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新学期が始まります。
元気よく通学路を歩いていく子どもたちがいる一方で、この時期が来ることを恐れ、押しつぶされそうになっている子どもたちがいます。学校に行かない・行けない、不登校の子どもたちです。
不登校の子どもの数は、最新の統計では小・中学生合わせて約29万9000人(2022年度)。前年度に比べ22.1%増えて過去最多を更新しました。さらに、2021年度も前々年度から24.9%増加と、不登校の子どもは10年連続で増え続けています。
子どものなかには、学校に不自由さを感じ、自ら不登校を選ぶ子もいます。しかし、そんな「積極的不登校」の子はきわめて少数です。ほとんどの子は、友だちや先生との関係がうまくいかないなど、さまざまな理由で学校に行くことができず、そしてそのことに深い罪悪感を抱いています。
10代のうちから「自分はダメだ」「なんでみんなと同じにできないんだろう」と、自分を傷つけてしまう子どもたち。そんな子には、「あなたは悪くない」「大丈夫」と見守り、支える大人の存在が欠かせません。とりわけ、子どもの近くにいる保護者の役割はとても大きいです。
子どももつらい、親もつらい
とはいえ、子どもが不登校になると親もまた、つらい思いをすることが多いです。
第一に、相談先が整備されていません。子どもが「学校に行きたくない」と言った場合、まずは学校の先生に相談するケースが多いかと思いますが、多くの学校の先生は不登校の対応に慣れていません。先生は大変忙しく、教室に来ている子を見るのに手一杯で、来ていない子のことまで気を回す十分な余裕がありません。
また、先生から家への電話連絡や家庭訪問などを提案されることもありますが、多くの子どもにとって一番してほしくないことが「先生の家庭訪問」です。ただでさえ自分を傷つけている子どもが、外部刺激によってさらに傷ついてしまうことになりかねません。
第二に、不登校の親は孤独です。「ママ友」コミュニティのようなものは、子どもが不登校になると頼りづらくなります。「ママ友」も学校の先生も難しい、となれば、あとは家族や親族に相談することになるでしょう。
しかし、必ずしもそれが良い方向にいくとも限りません。パートナーと不登校に関する意見が食い違い、より疲弊してしまうというケースもたくさん見てきました。
子どももつらい。親もつらい。それが不登校の問題です。
親と子、なぜすれ違うのか
つらい者同士の親子は、しばしば対立します。朝、布団から出られず「学校に行きたくない」と訴える子どもと「行きなさい!」と怒る親。なかには強引に引っ張って車に乗せて連れて行ったというケースや「お金をあげるから学校行って」と餌で釣ったケースも。
しかし子どもの意思に反して無理に学校へ行かせても、傷ついた心が回復するわけではありません。むしろ「親もわかってくれなかった」と子どもの孤立感をさらに深める結果になってしまいます。
親と子のバトルはなぜ起きてしまうのか。親と子がともに前を向いて歩き出すヒントはどこにあるのでしょうか。
これまでたくさんの親御さんに話を聞いてきました。いじめ、体罰、昼夜逆転、勉強の遅れなど、不登校の原因やケースはさまざまでした。しかし、親御さんに共通していることがあります。わが子を愛しているということです。
だからこそ、勉強が心配、将来が心配になるのです。しかしそうした心配からの声かけ・対応は、子どもからすれば「現状の否定」にほかなりません。ここにすれ違いが生まれます。
必要なのは休息の場
これまで多くの不登校関係者と出会ってきた1人として、断言できることがあります。学校で傷つき、不登校になっている子どもたちに何よりも必要なのは「休息の場」です。心を落ち着け、傷を癒すことのできる場所です。その場所が「家庭」であることが望ましいのは言うまでもありません。どうか心配な気持ちをこらえて、まずは子どもを否定せず、家で休むことを許してあげてください。
「そんなことをしたら、もう学校へ行かなくなってしまう」と思われるかもしれません。しかし、それは杞憂です。文科省の調査では、中学校で不登校だった子どもの約8割以上が20歳の時点で進学や就労をしていました。子どもたちは、これからずっと家で休み続けるわけではありません。心が休まり気力が回復してくれば「学校行こうかな」「バイトでも始めようかな」と、外の世界に再び向かっていきます。必要なのは、「一時の休憩場所」なのです。
どうか安心してください。「うちの子は大丈夫」、そう信じてあげてください。心配や不安に押しつぶされそうになったら、信頼できる人に相談してください。味方は必ずいます。
不登校に関する相談は、全国の教育支援センターやスクールカウンセラー、またはフリースクールや「不登校の子を持つ親の会」に相談してください。あるいは、あなたが信頼している人であればどなたでもかまいません。そして、相談の結果、もしあなたを否定するアドバイスがきたら、それには耳を貸さなくて大丈夫。あなたとお子さん、両者をともに肯定するメッセージにこそ耳を傾けてください。
子どものためにも、まずあなたが自分自身の生活を取り戻してほしいのです。子どもは驚くほど親を見ています。親の不安は子どもに伝わります。これまで子どもの声を聞く中でとても多かったのが「自分のせいで親を苦しめているのが一番つらい」という声。だからまずは親御さんが「大丈夫だ」と信じてください。そしてその信頼もまた子どもに伝わります。
「どんなに苦しくても、親は自分の味方だ」。そう思えることが、子どもの命を救います。
ねじのまひる 教育問題や不登校・ひきこもりを専門にしたライター・編集者。これまで不登校の親・当事者、学校関係者など100人以上に取材してきた。
(編集:毛谷村真木/ハフポスト日本版)