実力派韓国俳優が料理する姿に癒やされるバラエティ「三食ごはん」登場するもやしご飯を作ってみた

ライターの西森路代さんと白央篤司さんによる「食」をめぐるリレーコラム。今回は、西森さんが以前から気になっていた韓国のバラエティ『三食ごはん』を鑑賞、実力派俳優が作った料理を再現してみました。

以前から気になっていた『三食ごはん』を、「この連載もあることだし」と見てみることにしました。

『三食ごはん』というのは、韓国のバラエティ番組で、2014年に放送が開始してから、現在までシーズン9までが放送されています。主に3人の韓国の俳優が、どこかの田舎町などの家に数日間滞在し、そこで採れる食材で料理を作って暮らすというもの。

シーズン1から順番に見ていけばいいのですが、私はチャ・スンウォンとユ・ヘジンとソン・ホジュンが出演している最新シリーズから見てみることにしました。

韓国の人気俳優が漁村で暮らす

というのも、チャ・スンウォンは、その昔は、『最高の愛〜恋はドゥグンドゥグン~』(2011年)というドラマのトッコ・ジンという役で、大いに笑わせてもらいましたし、近年は映画『毒戦』(2018年)などでの怪演や、イ・ビョンホンなどと共演しているNetflixのオリジナルドラマ『私たちのブルース』(2022年)なども楽しく見ていたからです。

もちろん、ユ・ヘジンの作品もたくさん見てきました。『タクシー運転手 約束は海を越えて』(2018年)などでの人の好い役柄も印象に残る俳優ですが、『生き残るための3つの取引』(2011年)のような韓国ノワールでは、狡猾なヤクザ役もハマります。長年、バイプレイヤー的な役を数多く演じてきましたが、最近は『LUCK-KEY ラッキー』(2016年)や『マルモイ ことばあつめ』(2020年)などの主演作が増え始め、今は韓国を代表する俳優といった感もありますね。10月には出演作である『破墓/パミョ』が日本で公開予定でもあります。

この3人はシーズン2から一緒に暮らした仲で、コンビネーションもばっちりのよう。シーズン9では、とある漁村での生活がはじまります。いつもと違うのは、この撮影がコロナ禍に撮影されたものだということ。ユ・ヘジンは冒頭で「僕たちだけ気楽な島暮らしをしていいものかと、そう思う一方で、ストレスがたまるご時世に、皆さんに笑っていただける映像や、爽快な映像をお届けできればと」 と語ります。

一行が島について1日目はあいにくの雨。その中で、チャ・スンウォンはキムチ作りに、ユ・ヘジンは海に餌をしかけにいきます。

番組の雰囲気は、日本のバラエティで言うならば、無人島生活のような感じでしょうか。違うのは、スタジオでコメントする人はおらず、またナレーションもないということです。出演者も、食レポみたいなことを無理にしたり、カメラに向かって「獲ったどー!」みたいな決め台詞のようなものを言ったりもせず、どちらかというと、『水曜どうでしょう』のような、本人たちの素が見えるような作りになっています。

だからこそ、見ていると、それぞれの人となりがわかるのです。チャ・スンウォンは料理を作るときにもサングラスをかけ、かっこいい衣装でスタイリッシュに決めていて、それが妙に笑えたりもします。後輩であるソン・ホジュンとのコミュニケーションは、兵役などでもこんな感じなのかなと思えるような先輩・後輩っぷり。ホジュンが戸惑いながらも一生懸命に役に立とうとしているのですが、ユン・ヘジンは、彼がもう37歳だったと知って、もっと大人の扱いをしてあげないとと、さりげなく助け船を出すのでした。

ユン・ヘジンは、映画でも本当に人がいい役が多いのですが、この番組でもにこやかでのほほんとしていて、とてもかわいらしい存在。仕掛けたエサに魚がかかっていなくっても、決して苛立ったりしません。夜中にひとり、英語を勉強しながらもすぐに眠ってしまう姿にほっこり、というかもはや愛らしすぎてキュンとなりそうでした。

彼らが作る料理にも、初めて知ることがいっぱい。初日はチャ・スンウォンがキムチをつけますが、そこで驚いたのは、キムチを作るときに、小麦粉を水にとかし、鍋にかけて糊状にし、それを少し乾燥させて、その中に、唐辛子などの調味料を入れていたこと。粘りのある調味料にすることで、白菜などの野菜に馴染むようになっているようでした。

初日はあいにくの雨でしたが、そんな中でも、薪に火をつけ、かまどで炊いた豆もやしご飯に、薬味のたっぷり入ったタレをかけて食べたり、出汁をとったスープに小麦粉でつくったほうとうを入れたりして作ったごはんを、3人が寒い野外で息を白くしながら食べる姿は、究極の癒やしでした。

コロナ禍前後の「ヒーリングドラマ」ブーム

コロナ禍前後に、韓国では、郊外の田舎町や、海辺の漁村などに、疲れたヒロインが訪れて、田舎の人たちとふれあったり、田舎のご飯を食べたり自然に触れ合い、癒される姿を描いた「ヒーリングドラマ」が流行しましたが、この『三食ごはん』にも、そのような「ヒーリング」の効果があり、それもあって人気のシリーズになっているのだなと思いました。 

今回はあまりにもおいしそうだったので、もやしご飯と、薬味だれを、見様見真似で作ってみました。作り方は至ってシンプルで、ごはんを炊くときに、豆もやしをたっぷりいれて炊くだけ。薬味タレも、ネギに醤油やごま油や 粉唐辛子などを適当にあわせただけです。本物の味には遠いかもしれないけれど、素朴でヘルシーで、またやりたいなと思えました。

こんなに癒されて楽しくておいしそうなシリーズも、これから見続けていきたいものです。 

(文:西森路代  編集:毛谷村真木/ハフポスト日本版)

豆もやしごはん
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豆もやしごはん