イギリスの航空会社、ヴァージン・アトランティック航空は9月26日、誰もが平等に旅行を楽しめる取り組みの一環として、フライトにイギリス手話(BSL)のトレーニングを受けた客室乗務員の搭乗をリクエストできるサービスの開始を発表した。イギリスの航空会社では初だという。
聴覚障害者への包括性を高めるため、同社は継続的なBSL研修に加え、機内エンターテイメントの字幕オプションを今後さらに増やし、予約サイトでの「スペシャルアシスタンスサービス」の内容やリンクもより明確にする。
加えて、オンデマンドBSL通訳サービスである「Sign Live」をカスタマーサービスとして導入することも発表した。
同社はすでに、全てのフライトにヒアリングループ(補聴器を使用している人の「聞こえ」を支援する設備)を配備している。
BSL研修は聴覚障害者の支援団体「Remark!」により提供されており、社内の誰もが受講可能。研修を受けた乗務員は2023年以降倍増しているという。
社内の誰もが受講できる。同社には以前からBSLができる客室乗務員はいたが、2023年に研修を始めて以降、受講者が倍増するなど手話ができる人材がそろってきた。
搭乗者は今後、フライト予定日の12週間前に申請することにより、どの便でもBSL研修を受けた客室乗務員の搭乗をリクエストできる。
同社は9月最終週の「国際ろう者週間」に合わせ、キャンペーン動画を公開した。
女子ラグビー選手のジョディー・オウンスリーさんと、コンテンツクリエイターの双子、バーハン姉妹が、イギリスのロンドンからアメリカのワシントンDCまでのフライトに搭乗。3人はいずれも聴覚障害がある。
動画では、3人がBSL研修を受けた客室乗務員とやりとりする様子などを見ることができる。
この体験についてオウンスリーさんは、「つい最近まで、1人で飛行機に乗ることにあまり自信がありませんでした。でも私たちが機内で安心して過ごせるように特別な研修を受けた乗務員をリクエストできることは、とても勇気をもらえます」と話した。
バーハン姉妹は、機内で手話が通じたことはとても嬉しく、自分たちの要望を伝えることができたことは大きな変化だったと語った。
全英難聴チャリティ団体RNIDの調査によると、調査対象の聴覚障害者のうち82%がこの1年の間に少なくとも1回は海外旅行を計画している。そのうち58%が機内での客室乗務員とのコミュニケーションを不安に感じており、10人中9人は、何か重大なアナウンスを逃すのではないかと懸念を抱いているという。
調査結果を受け、RNIDの包括性ディレクターは「イギリスの成人の3人に1人はなんらかの聴覚障害がある」と指摘する。「その多くが社会でネガティブな態度に直面し、疎外感や孤独を感じ、自尊心を傷つけられている」としている。