アイスランドで広がりを見せている時短勤務が、従業員だけでなく、国の経済にもポジティブな影響を及ぼしていることを示す調査結果が10月25日に発表された。
2015年から2019年にアイスランドで行われた、賃金を下げずに労働時間を短縮する実証実験の成功を受け、労働組合と雇用主間で結ばれる労働協約では、多くの従業員に時短勤務の権利が認められた。今回の調査は、それにより時短勤務の導入が広がった同国の近年の様子を示している。
独立研究機関「The Autonomy Institute」とサステナビリティと民主主義を実現させるための団体「Alda (Association for Sustainability and Democracy)」が2021年から2022年にアイスランドの大学と政府が実施した調査結果をもとに分析した。
研究によると、労働者の51%が時短勤務を選択しており、そのうち62%が以前よりも勤務時間に満足しており、42%が私生活でのストレスが減ったと答えた。
アイスランドの労働者の50%は週31〜40時間働いている。北欧諸国の中ではまだ長い方だが、2014年に比べ週約4時間減った。
労働時間の削減方法はそれぞれで、週休3日にする場合もあれば、毎日の勤務時間を減らす場合もあるという。
経済は?
アイスランドは2023年、観光業や漁業の輸出が好調で、4.1%の経済成長率を遂げた。
労働市場統計委員会が春に発表した内容によると、アイスランドの労働生産性は過去5年間平均で年率1.5%上昇しており、北欧諸国で最も高いという。
経済活力を示す指標となる失業率も、2023年時点で3.6%とヨーロッパで最も低い水準の1つとなっている。
【きっかけとなった実証実験】
アイスランド政府とレイキャビック市議会は2015年から2つの大規模なトライアルを実施。国内の労働人口の1%にあたる2500人以上が参加し、労働時間を週40時間から35〜36時間に短縮した。短縮による賃下げは行わなかった。
イギリスのシンクタンクとアイスランドの研究機関が2021年6月に発表した報告書は、このトライアルについて「圧倒的な成功」を収めたと評価した。
「多くの職場で、生産性やサービスの品質は維持されたか、向上した」「ストレスや燃え尽き症候群、健康、ワークライフバランスなど、さまざまな指標において労働者のウェルビーイングが劇的に改善した」ーーなどの分析結果が示された。
そもそもこのトライアルが実施されたのは、アイスランドが北欧諸国の中では「労働時間が長い」「生産性が低い」「ワークライフバランスの充実度も低い」といった課題があったためだという。