アメリカで11月5日の大統領選挙と同時に行われた中絶の権利をめぐる住民投票で、10州のうち7つで、州憲法で中絶の権利を保障もしくは拡大する提案が可決された。
7つの中には共和党が強い保守的な州も含まれており、中絶の権利が広く支持されていることを示す結果となった。
可決された7州は?
アメリカでは連邦最高裁が2022年にロー対ウェイドを覆して以来、20以上の州で中絶が禁止、もしくは厳しく制限されるようになった。
今回10州で行われた住民投票では、連邦レベルで守られなくなった中絶の権利を、州の憲法で保障するかどうかが問われた。
<10州の結果>
可決:アリゾナ、ミズーリ、ネバダ、モンタナ、コロラド、ニューヨーク、メリーランド
否決:フロリダ、サウスダコタ、ネブラスカ
可決した州の中でも、特に注目を集めたのがミズーリだ。
保守的で知られるミズーリ州では、中絶がほぼ全面的に禁止されていた。
しかし、住民投票が可決されたことで、胎児が子宮外でも生存できるようになるとされている妊娠24週目頃までの中絶が受けられるようになる。
最高裁判決で中絶の権利が保護されなくなった後、レイプや近親相姦による妊娠の中絶も例外なく禁止していた州法が撤廃されたのは初めてだ。
アリゾナ州、モンタナ州、ネバダ州でも、24週目頃までの中絶の権利を保障する州の憲法改正案が可決された。
同じく中絶が合法だったニューヨークでは、州憲法の平等条項で、妊娠の権利や避妊などのリプロダクティブライツを保障し、差別を禁じる住民投票が可決された。
一方、フロリダ、ネブラスカ、サウスダコタの3州では住民投票が否決された。
現在12週目以降の中絶が禁止されているネブラスカでは、24週目頃までの中絶を可能にする改正案が出されていたが、僅差で否決された。
6週目以降の中絶が禁止されているフロリダでは、過半数(57%)が改正案に賛成したものの、州憲法の改正に必要な60%に達さず、否決された。
トランプ氏勝利がどう影響するか
10州のうち7州で可決されたことで、奪われていた中絶の権利が一部の州で回復した。
しかし、中絶規制を進めてきたドナルド・トランプ氏が大統領選挙に勝利したことで、再び権利が脅かされる可能性がある。
リプロダクティブヘルスの法律を専門とするカリフォルニア大学デイビス校のメアリー・ジーグラー氏によると、全米で中絶を禁止する法律が連邦議会で可決された場合、たとえ州憲法で保障されていても中絶の権利が守られない可能性がある。
同じことは、中絶薬の郵送を禁止する「コムストック法」が連邦法として制定された場合にも当てはまるという。
また、5日の住民投票が可決された州では、中絶反対派が住民投票に対する訴訟を起こし、待機期間やカウンセリング義務付けなど、さまざまな方法で中絶を規制しようとすることが考えられる。
ハフポストUS版の記事を翻訳・編集しました。