「ヒリヒリする9月を過ごしたい」
大谷翔平選手は、ドジャースに移籍する前のエンゼルス時代の最終年にこう話していた。「ヒリヒリする9月」とは言わずもがなプレーオフ(ポストシーズン)進出を指していた。
移籍1年目のシーズン。リハビリの影響で二刀流を封印し打者に専念すると、MLB史上初となる「50-50」(50本塁打・50盗塁)を達成。その打棒と快足でチームを牽引し、3年連続22回目の地区優勝へ導いた。
メジャー7年目で自身初のプレーオフ進出を実現させ、今後はワールドシリーズ出場を目指す戦いに挑んでいく。自身がこだわった「9月」。その活躍を振り返る。
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「人間じゃない」と言われた9月
9月。日本時間の朝、気がつくと「大谷翔平◯号ホームラン」「大谷翔平◯個目の盗塁」とニュース速報がスマホに頻繁に届いていた。
「50-50」へのカウントダウンが始まっていた。自身が例年得意とする6月に12本の本塁打を放つと、7月に6本、8月に11本の本塁打を記録。ナショナルリーグの本塁打ランキングで2位を一気に突き放した。
記録達成の日は、記憶にも残る一日となった。
現地時間9月19日(日本時間20日)のマイアミ・マーリンズ戦では6打数6安打(3本塁打を含む)10打点2盗塁。自身がアンバサダーを務める野球ゲームも公式Xで驚きの投稿をするほどだった。
第4打席で49号を放ち記録に大手をかけると、5打席で2打席連発となる50号、続く第6打席で51号を放った。第6打席のホームラン。日本の実況アナウンサーは声を荒げることなく、静かにダイヤモンドを回る大谷の様子を見守っていた。
マーリンズの本拠地・ローンデポ・パークは2023年のWBCで9回に投手として登板し、当時同僚だったマイク・トラウトを空振り三振に仕留めて世界一に輝いた場所だった。縁のある場所で新たな偉業を達成した。
「51-51」を達成し、本塁打・盗塁ともに自身の記録をあっという間に更新。海外の実況は「大谷翔平は人間じゃない」と驚きを持って活躍を形容した。
9月の大谷、ホームラン・盗塁だけじゃない
ホームランと盗塁の記録につい目が行ってしまうが、今の大谷選手はそれ以上に目を見張るデータがある。得点圏打率だ。日本時間27日のパドレス戦の試合終了時点での得点圏打率は5割4分2厘。
月間で見ると、7月は2割6分3厘、8月が0割9分5厘。9月の好調具合が著しい。
実際に地区優勝を決めた試合では決勝点となるタイムリーヒットも打っている。まさにチャンスに強い大谷、9月に照準を合わせていたのかと思わんばかりの活躍だ。
日本時間28日の敵地のロッキーズ戦では57個目の盗塁を決め、イチローさんが持つ日本人最多記録を更新。さらに第4打席では54本目の本塁打を放った。これで「54-57」となった。
ドジャースのレギュラーシーズン残りは2試合だが、「55-55」も射程圏内だ。ナショナルリーグのMVPを筆頭に、本塁打王と打点王のタイトル獲得も有力となっている。
宣言通り、「ヒリヒリした9月」を実現させた大谷翔平選手。自身初のポストシーズンへと戦いは続く。