パレスチナ自治区ガザ地区への攻撃を続けるイスラエル軍に武器を輸出しているとして、米ボーイング社に抗議する活動が8月22日夕、東京・千代田区の同社の日本法人「ボーイングジャパン」前であった。
呼びかけたのは、市民団体「武器取引反対ネットワーク」(NAJAT)。ボーイングジャパンが入る日本生命丸の内ビル前に集まった人たちは、「ボーイングは爆弾売るな!」「虐殺加担で儲けるな!」などと声を上げ、イスラエルへの武器提供をやめるよう求めた。
NAJAT代表の杉原浩司さんはマイクを握り、「ボーイングは今なおイスラエルに爆弾をはじめとする武器の輸出をおこなって儲けている」と批判した。
イスラエルに同調する各国政府だけではなく、イスラエルと取引を継続する企業もジェノサイドの責任を負っているとして、「自分たちが造った爆弾で、多くの人たちが今も殺されている。それを見て見ぬふりして、輸出を続けて利益を上げることは絶対に許されません」と訴えた。
ボーイング製の武器がイスラエル軍によるガザ攻撃で使用されていると、複数の海外メディアが報じている。
米メディアCNNは、国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)が運営する学校への6月上旬の空爆で、イスラエル軍がボーイング製の兵器「GBU-39」を使用していたと報じた。CNNの記者が現場で撮影した映像から、少なくとも2個のGBU-39の破片を特定したという。この爆撃で数十人が殺害されている。
8月10日には、多くの避難者が身を寄せていたガザ北部の学校とモスクをイスラエル軍が攻撃。死者数は100人を超えたと伝えられている。CNNによると、爆撃後の現場に残っていた部品が、GBU-39の一部だと確認されたという。
このほか、国際人権団体「アムネスティ・インターナショナル」は2023年12月、ボーイング社が製造する統合直接攻撃弾「JDAM」がガザ地区の民家への空爆に使用されたと報告。2度の空爆で、子ども19人を含む民間人43人が殺害されたという。
米紙ニューヨーク・タイムズは6月配信の記事で、数万回に及ぶ様々な兵器による空爆のうち、GBU-39が使用されたのはほんの一部に過ぎないとしながらも、空爆後に発見された残骸などを根拠に「イスラエルが明らかにGBU-39の使用を強化している」とする専門家のコメントを掲載。「GBU-39は、イスラエル軍が好んで使用する武器となりつつある」と指摘している。
武器輸出、「即時停止を」。ボーイング社など名指しで
国連人権理事会の特別報告者など独立した専門家たちは6月20日、連名で声明を発表。イスラエルへの武器や弾薬の提供は、重大な人権侵害や国際人道法違反に当たる恐れがあるなどとして、武器移送を続ける政府や企業に即時停止を求めた。
声明は、イスラエルに武器を供給している複数の軍需企業を名指ししており、その一つにボーイング社の名前が挙がっていた。
国際司法裁判所(ICJ)がイスラエルにガザ地区南部ラファでの軍事攻撃をただちに停止するよう暫定措置を命じたことや、国際刑事裁判所(ICC)の主任検察官が、戦争犯罪の容疑でイスラエルのネタニヤフ首相らへの逮捕状を請求したことを踏まえ、専門家らは「このような状況でイスラエルへの武器供与を継続することは、国際人権法や国際人道法に反する活動を故意に援助し、そうした援助から利益を得ているとみなされかねない」と警鐘を鳴らしている。
【取材・執筆=國﨑万智(@machiruda0702)】