国際人権NGO「ヒューマン・ライツ・ウォッチ」(HRW)は10月10日、日本で中国政府に批判的なデモやイベントに参加するなどした中国出身者に対し、中国当局が家族を脅迫するなどの弾圧を加えているという調査報告を公表した。
HRWは6〜8月、日本で暮らす25人の中国出身者たちにインタビューを実施。対象者の全員が、新疆ウイグル自治区における人道に対する罪に関わる啓蒙活動や、内モンゴル出身の活動家の本を扱った読書会など、「中国共産党が自らの一党制に対して脅威とみなしている平和的な活動」に関わっていたという。
25人の中には、新疆ウイグル自治区、チベット、内モンゴル出身の人も含まれている。
調査報告によると、インタビューに応じた人の多くは、中国の警察が自身や中国にいる親戚に連絡を取り、日本での活動をやめるよう圧力をかけてきたと証言した。チャットアプリ「WeChat」(微信)の記録やビデオ通話の録画など、証言を裏付ける資料の提供もあったという。
ある新疆ウイグル自治区の出身者は、中国の警察から「親戚の言うことを聞いてさっさと帰ってこい。さもないと家族がどうなっても知らないぞ」と電話で脅されたほか、「中央政府に対する忠誠心を示せ」「日本で活動している人たちの情報を提供すれば、お前の家族の問題はすぐに解決する」などと要求されたと証言している。
中国当局から拘束されることを恐れ、帰国して親戚に会うこともできずにいる人もいたという。
2023年には、日本への留学中に香港の独立を支持するメッセージをSNSに投稿したなどとして、香港出身の当時23歳の女性が逮捕された。女性は国家分裂扇動罪に問われ、禁錮2カ月の実刑判決を受けた。
HRWアジア局プログラムオフィサーの笠井哲平氏は、「中国当局は何のためらいもなく、日本で中国政府の人権侵害を批判している中国出身の人々を口封じしようとしている」と指摘。日本政府に対し、中国政府から嫌がらせを受けている人たちを助けるため、日本に居住する中国出身者らのプライバシーが守られながら弾圧の被害を相談できる支援システムを創設することを求めた。
HRWによると、駐日中国大使館は、中国当局による監視の有無や目的などを尋ねる同団体の質問状に回答しなかった。また、中国政府の日本における弾圧行為への対策などを質問したHRWの書簡に対して、外務省は回答を拒否し、警察庁も回答しなかったという。