「日本で雪が降らなくなるのを待つだけでいいのか」スノーボーダーたちの切実な問いかけ。気候変動の影響を目撃する私たちにできること

雪山で、気候変動の影響を肌で感じるスキーヤーやスノーボーダーたちが、気候変動対策とエネルギー政策をめぐり声を上げています。

「私たちは、このまま雪が降らなくなるのを、待つだけでいいのか」――。

気候変動が進み、日本でも雪が降らなくなったり、降雪量が大幅に減少したりする未来が刻一刻と近づいてきている。

危機を伝えるため、スキーヤーやスノーボーダーがつくるグループが、気候変動対策とエネルギー政策をめぐり、声をあげた。

北海道新聞と信濃毎日新聞の朝刊に10月8日、気候危機を訴える広告が掲載され、都内のアウトドアブランドのショーウィンドウでもメッセージが掲げられた。

信濃毎日新聞に掲載されたPOWの広告
信濃毎日新聞に掲載されたPOWの広告
Sumireko Tomita / HuffPost Japan

日本のスキー場に影響も。スキーヤーが肌で感じる「変化」

日本各地のスキー場では近年、真冬でも気温が高すぎるために雪が降らず、シーズンになってもオープンできないという状況が実際に起きている。

2022年末〜2023年のスノーシーズンでは、北海道関西圏のスキー場が雪不足で打撃を受け、オープンの遅延や営業の断念が相次いだ。十分な雪が降らず、山肌が剥き出しになっているゲレンデの写真も報じられた。

今回、広告を掲出して声を上げたのは、一般社団法人「Protect Our Winters Japan」(POW)だ。雪山で気温上昇の影響を肌で感じているスキーヤーやスノーボーダーがつくる団体で、スキー場関係者や学生向けの講演のほか、スキー場に対する再生可能エネルギー切り替えの働きかけなど様々な活動を行っている。

雪が降り始める時期や降り方も、確実に変化していると実感しているからこそ、気候変動対策やエネルギー政策の重要性を感じ、スノーシーズンを目前に声を上げた。

気候変動から「冬を守る」活動をする、スキーヤーやスノーボーダーの団体「POW」。写真は白馬でのグローバル気候マーチ
気候変動から「冬を守る」活動をする、スキーヤーやスノーボーダーの団体「POW」。写真は白馬でのグローバル気候マーチ
POW

「愛する冬を守るために、私たちが今できること」

広告では、スキーヤーやスノーボーダーだけでなく、スキー場や温泉宿、雪まつり、アウトドアブランド、雪解け水を必要とする農家、積雪地帯の自治体も全て「雪がなくなったら、全員負け。」とストレートに伝えている。

アウトドアブランドのPatagonia、THE NORTH FACE、スノーボードブランドのBurtonなども名前を連ねた。

POW事務局長の髙田翔太郎さんはハフポストの取材に、「気候変動の進行を間近で感じている私たちだからこそ、声を上げなければと感じました」と話す。

現在、エネルギー基本計画の改訂や温室効果ガス削減目標(NDC)の策定に向けた議論が行われている。

POWはそのタイミングで、スキー場などが多く位置する北海道と長野県の新聞に広告を打ち、「私たちは、このまま雪が降らなくなるのを、待つだけでいいのか」と問いかけた。

その上で、「愛する冬を守るために、私たちが今できること」として、3つの行動を挙げた。

・気候危機により雪が年々減っている事実を伝えること

・「1.5℃目標」に整合した気候変動政策を求めること

・気候変動対策に積極的に取り組む企業や議員を応援すること

POWによる新聞広告
POWによる新聞広告
POW

2015年にパリで開かれたCOP26では、産業革命前からの気温上昇を1.5℃に抑えるという目標に合意した。

気候変動に関する政府間パネル(IPCC)によると、気温上昇を約1.5℃に抑えるためには、2030年までに2010年比で世界全体のCO2排出量を約45%削減することが必要だ。

そのためには、各国のエネルギー政策が非常に重要となってくる。髙田さんはその点に関して、以下のように話す。

「これまでPOWは、気候変動の啓発の活動やスキー場の再エネ化、スキー場がある自治体の脱炭素化などの取り組みを後押ししてきました。でも、気候変動は科学者が予測している以上のスピードで進んでいます。本気で解決するためにはエネルギー政策が大切なので、今回アクションを起こしました」

広告と共に特設サイトも公開され、サイトではより詳細な情報がチェックできる。

広告は、渋谷区内のBurtonやPatagonia、THE NORTH FACE、KEENなどでも、ショーウィンドウや店内に掲げられた。

原宿にあるBurton旗艦店のショーウィンドウに掲げられた広告
原宿にあるBurton旗艦店のショーウィンドウに掲げられた広告
Sumireko Tomita / HuffPost Japan

「1.5℃目標」に向け、エネルギー政策で今なにが必要か

POWは広告掲載のほかに、アウトドアコミュニティと共に、「1.5℃目標」に沿った気候変動政策を求める政策提言も行う。

提言では、審議中の第7エネルギー基本計画を踏まえ、大きく分けて以下の2点を求める。

提言1 主要な気候変動政策が「1.5℃目標」に整合すること。

提言2 気候変動の影響を受ける人々の声も政策に反映できるようにするなど、気候変動政策の「決め方」の見直し

提言1では、NDCやエネルギー基本計画、GX2040ビジョンに「1.5℃目標」を明記した上で、それらがどう目標に整合しているかの説明を要求。

提言2では、審議会や研究会のメンバーの所属やジェンダーなどに偏りが見受けられるため、人選方法を変更し、気候変動の影響を現に受けている当事者の声を気候変動政策に反映させる仕組みづくりを求めている。

「1.5℃の約束 いますぐ動こう、気温上昇を止めるために」
「1.5℃の約束 いますぐ動こう、気温上昇を止めるために」
HuffPost Japan

猛暑や豪雨などが発生する背景には様々な要因がありますが、近年頻発化・激甚化している異常気象の背景の一つには、気候変動の影響があります。

気候変動の主な原因が、大量の温室効果ガス排出などの人間活動であるということは、科学的に「疑う余地がない」と言われています。熱中症や災害への警戒や対策を行うと同時に、気候変動を止める行動が必要不可欠です。

そのためには、国や企業の脱炭素化を急速に進めることが重要です。政策や企業行動に注目し、声を上げることも大切なアクションの一つです。個人でできることもあります。

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