10月に東京ビッグサイトで開催される「国際航空宇宙展」に、イスラエルの軍需大手や、イスラエルに武器を輸出する欧米企業が多数出展する予定だとして、主催する「日本航空宇宙工業会」にそうした企業の参加を禁止するよう求める声が上がっている。
オンライン署名の呼びかけ団体などが9月10日、参議院議員会館(東京・千代田区)で記者会見を開き、「展示会の海外ブースは事実上の武器見本市だ」と批判。パレスチナ自治区ガザ地区などへのイスラエルによる攻撃が続く中、「『死の商人』たちに商機を与えることは許されない」と訴えた。
「国際航空宇宙展」とは?1960年代にスタート
国際航空宇宙展は、国内外の企業や政府機関などが集まる日本最大級の航空・宇宙の総合展示会で、1966年に初めて開催された。
主催団体である日本航空宇宙工業会は、航空機やロケット、人工衛星などの開発・製造、貿易に関わる約130の企業が会員になっている。
展示会の開催は、2018年(東京)以来6年ぶりとなる。展示会の公式サイトによると、2016年の展示会の参加企業・団体は800を超え、ブース数は約1300に上った。
今回の出展者リストには、イスラエルの軍需大手エルビット・システムズのほか、ボーイング、ゼネラル・ダイナミックス、ロッキード・マーチン、BAEシステムズ、RTXといった欧米企業も名を連ねている。
これらの欧米企業はいずれも、国連人権理事会の特別報告者などの独立した専門家たちが6月に連名で発表した声明で、イスラエルに武器を供給している軍需企業として名指しされている。
声明は「これらの企業は、武器や部品、弾薬をイスラエル軍に送ることで、国際人権法および国際人道法の重大な違反に加担するリスクがある」と指摘し、武器の輸出を直ちに停止するよう求めている。
実際に、国際航空宇宙展に出展予定の米ボーイング社の武器は、多くの避難者が身を寄せるガザの学校やモスクへの爆撃で使用されたことが、CNNなど海外メディアの取材で明らかになっている。
「性能は戦地で証明済み」
日本航空宇宙工業会に対し、イスラエル企業などの参加を禁止するよう呼びかけるキャンペーンの中心となっているのは、「武器取引反対ネットワーク」(NAJAT)と「STOP大軍拡アクション」の2団体だ。
NAJAT代表の杉原浩司さんは記者会見で、「このタイミングで展示会が行われることには、二重の問題がある」として、2つの懸念を挙げた。
杉原さんがまず指摘したのが、「2022年12月のいわゆる安保3文書の閣議決定によって、5年間で軍事費に43兆円を投じる計画が進む中、海外の軍需企業が日本に武器を売り込むための場所として展示会が機能している」という点。
もう一つは、イスラエルによるパレスチナ自治区ガザ地区や、ヨルダン川西岸への攻撃が続く中での開催という点だ。
国際航空宇宙展の報告書によると、2018年には経済産業省や外務省、文部科学省、防衛省など複数の政府機関が後援した。
杉原さんは、「イスラエルによるジェノサイドが今まさに進行している中、官民一体で虐殺加担企業に堂々と儲け口を与えることは、あってはならない」と批判した。
「幕張メッセでの武器見本市に反対する会」の谷口初江さんによると、幕張メッセ(千葉市)では、これまで4回にわたって武器見本市が開催されたという。幕張メッセは千葉県などが出資する第三セクターの施設で、同県が最大株主となっている。
「我が社のミサイルの性能は戦地で証明済みです」「素人でも当たる銃です」「市街地の戦闘に向いている武器です」━。
これらの文言は、「過去に行われた武器見本市でのセールストーク」だといい、谷口さんは「どこかで誰かの命を奪う武器を売買する場所が武器見本市。こうした場では、今ガザで行われている民間人の虐殺も、武器の性能を証明するアピールになります」と述べた。
その上で、「そもそも武器を展示すること自体に反対ですが、せめてイスラエル企業と、イスラエルを支援している欧米企業の出展を主催者側は拒否するべきです」と強調した。
フランスはイスラエル企業の参加を禁止
武器を集めた展示会にイスラエル企業が参加できなくした国も出てきている。
フランス政府は6月開催の兵器見本市「ユーロサトリ2024」で、イスラエル企業の参加を禁止した。
フランス国防相はロイター通信に対し、「大統領がイスラエルに(ガザ地区の)ラファでの作戦停止を求めている今、展示会にイスラエル企業を招待する条件はもはや整っていない」とコメントした。
紛争地での人道支援などに取り組む日本国際ボランティアセンター(JVC)代表理事の今井高樹さんは記者会見で、「日本政府は『停戦を求める』と口で言うだけでなく、パレスチナの人々の命を守るために武器の供給を絶たないといけない」と強調した。
署名キャンペーンでは、防衛省や外務省、経産省に対しても、国際航空宇宙展を後援しないよう求めている。
さらに会見では、防衛省がイスラエル製の攻撃型ドローンの輸入を検討している問題についても言及があった。同省がこれまでに実証試験の契約を結んだドローン9機のうち、イスラエル製は5機に上る。
パレスチナ自治区ガザ地区の保健当局によると、2023年10月7日以降、4万人を超える人々がイスラエルの攻撃により殺害された。
在日パレスチナ人のNoraさんは、「イスラエルの空爆で、28人の親戚が殺されました。そのほとんどが子どもと高齢者です。日本が今後、イスラエルから攻撃型ドローンを購入すれば、ジェノサイドにさらに加担することになります」と話し、イスラエル企業から武器を輸入しないよう求めた。
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イスラエル企業などの出展を禁止するよう要請する声が上がっていることを、主催団体はどのように受け止めているのか。ハフポスト日本版は、日本航空宇宙工業会にコメントを求めており、回答があり次第追記する。
【取材・執筆=國﨑万智@machiruda0702)】