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回答者の4人に1人が、職場での差別やハラスメントなどが原因で、「転職を考えたことがある」と答えた。
また7割が結婚の平等(いわゆる同性婚)を法制化してほしいと回答。望む理由として、「法律ができることで、差別や偏見が減り、生きやすくなるかもしれない」という声もあった。
◆「結婚は?」という質問、風俗への誘い…転職のきっかけは?
調査はゲイ専用である同結婚相談所の会員を対象に、インターネット上で9月16日から10月6日に行い、172人から回答を得た。
回答者は20代が15.1%、30代は42.3%、40代が31.4%、50代が11.6%、60代以上が0.6%。居住地は87.8%が関東圏、12.2%が関東圏外だった。
調査のきっかけについて、担当したコンサルタントの石垣桃さんは、「近年SOGI(性的指向、性自認)に関する研修をしたり、LGBTQ当事者に向けた社内制度を作ったりする企業が増えていることが背景にあります」と説明する。
「少しずつ社会は変わっていると言われ、私自身も実感する部分があります。一方で会員様とお話しすると、職場などで差別的な発言や異性愛が前提の会話などに悩む方も多く、実情のギャップも感じてきました」とし、「社会がよりよく変わっていくためには、可視化されていない当事者の実情を多くの人に知ってもらう必要があると感じました」と話す。
「自身のセクシュアリティを理由に、転職を考えたことがあるか」について「考えたことがある(現在考えている)」と答えたのは16.3%。また7.0%が、実際に「転職したことがある」と回答した。
理由として▼「結婚は?」「彼女は?」と聞かれる▼独身のため「ゲイなの?」と聞かれる▼差別的な発言を耳にする▼風俗に誘われるーーなど、異性愛者であることが前提の空気に疲弊したり、ハラスメントに悩んだりする声が多くあった。
石垣さんは「差別的なことを言ってはいけないという認識は社会で広がりつつあると感じるものの、意識的か無意識かによらず、差別的な発言はまだまだ多いと感じています」と分析する。
社内で独自のパートナーシップ制度を設ける企業も増えてきたが、石垣さんは「制度の利用はカミングアウトをすることでもあり、環境的に使うことが難しいと話す人もおり、まだまだ改善すべきことが多いと感じています」と話す。
続いて、自身のセクシュアリティを理由に「生活拠点を変えたいと考えた、もしくは変えたことがある」人は、全体の37.2%に上った。
内訳は、上京が21.5%、海外への留学・移住が6.4%、上京と海外への留学・移住の両方が9.3%だった。
なぜ上京を考えたことがあるゲイの人は多いのか。地方に生きづらさを感じる理由で最も多かったのは「地方には出会いがない」という回答だった。
「都心へ行けば、同じセクシュアリティの人や、ジェンダーへの理解がある人も多く、周りの目を気にする必要がなくなると思った」と答える人もいた。
また、せっかく同性パートナーができても、住んでいる地域にパートナーシップ制度が導入されていなかったり、同性愛者への偏見が強くコミュニティが狭かったりするため、一緒に出歩くことができないという声もあった。
石垣さんは、「セクシュアリティは恋愛だけに関わるものだと思う人も多いかもしれないのですが、実際は居住地や仕事など、人生のあらゆる面で、影響するものだと感じています」と指摘。
「セクシュアリティに対する差別によって、本当の望みと異なった人生を歩む人もいると感じています。そういったことが少なくなるよう、社会全体の認識が変わっていく必要があると感じています」と話す。
◆結婚の平等求めるのは、「結婚のためだけじゃない」
結婚の平等(いわゆる同性婚)の法制化について「望んでいる」と回答したのは71.0%。
そのうち、「認められたら利用したい」は51.2%、「利用しない」は16.3%、「利用するかは分からない」は3.5%だった。
法制化を「望んでいない」と答えたのは8.7%。「同性婚=セクシュアリティのカミングアウトに繋がるため、周囲の理解がない環境だとリスクになる」という声もあった。
石垣さんは「職場環境も含め、日本社会の認識が変わることで、『利用しない』と答えた方の意向も変わっていくかもしれません」と話す。
また、自身のセクシュアリティを理由に「海外留学・移住を考えたことがある」と答えた15.7%のうち、理由として最も多かったのは、「同性婚が認められている国ならセクシュアリティに関して理解があると思った」という回答だ。
結婚の平等(同性婚)が認められている国なら▼好奇な目で見られない▼普通の生活が送れる▼差別や偏見が少ないのではーーといった切実な声も寄せられた。
石垣さんは結婚の平等の法制化について「パートナーと結婚したいという思いだけでなく、法律があることで多様な性に理解が広がり、生きやすくなると感じる人が多いことがわかりました」と話す。
「今回の調査では、個人情報の観点から公表は見送ったものの、悲痛な現状やそれに対する思いも多く寄せられました。こうした実情を改善するためにも、結婚の平等などの法整備は、絶対に必要だと思っています」
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30人を超えるLGBTQ当事者が原告となり、結婚の平等を求めて国を訴える「結婚の自由をすべての人に」訴訟は、東京高裁が10月30日、「法の下の平等」を定めた憲法14条1項と、「婚姻や家族の法律は、個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚して制定すべき」と定めた憲法24条2項に違反するという判決を言い渡した。
一連の訴訟の8つ目の判決で、二審では3月の札幌高裁判決に続いて2例目。これで8件中7件で違憲もしくは違憲状態の判決が下されたことになった。一刻も早い結婚の平等の法制化が求められている。