸本周平知事は8日に開かれた記者会見で、「3つを同時に宣言することは全国で初と聞いているが、十分実現できると思って宣言した」と経緯を語った。
人手不足解消は多様な労働力が必要
3つの宣言の概要は次のとおり。
▽男性育休100%宣言
産後うつの可能性などを背景に男性の育児休業は命を守る役割もあるとし、組織の規模などは問わず将来的に育休が取得しやすい環境を実現する。
▽勤務間インターバル宣言
退勤から翌日の出社までに一定時間(11時間)以上の休息を取る「勤務間インターバル宣言」により、従業員の健康を守ることや企業の生産性を高めることに力を入れる。
▽女性の再就職応援宣言
育児や介護、パートナーの長時間労働や転勤といった事情で自らのキャリアをあきらめてしまう女性たちが、再び活躍できる環境を整備する。
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記者会見では冒頭、ワーク・ライフバランスの小室淑恵社長が少子化や働き方改革の現状について話した。
まず、1人目の子どもが生まれた時にパートナーが家事・育児をしなければ、孤独な育児が妻のトラウマになって第2子が生まれない傾向にあることや、厚生労働省の「若年層における育児休業等取得に対する意識調査」では、若年男性の約3割が半年以上の育休取得を希望していることを説明した。
現在は努力義務となっている「勤務間インターバル」についても、EUのように7時間睡眠を確保して労働生産性を上げる必要性を訴えた。
また、妻が出産後に退職せず就業を継続した場合、世帯収入は退職した場合と比べて生涯で2億円ほど増えるという東京都の試算も紹介し、「人手不足を解消するのは残業ではなく多様な労働力の参画が必要だ」と言及した。
和歌山県知事が決意述べる
和歌山県によると、男性職員の育休取得率は近年増加している。2019年〜21度は10%台だったが、22年度は29.9%、23年度は63.3%に増えた。
管理職の研修を増やしたり、人事課にフィードバックをする仕組みを作ったりし、育児関連の制度をまとめたハンドブックに職員の体験談を掲載する取り組みも実施してきたという。
また、過去に県職員として一定期間の勤務経験があり、結婚や出産、子育て、介護などで退職した人を対象にした採用試験もおこなっている。
今後、勤務間インターバルの確保に向け、労働時間の長さや配置を自ら決定できる「フレックスタイム」の導入も検討するとした。
記者会見で、和歌山県の岸本知事は「働き方改革を努力して進め、この1年で男性職員の育休取得率は6割を超えた。勤務間インターバル、女性職員の再就職応援もしっかりやっていきたい」と決意を語った。