アメリカ大統領選挙の共和党候補ドナルド・トランプ氏は10月7日、保守派の政治評論家ヒュー・ヒューイット氏のラジオ番組で、移民のせいで「アメリカに悪い遺伝子がはびこっている」という差別的な主張を展開した。
トランプ氏は番組で、バイデン政権が「国境を開いて、移民が入って来るのを許した。そのうち1万3000人は殺人犯だった」と述べている。
「彼らの多くは1人どころじゃない人間を殺していながら、今はアメリカで幸せに暮らしている。彼らは遺伝子からして、殺人犯なんだ。私はそう信じている。今、我が国にはたくさんの悪い遺伝子がはびこっている。42万5000人が我々の国に入ってきている。彼らはここにいるべきではない犯罪者なんだ」
かつて大統領だった人物が、「移民は暴力犯罪をする遺伝子を持っている」という人種差別的な発言をすること自体が衝撃的だが、そもそも「バイデン政権中に入国した1万3000人が殺人犯」というトランプ氏の主張は誤りだ。
リストにはICEの移民拘置所に収容されていない犯罪歴のある非市民の数が記載されており、そのうち過去に殺人で有罪判決を受けた人の数は1万3099人だった。
ただし、これはトランプ氏が主張するように、バイデン政権中に入国して拘留されずにいる移民の数ではない。
リストにはバイデン政権だけではなく、過去40年にさかのぼるデータが記載されている。また、滞在許可証を持たない移民だけではなく、グリーンカードなど合法的な資格で入国した人も含まれている。
さらに、ICEの移民拘置所に収容されていない1万3099人が自由に行動しているわけではなく、多くが州や連邦刑務所で服役しており、すでに刑期を終えた人の数も含まれる。
DHSは「殺人で有罪判決を受けた非市民の多くは通常、ICEの拘置所から釈放されない」と述べている。
また、リストでは有罪歴のある犯罪者数は2024年7月時点で43万5719人だったが、NBCはこの数字について「ICEの2023年度予算要求説明書に記載されていた有罪歴のある犯罪者数は、トランプ氏が退任してから5カ月後の2021年6月5日時点で40万5786人であり、トランプ政権時代に多くの人が入国したことを示している」と指摘している。
それにも関わらず、トランプ氏と共和党副大統領候補のJ.C.ヴァンス氏は、リストの数字をねじ曲げて、移民攻撃の材料にしている。
ファクトチェックサイトFactCheck.orgやメディアは、トランプ氏とヴァンス氏の主張の誤りを指摘している。またDHSも9月末に「データは誤って解釈されている」とワシントンポストなど複数のメディアにコメントしている。
「このデータは数十年前までさかのぼるもので、過去40年以上前に入国した人も含まれています。大多数の拘留の決定は、現政権よりかなり前に行われたものです。また統計には、連邦や州、地方の当局の管轄下にある、もしくは服役中の人数も多く含まれています」
また、ヴァンス氏は、オハイオ州スプリングフィールドではハイチ移民のせいでHIVや結核などの伝染病が増加しているという虚偽の主張を投稿している。
トランプ氏は、2024年の大統領選挙で勝利すれば移民を大量に強制送還する予定だとしている。
ハフポストUS版の記事を翻訳・編集しました。