アメリカ・ペンシルベニア州で9月10日(現地時間)に開かれた米大統領選挙のテレビ討論会で、人工妊娠中絶をめぐる白熱した議論が繰り広げられた。
アメリカでは連邦最高裁が2022年6月に中絶の権利を認めた「ロー対ウェイド判決」を覆し、共和党が優勢の複数の州で中絶を厳しく規制する法律が次々と導入されている。
共和党候補ドナルド・トランプ氏は、最高裁がロー対ウェイド判決を覆したのは自分のおかげだと自画自賛してきた。
その一方で、2024年8月には6週間までしか中絶できないフロリダ州の州法律は短すぎるとして、州法の改正に賛同する立場を表明。しかしその直後に反対に立場を変えた。
トランプ氏は10日の討論会で、民主党の政策を批判して、「妊娠9カ月までの中絶や、生まれてきた赤ちゃんを“処刑”することも許容している」という主張をした。
これに対し、共同司会者のリンジー・デイヴィス氏は「生まれた後の赤ちゃんを殺すことが合法な州は、この国にはありません」と述べ、トランプ氏の主張の誤りを指摘した。
中絶禁止法案に拒否権を行使する?明確な回答を避ける
また、トランプ氏は「大統領に再選した場合に全米で人口妊娠中絶を禁止する法案に署名するか」と問われて、明確な返事を避けた。
民主党候補のカマラ・ハリス氏は討論会で「流産をした女性や、近親相姦の被害者などが中絶を受けられずに苦しんでいる」と指摘。
中絶禁止を支持してきたトランプ氏を批判して、同氏が再選すれば全米での妊娠中絶禁止の法案に署名するだろうと主張した。
トランプ氏は、「それは嘘だ」「州が決めることだ」と否定したものの、司会のデイヴィス氏に「全米での中絶禁止法案が連邦議会で可決された場合、拒否権を行使するか」と質問されると、「そうする必要はない」と述べ、その後バイデン政権の学生ローン免除に話題を変えた。
トランプ氏から明確な答えが得られなかったため、デイヴィス氏が再び「イエスかノーでお答えいただけますか?あなたが選んだ副大統領候補のJ.D.ヴァンス氏が、拒否権を行使すると言っているからです」と尋ねたところ、トランプ氏は「公平を期して言えば、J.D.とは話し合っていない。彼が特定の考えを持っていても気にしない」と答えた。
さらに「我々はそれを議論する必要はない。なぜなら彼女は決してそれを手に入れることができないだろうから」と説明を続けたが、「それを手に入れることができない彼女」が誰なのかは明らかにしなかった。
ニューヨークタイムズによると、連邦最高裁がロー対ウェイド判決を覆して以来、少なくとも22の州が人工妊娠中絶を禁止または厳しく制限している。