アメリカのバイデン大統領が10月25日、先住民の子どもたちを同化するために強制的に寄宿学校に入れた過去の連邦政府の政策を謝罪した。
バイデン大統領は、アリゾナ州ヒーラリバー先住民族の居住地で開かれた式典で、「アメリカ合衆国の大統領として、我々が行ったことを正式に謝罪します」と述べた。
「これは遅きに失した謝罪です。はっきり申し上げて、この謝罪に50年もかかったことに言い訳の余地はありません。連邦政府による先住民族の寄宿学校政策は、不名誉な汚点としてアメリカの歴史に残り続けるでしょう」
米内務省は1819〜1969年まで、先住民族を同化、根絶することを目的とした何百もの寄宿学校を運営していた。
先住民族の子どもたちは家族やコミュニティから強制的に引き離され、遠く離れた寄宿学校へ送られた。数万人がこの学校で心理的、身体的、性的な虐待を受け、死亡したり、行方不明になったりした子どもたちもいる。
代表的な一校の創設者であるリチャード・ヘンリー・プラット中佐は1879年、学校の目的を「先住民族を殺し、人間を救う」と表現している。
バイデン氏は25日の式典で、この寄宿学校を「アメリカ史上最も恐ろしい出来事の一つ」と呼んだ。
「私たちは恥じねばなりません。ほとんどのアメリカ人はこの出来事を知りません。大多数がその存在すら知らないのです」
バイデン氏のスピーチを聞いて、出席者の一部は涙を流した。
式典には、先住民族初の政府閣僚で、この寄宿学校の問題に取り組み続けているデブ・ハーランド内務長官も出席した。
ハーランド氏は、母方の祖父母が8歳の時にコミュニティから連れ去られ、寄宿学校で5年間過ごしたことを明かし、「私たちの過去のトラウマについて、アメリカの閣僚が語るのは歴史上初めてです。このトラウマを引き起こしたのは、私が今トップに就いている機関なのです」と語った。
「この恐ろしい出来事は何十年もの間、歴史の教科書から隠されてきました。しかし、この出来事が決して忘れられないように政府は取り組んでいきます」
内務省はこの同化を目的とした寄宿学校についての調査を実施している。
その一つ「癒しへの道」プロジェクトでは、全米12か所を巡り、寄宿学校に入学させられた生存者やその子孫から、学校でどのような経験をしたのかについて聞き取り調査をするツアーを実施した。
また、寄宿学校で何が起きたのか、何人の子どもたちが死亡もしくは行方不明になったのかを調査し、報告書でまとめている。
ハーランド氏は、政府が意図的に先住民族の子どもたちを家族から引き離し、言語や文化、伝統を奪おうとしたことは調査から疑う余地がないと述べた。
「しかし、私は今ここに友人や親族たちとともに立ち、連邦政府が過ちを犯したことを知っています。彼らは私たちの言語や伝統、生活様式を根絶できませんでした。私たちが耐え忍んだからです」
バイデン大統領の謝罪は、民主、共和両党の連邦議員から称えられた。
共和党のリサ・マーカウスキー上院議員は、「今も寄宿学校時代の痛ましい影響に苦しんでいる生存者と先住民コミュニティに謝罪を表明した大統領を称賛します」とコメントした。
「遅くはありますが、先住民族のコミュニティに対する痛みと不正義を認めることは、癒しのための非常に重要な一歩です」
民主党のエリザベス・ウォーレン上院議員も「遅きに失したとはいえ、先住民族の子どもとコミュニティに危害が加えられたことへの責任追及として、大統領の謝罪は歴史的な一歩です」と述べている。
「公に真実を認めることは、想像を絶するトラウマからコミュニティが回復して癒され、連邦政府と先住民族の関係を修復する助けとなります」
ウォーレン氏とマーカウスキー氏は、寄宿学校政策で行われた不正を調査、記録する「真実と癒しの委員会」の設立を求める法案を提出している。
ウォーレン氏は、この委員会の設立のためのために引き続き尽力するとも述べている。
ハフポストUS版の記事を翻訳しました。