ユニセフ(国連児童基金)の事務局次長が9月、国連の定例記者会見にヨルダン川西岸地区からオンラインで参加し、自身が訪問したイスラエルやパレスチナ自治区ガザ地区、ヨルダン川西岸地区の現状を報告した。
事務局次長のテッド・チャイバン氏は、前回訪問した1月から現在までに、ガザ地区における「破壊と子どもたちの苦しみの規模は著しく増大している」と指摘。
「人々がそこへの退避を強いられた『安全地帯』と呼ばれる場所」自体が爆撃され、「間違いなくガザ地区には安全な場所はない」と報告し、改めて停戦を求めた。
ガザ地区では学校や病院、避難施設に対する壊滅的な攻撃が続き、「すでに手一杯の状態にある病院は、困難に打ちのめされている」と述べた。ガザ地区だけでなく、ヨルダン川西岸でも子どもたちが教育を受けられない状態が何カ月も続いており、「子ども時代を失われた世代が生まれる危機に直面している」と強調した。
チャイバン氏は今回の訪問で、各地の子どもたちと面会した。ガザ地区北部の小児病院を訪問した際には、爆撃の破片で重傷を負った生後数カ月の赤ちゃんや、重度の急性栄養不良に苦しむ乳児など医療搬送が必要な子どもに多く出会ったという。
チャイバン氏は「一刻も早く搬送しなければ、この子たちは助かりません。私たちは他の国連機関と協力して、こうした子どもたちを治療のために地区外に搬送できるよう全力を尽くします」と報告した。
さらに、ヨルダン川西岸地区でも、軍事作戦によって深刻な被害が生じ、子どもたちの学習の機会も阻まれていると指摘。
2023年10月7日以降、166人のパレスチナの子どもと2人のイスラエルの子どもが命を落としたとして、「これは耐え難い状況であり、事態の沈静化と自制が必要だ」と訴えた。
その上で、チャイバン氏は「ガザ地区で継続する破壊とヨルダン川西岸地区で激化する暴力によって、この地域に平和や安全がもたらされることはありません」と述べ、停戦を呼びかけた。
10月7日以降、4万人以上のパレスチナ人が殺害され、その大半が子どもと女性とみられる。
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