メキシコ湾で発生したハリケーン・ミルトンについて伝えていたアメリカの気象学者ジョン・モラレス氏が、放送中に思わず涙ぐんだ。
ミルトンは気圧が急激に低下して、10月7日(現地時間)に5段階で最も勢力の強い「カテゴリー5」になった。
モラリス氏は7日、フロリダ州南部のテレビ局NBC6でミルトンの急速な発達について伝えていた際に「本当に、信じられないほどのハリケーンです」と述べ、言葉を詰まらせた。
さらに「申し訳ありません」と謝罪した後、「ただ本当に……恐ろしい状態です」とミルトンの脅威を伝えている。
ミルトンは、メキシコ湾の高い海面水温などが原因で、わずか18時間でカテゴリー1からカテゴリー5のハリケーンに成長した。
この現象は「急速発達(RI)」と呼ばれる。
モラレス氏は「このハリケーンはメキシコ湾で勢力を増しています。海の温度は信じられないほど高くなっています。ご存知かもしれませんが、記録的な高温です。なぜそうなっているのかお伝えする必要はないと思いますが――地球温暖化、気候変動が原因です」と放送で説明している。
化石燃料の燃焼によって引き起こされている気候変動で、世界各地で海面水温が急速に上昇している。
高い海水温はハリケーンにエネルギーを供給し、短時間で勢力を拡大させる。
モラレス氏は放送後、「地球温暖化による異常気象がどう私を変えたかを原子力科学者会報に書いたので、読んでもらえると嬉しいです。正直に言って、あなたも動揺し、#今すぐ気候変動対策をと求めるべきだと思います」とXに投稿した。
モラレス氏はこの原子力科学者会報の寄稿で、気候変動や温暖化が自身の伝え方を変えたとつづっている。
「私の態度は冷静な懸念から激しい動揺へと変わりました」
「今では嵐を見る目が変わり、伝え方も変わりました。『あなたは変わった』と言われなくても、自分が以前と同じではないことはわかっています。単に事実を伝える冷静な気象学者だった私を知っている人たちの中には、新しい私に慣れていない人もいます。だからこそ、文句を言い、新たな気象の脅威を過剰に報道していると非難しているのです」
「しかし、誰も真実から逃れることはできません。ハリケーンなどの気象現象は、ますます激しさを増しています。火の中でも水の中でも、私は増大する気候危機の脅威を伝えなければならないのです」
ミルトンは、10月7日午後(現地時間)時点でメキシコ・ユカタン半島の北に位置し、9日にカテゴリー3以上の勢力を保ちながら、フロリダ州タンパ付近に上陸すると見られている。
フロリダ州を含むアメリカ南東部は、9月末にハリケーン・へリーンが上陸して甚大な被害を被ったばかりだ。科学者たちはへリーンも気候変動によって勢力が拡大したと考えている。
ミルトンで起きたハリケーンの「急速発達」は、熱帯低気圧の最大風速が24時間で時速35マイル(約56キロ)以上増加する現象だ。科学者たちはこの現象が、気候変動によってますます増えていると警告している。
ミルトンの場合、わずか9時間の間に最大風速が時速100マイル(約160キロ)から時速175マイル(約280キロ)と75マイル(約120キロ)増した。
ハフポストUS版の記事を翻訳・編集しました。