芸術・芸能スタッフの35%が「週60時間以上拘束」の過労死ライン超え。うつ・不安障害の疑いが多い傾向も

厚労省が公表した過労死白書。27%が週1日未満である「月0~3日」しか休みを取れていなかった。
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dpmike via Getty Images

10月11日に厚生労働省が公表した「令和6年版過労死等防止対策白書」で、芸術・芸能分野に従事する人々のおよそ35.2%が、1週間の拘束時間が「過労死ライン」に相当する60時間以上に及んでいることがわかった。

全業種の就業者全体の平均である5.5%を大きく上回り、長時間労働が常態化している傾向が浮かび上がった。

約4割が睡眠時間6時間未満

過労死白書では、監督、プロデューサー、技術スタッフ、脚本家など芸術・芸能の製作スタッフ488人にアンケートを実施し、その結果を分析した。

1週間あたりの拘束時間で、60時間以上の割合が最も高かったのは、技術スタッフの46.2%で、次いで舞台監督・制作関係・演出関係の40.7%だった。

1カ月あたりの休日数では、全体の27%が週1日未満である「月0~3日」しか休みを取れていないという結果だった。また、41.2%の人が1日の平均的な睡眠時間は「6時間未満」で、十分な休息が取れていない実態が明らかになった。

1カ月の収入額をみると「40万円以上」の割合が高かったのは、映像監督・助監督・演出家・プロデューサーの61.6%だった。一方「10万円未満」の割合が高かったのは、脚本家・劇作家の45.5%、次いで校正者・組版・編集者の19.0%だった。

「仕事を受ける前に報酬額を掲示されない」などのトラブルも

仕事関係者からのハラスメントについては「傷つくことを言われた」と回答した人は42.0%を占めた。「殴られた、蹴られた、たたかれた、または、どなられた」は22.3%、「必要以上に身体を触られた」は4.5%、「性的関係を迫られた」は3.5%だった。
取引上のトラブルにおいては、特に脚本家や劇作家が、「提示された報酬額どおりに支払われなかった」「仕事を受ける前に報酬額を掲示されない」「発注取り消しを急に言われる」「無理のある納期を求められた」などを経験している割合が高いことがわかった。
「主観的幸福感」は他の業種よりも高い結果となったが、うつや不安障害の疑いがある人は全体で30.5%で、 一般就業者全体の26.5%を上回った。脚本家・劇作家では52.6%を占めた。
調査を受け、厚労省は、各職種における業界団体などが中心となって「メンタルヘルス対策やハラスメント対策を含む仕事環境の向上の取組を推進していくことが望ましい」との見解をまとめている。

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