東京・明治神宮外苑再開発の事業者は9月28日、新宿区と港区の住民を対象に説明会を開催した。
この説明会に先立つ9日、事業者は樹木の伐採数を減らす計画の見直し案を発表している。
港区の説明会に参加した「明治神宮外苑を子どもたちの未来につなぐ有志の会」代表の加藤なぎささんによると、説明会は伐採本数の削減に関する話が中心だった。
しかし加藤さんは「住民は、伐採する数が減ったから開発を良しとするわけではなく、伐採数削減で開発をめぐる問題を矮小化しないでほしいという思いがあります」と説明会後に記者団の取材に答えた。
加藤さんらが求め続けているのが、専門家を交えた意見交換の場だ。
神宮外苑の再開発では、多くの樹木を伐採して、秩父宮ラグビー場と神宮球場を建て替え、高層ビルやホテルを建設する。
ユネスコの諮問機関として世界文化遺産の保護・保存などを行うイコモスの日本国内委員会などは、開発が環境に与える問題点などを指摘してきた。
28日の説明会でも、参加者から「専門家との対話の場を設置してほしい」という要望が出されたものの、事業者から開催についての回答は得られなかったという。
加藤さんは、事業者が専門家の質問に直接答える場を設けることは、開発を進めていく上でマストだと感じていると語った。
「建築、環境、ランドスケープ、さまざまな分野の専門家の方がこの開発に異議を唱え、科学的な問題点を指摘しています。住民や子育てをするものとしては、そういった専門家の指摘にきちんと答えてもらわない限り、この開発が未来にどういう影響を与えるかを知ることができません」
神宮外苑の再開発についてヒアリングを行った国連人権理事会の「ビジネスと人権」作業部会は、パブリックコンサルテーションが不足していると指摘している。
加藤さんは「専門家を交えての対話が、今不足しているパブリックコンサルテーションではないかなと思います」と述べた。
神宮外苑は100年前に国民の献金や献木、ボランティアで作られた歴史的な公園だ。
加藤さんは「創建の経緯を考えるとステークホルダーは国民全員だと思うんです。要請を受けた港区と新宿だけに参加者を区切るので範囲が足りないと思います」とも語り、専門家も含め、誰もが参加して計画について話し合う場を設けるよう求めた。