長く続いた残暑も落ち着きはじめ、山々には紅葉狩りのシーズンも近づいています。とくに近年は「低山ハイキング」の人気も高まっています。ハイキングとはいえ相手は自然。予想しえない事故を防ぐためにも油断は禁物です。
紅葉ハイキングの際にはどんな服装がふさわしく、どのような持ち物を用意して行けばいいのでしょうか。健康ウォーキング指導士 (日本ウオーキング協会)・平山貞一さんに伺いました。
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急変しやすい山の気候に注意
秋の紅葉ハイキングで服装や持ち物を選ぶときに注意すべき点はどのようなことでしょうか。
「荒天の日にハイキングを控えたり、少しでも天気の崩れが予想される日には雨具などを準備したりすることはもちろんですが、晴れた日であっても朝晩と日中では気温差が激しいので、注意が必要です」(平山さん)
一般的に紅葉は朝の最低気温が8℃前後より低くなる日があってから、しばらくして色づきはじめます。8℃といえば都市部では冬の気温です。ただし、昼間は気温が20℃近くまで上がることもあるので、朝晩と昼間の気温差が大きくなることを念頭に置いて服装や持ち物を選ぶことが重要になります。
「目的地の標高は平野部に比べて高くなることが普通です。高度が100m上がるにつれて気温は0.5~1℃下がるとされていますので、行き先の標高が平野部より1000m高ければ、気温は5~10℃低くなる可能性があるのです。特に、朝晩は冷え込むためダウンなどの上着は忘れずに、重ね着を基本に服装を選ぶようにしましょう。
さらに、秋の山の天候は平地の都市部に比べて急変しやすく、広域的な天気予報には現れにくい雨や風に見舞われることも少なくありません。予報で最寄り地点の降水確率が0%であっても安心はできません。
ハイキングとはいえ周辺は自然の中です。突然の雨に降られて体調を崩したり、場合によっては道に迷って命の危険にさらされてしまったりする可能性もあるので油断は禁物です」(平山さん)
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ハイキングでの服装は素材選びがポイント
好天が予想されていても、防寒具や雨具は必需品ということですね。そのうえで、山歩きの際の服装選びにはどのような注意が必要ですか。
「服装選びで大切なのは、まず衣類の『素材』です。ハイキングでは動きやすいストレッチ素材が基本で、晴れた日には汗をかきやすいので、ポリエステルなどの吸汗性と速乾性に優れ、保温性も兼ね備えた素材がふさわしいといえます。
一方、ジーパンなどの綿素材の衣類は汗をかいたり雨に濡れたりすると、とくに脚が動きにくくなって疲労がたまってしまいます。また、綿は乾きにくい素材なので気温が下がると一気に体を冷やしてしまう恐れもありますので、ハイキングでの着用は控えたほうが無難です。
最近は吸汗性、速乾性、保温性を備えつつ、おしゃれなデザインのものも増えてきています。アウトドア用品店などで衣類を購入する際、店の人に目的地や時期を伝えて、アドバイスを受けるといいでしょう」(平山さん)
服装以外にも、不測の事態に備えた装備があると安心です。紅葉ハイキングに必要な「持ち物リスト」を教えてもらいました。
【衣類・ザック】
「地肌に密着する肌着やタイツは汗の影響を受けやすいので、雨で濡れやすい靴下とともに、必ず着替えを持参しましょう。ザックはリュックサックやバックパックなど両手が自由になるタイプを、日帰りなら20~30L程度のサイズを選んでください。いずれもなるべく軽量のものを選んで持参するようにしましょう。
靴はスニーカーよりも、くるぶしまで覆った『ミッドカット』のトレッキングシューズか登山靴をはきましょう。突然の雨を防ぐために防水機能も重要です。
また、古い靴はソールが劣化してはがれていることがあるので、事前にチェックしておくと良いでしょう。手袋はけがの予防と防寒用に必需品です。軍手は濡れてしまうと滑りやすくなるので避けてください。帽子は暑い日でしたら日よけが付いたタイプを着用しましょう」(平山さん)
【飲食物】
「ハイキングとはいえ、山歩きは思いのほか体力を消耗します。歩きながら食べられるキャラメルやナッツ類などの行動食、非常時にも役立つハイカロリーの栄養補給食品も持参しましょう。
山歩きの際は、ペットボトルの飲料水やお茶だけでなく、保温性がある水筒にお湯を入れて持っていくのがオススメです。気温が下がって体が冷えてきたらそのままお湯を飲んだり、紅茶のパックやドリップコーヒーを淹れたりするのに便利です。
紅葉シーズンの低山の昼間では、まだ暑い日も少なくありません。スポーツドリンクも併用しつつ十分な水分量を確保し、こまめな水分補給で熱中症予防も心がけてください」(平山さん)
【その他】
「ストックは歩行をサポートし、脚の疲労の軽減に役立ちます。登山道から足を踏み外した際の救助ロープ代わりにもなります。紅葉シーズンは日没が思いのほか早く訪れますし、山中では昼間でも薄暗い所がありますので、ヘッドライトは必需品です。懐中電灯は片手がふさがってしまうので、おすすめできません。
コンパスは地図と合わせて行き先を確認したり、万が一道に迷ったりしたときに頼りになる存在です。ホイッスルも非常事態を知らせるのに役に立ちますので、ぜひ持参しましょう。スマートフォンも緊急連絡時の必需品で、電池切れに備えて必要時以外の電源オフと、予備のモバイルバッテリーも用意しておきましょう。
必要に応じた常備薬と、健康保険証も必ず持って行くように。けがなどの際に保険証なしで治療費全額を支払ったり再度提示のために現地へ出掛けたりするのは、お金と時間の大きなロスになります。
ティッシュぺーパー、タオルは何をするにも便利な存在です。ポリ袋は山のマナーである『ごみの持ち帰り』にも必要です。臭いや汁漏れしにくい、ジッパー付きの袋も役に立ちます」(平山さん)
日帰りの紅葉狩り低山ハイキングといっても、歩くコースの多くは人里離れた山の中です。万が一に備えて基本的な山歩きの基礎知識と必要・十分な装備を身に付け、鮮やかな紅葉の風景を満喫しましょう。
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