米大統領選挙の共和党候補ドナルド・トランプ氏とJ.D.ヴァンス氏による「ハイチ移民がペットを食べている」という人種差別的な主張のせいで、オハイオ州スプリングフィールドでは、学校や市役所などに爆破予告が相次ぐなど、地域の人々の間に不安が広まっている。
オハイオ州知事を含め、地元政治家や当局は、ハイチ移民がペットを誘拐して食べているような事実はないと何度も否定してきた。
しかしトランプ氏やヴァンス氏は発言を撤回、謝罪することはなく、むしろ新たな差別的虚偽情報を拡散させている。
この主張に対し、州保健局のブルース・バンダーホフ局長は、州内で「重大あるいは認識できるような病気の増加は見られない」と否定している。
また、保健局は州内の感染症などのデータをウェブサイトに掲載しているが、目立った増加は見られない。
開発途上国では感染症が発生・流行する割合が高い。それは十分な医療環境が整っていないためであり、一定の国の人が病気を感染させやすいわけではない。
ヴァンス氏の「ハイチ移民が感染症を増やしている」という主張は、社会的に最も弱い立場の人たちを利用して支持を集めようとするだけではなく、世界の暗い歴史を繰り返す行為だ。
ドイツ・ナチス政権は「ユダヤ人がチフスを流行させている」という主張をプロパガンダとして使用し、医師らも加担した。
アメリカではHIV感染が拡大していた1983年、疾病管理予防センター(CDC)が感染割合が高いのは、「同性愛者、ヘロイン使用者、血友病患者、ハイチ人」だと特定した。
イリノイ大学准教授のA.ナオミ・パイク氏は、「これは近代医学の歴史上初めて、病的な状態を一つの国民集団を結びつけた事例だ」と著書で述べている。
CDCは後に、ハイチ人がウイルスに感染しやすいわけではないとしてリスクグループから外したが、すでに大きな影響が生じていた。
1990年代にアメリカへの亡命を求めたハイチ難民はHIV/AIDS検査を受けることが義務付けられ、陽性と診断された約200人がグアンタナモ収容所に入れられた。
スティグマは今も続いている。トランプ氏は大統領だった2017年、アメリカに来たばかりの1万5000人のハイチ人移民は「全員がエイズだ」と発言したと報じられた。
ハフポストUS版の記事を翻訳・編集しました。