【中秋の名月】月見団子の発祥はいつ?地域によって形が違うものも

地域によって月見団子の見た目や作り方が違うことを知っていますか?発祥の時期や理由も紹介します
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旧暦(太陰太陽暦)の8月15日の夜に眺められる満月は「中秋の名月」とも「十五夜」とも呼ばれ、2024年は9月17日にあたります。この日の名月を愛でる「お月見」行事に欠かせないのが、月見団子です。

ただ、2024年の中秋の名月は満月ではありません。満月は9月18日であり、名月と満月がずれる年もあるのです。満月は平均約29.5日の周期で現れるため、毎年中秋の名月が必ず満月になるわけではありません。しかし、中秋の名月は古くから、満月であってもなくても秋の収穫や自然に感謝する象徴的な日として特別視されてきました。

旧暦8月15日の月が「お月見」として別格なのはなぜなのか。また、お月見の折りに「月見団子」を供える風習が生まれたのかなどについて、歳時記×食文化研究所代表の北野智子さんに解説して頂きました。

お月見は平安貴族の行事だった

旧暦8月15日にお月見をする風習は、いつ頃から始まったのでしょうか。

「旧暦8月15日に月を愛でる十五夜の月見の習わしは、中国の『中秋節』という月を祀(まつ)る祭事が唐の時代(618~907年)に日本に伝わり、これに古くから日本にあった月を祀る風習が合わさったものだといわれています。

『中秋節』は初めに平安時代(794~1185年頃)の貴族に採り入れられて、宮中でも885(仁和元)年、あるいは897年(寛平9)に月見の宴が催されたといわれています。当初は詩歌(しいか)を詠んだり、管弦を楽しんだりする行事だったようです。

その後、月見の宴は秋の実り・収穫を控えた時季の豊作を願う行事として、民間にも広まっていったといわれています。旧暦8月15日の満月がとくに大切なものとされたのは、それが理由のようです。

お月見の折、月に供え物をするようになったのは、室町時代(1336~1573年)からとみられています」(北野さん)

団子を供えるようになったのは江戸時代

 お月見の供え物には、古くから団子が用いられていたのでしょうか。
「お月見は名月を愛でるだけでなく、秋の実り・収穫を祈り、感謝する意味合いが込められた行事ですから、もともと月見の折には、里芋や栗、大豆など、秋の初物の収穫物をお供えしていました。
一説には、十五夜の満月にちなんで、これら丸い形の作物を供えたとも伝わっており、十五夜のお月見に団子を供えるようになったのは、江戸時代に入ってからといわれています。
それまでは、十五夜には里芋、十三夜(旧暦9月13日の夜、2024年は10月15日)には豆が供えられていたようです。そのため、十五夜には『芋名月』、十三夜には『豆名月』という別名があります。月見団子が丸いのは、里芋をかたどったからともいわれています。
十五夜の時期はコメの収穫直前の端境期(はざかいき)にあたり、お櫃(ひつ)の底には欠け米が混じった古米が溜まってきます。それをふるいで通して、粒米はご飯として炊き、欠け米は粉にして団子にして供えたのではないかという説があります。
団子は団子汁や焼き団子として主食の代わりとされたほか、『ハレの日(年中行事やお祭りなどの特別な日)』の食べ物でもありました。お月見の折りに団子を供えたのには、そんな理由もあったのでしょう」(北野さん)

月見団子は白い丸形だけではない!?

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里芋など丸い形の収穫物が由来で、月の見かけに似せたためか、月見団子は全国的には「白い丸形」が主流のようです。ところが、京都などの関西エリアには、違った形と色をしている月見団子があることを御存知でしょうか。

ウェザーニュースでは、「あなたの地域のお月見団子は?」というアンケート調査を実施しました。結果を見ると、やはり全体的には白い丸形の団子が大半を占める一方で、関西では「餡かぶり」の割合が3割に上ります。

なぜ関西ではこのような形の月見団子が目立つのか。その理由については、1716年創業の京菓匠「笹屋伊織」(本店・京都市下京区)に伺いました。

「関東などでよく見られ、一般的にイメージされる月見団子は、白くて丸い形をしています。

けれど京都などの関西では、しずく型にしたお団子の白い部分を少し出すように餡(あん)をかぶせることがあります。これは、『芋名月』にちなんで、里芋に見立てて作られているからです」(笹屋伊織)

地域特有の月見団子も

餡かぶりのしずく型のように、白い丸形でない月見団子は他の地域でも存在するのでしょうか。

「“ところ変われば品変わる”と言いますが、生まれ育った土地の風習は、その人にとっては当たり前の事が、他所の土地を知るとその違いに驚くことがありますね。関西以外の地域で見られる、珍しい月見団子をいくつか紹介しましょう。

愛知県には、名物のういろうを用いた月見団子もあり、京都同様に里芋を模したしずく型です。色は茶と白、桃の三色をしています。茶色と白はそれぞれ、皮付きと皮をむいた里芋を表し、桃色は子どもが親しみやすい色として作られるようになったそうです。

また、静岡県の中部、駿河(するが)地方に伝わる月見団子は、『へそもち』と呼ばれています。平たい形で中央がへこんでおり、そこに餡をのせていただきます。お月見の日に地域の子どもたちが各戸をまわり、縁側に供えられたへそもちをもらい歩くという風習もあったそうです」(笹屋伊織)

先述のアンケート結果を見ると、沖縄は「その他」の回答が半数以上に上ります。一体どのようなものなのでしょうか。

「沖縄県では各家庭の『トートーメー(位牌)』や『ヒヌカン(火の神)』などに、小判型や俵型の餅に小豆をまぶした『フチャギ(吹上餅)』をお供えして、その後に月を拝みます。

フチャギの餅は現在では餅米を用いることも増えましたが、昔は餅粉や白玉粉をこねて蒸すのが主流でした。小豆も砂糖で甘く煮詰めず、軽く塩ゆでにしたものが好まれているそうです。

餅は月、小豆は星を表わすとされています。小豆の数が多いほど子孫繁栄につながり、まぶすのは、つぶすと小豆がもつ厄除けの効果が薄れるためといわれています」(笹屋伊織)

沖縄の八月十五夜は月を愛でるより「祈り」が主体で、地域によっては大綱引きなど、さまざまな行事も行われています。

月見団子はお月見に欠かせない和菓子として、全国各地で愛されています。お月見のお供えは、白い丸形の団子を積み上げるばかりではないようです。今年の十五夜には月を愛で、月見団子を味わいながら食べ物に感謝を捧げ、家内安全や健康、豊作なども祈ってみてはいかがでしょうか。

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