米ディズニー、パークで死亡した女性の夫にDisney+を利用していたことを理由に裁判取り下げを求める

女性はパーク内のレストランで食事をした後にアレルギー反応を起こして死亡。ディズニー側は裁判はできないと主張している
ディズニー・ワールドにある大型ショッピングモールのディズニー・スプリングス(2020年5月19日撮影)
ディズニー・ワールドにある大型ショッピングモールのディズニー・スプリングス(2020年5月19日撮影)
SOPA Images via Getty Images

アメリカ・フロリダ州のウォルト・ディズニー・パーク&リゾートのレストランで食事をした後、アレルギー反応を起こして死亡した女性の夫に対し、ディズニー側が裁判を取り下げて第三者による仲裁で解決するよう求めている。

ディズニーは、夫が2019年にDisney+の無料視聴に申し込んだ時に規約に同意したため、同社に対する裁判はできないと主張している。

食後にアレルギー反応で死亡

亡くなった妻の遺産の代理人としてウォルト・ディズニー・パーク&リゾートを訴えたのは、ニューヨーク在住の医師ジェフリー・ピッコロ氏だ。

ピッコロ氏の弁護団が8月に裁判所に提出した書面によると、同氏は妻で医師のカノクポン・タングスアン氏と、自身の母親の3人で2023年10月にディズニー・ワールドを訪れ、ディズニー・スプリングスにあるラグラン・ロード・アイリッシュ・パブで食事をした。

タングスアン氏は乳製品とナッツのアレルギーで、このレストランを選んだのは、アレルギー対応可能と謳っていたからだったという。

ラグラン・ロード・アイリッシュ・パブのウェブサイトには、「注文前にシェフもしくは特別食の訓練を受けたキャストに相談できます。当店では、指定されたアレルギー原因物質がアレルギー対応メニューに混入しないよう、材料の調達や調理、取り扱い手順において合理的な努力をしています」と書かれている。

ピッコロ氏は、妻とともに乳製品やナッツを使わないメニューがあるかどうか確認したところ、ホールスタッフが「ある」と答えたと主張している。

その後何度も、タングスアン氏が注文した料理に乳製品やナッツが含まれていないかを尋ねたが、その度に含まれていないと言われたという。

しかしピッコロ氏の訴えによると、タングスアン氏は食事をしてから約45分後、プラネット・ハリウッドで一人で買い物をしている時に突然重度のアレルギー反応を起こした。

ピッコロ氏の母がかけた電話には知らない人物が出て、タングスアン氏が病院に運ばれたと伝えたという。

原告が裁判所に提出した書面によると、タングスアン氏は自分でエピペンを打ち、床に倒れた。居合わせた人が緊急通報して病院に運ばれたが死亡が確認された。

その後の検視で、死因は体内で乳製品とナッツの濃度が上昇したことによるアナフィラキシーと断定されたという。

裁判はできないと主張

ピッコロ氏は2024年2月に、ウォルト・ディズニー・パーク&リゾートとラグラン・ロード・アイリッシュ・パブを運営するグレート・アイリッシュ・パブを相手取り、5万ドルを超える損害賠償の支払いを求める裁判を起こした。

これに対してディズニー側は5月、ピッコロ氏が2019年にDisney+に申し込みをした際に、利用規約に含まれていた仲裁合意に同意していたとして、棄却を求める申立てをした。

ディズニー側によると、利用規約には「少額訴訟を除き、ユーザーと当社との間のいかなる紛争も集団訴訟放棄の対象となり、個別の拘束力のある仲裁によって解決されなければならない」と書かれている。

Disney+や、同社傘下のスポーツ動画サービスESPN+の登録者は全員、すべての紛争を仲裁で解決することを明記した規約に同意しているという。

またディズニーは、ピッコロ氏はDisney+の規約に加えて、2023年9月にディズニーワールドのチケットをMyDisney (マイディズニー)で購入した際にも同様の文言に同意しているとも主張。「ピッコロ氏が実際にディズニーの規約を確認したかどうかは重要ではない」と述べている。

原告は「荒唐無稽な議論」と反論

一方、ピッコロ氏の弁護団は、仲裁合意は「特定の規約の中に埋もれている」と反論。

さらに、ピッコロ氏はタングスアン氏の遺産を代理する立場として訴訟を起こしているが、契約に同意した時点ではタングスアン氏は存命だったため、遺産は存在しなかったと主張。そのため、利用規約に拘束されることはないとし、ディズニー側の申立てを「荒唐無稽な議論だ」と批判している。

ピッコロ氏の弁護団は「Disney+利用規約からは、ディズニーのテーマパークやリゾート敷地内のレストランで起きた妻の死につながるような怪我についても、仲裁に同意するという考えは読みとれない」と書面で主張している。

さらに、ディズニーの考えに同意すれば、約1億5000万人のDisney+のユーザーや、MyDisneyの利用者が、サービスとは無関係の事故に関連して裁判を起こせなくなると訴えている。

ハフポストUS版は、ウォルト・ディズニー・パーク&リゾートとグレート・アイリッシュ・パブにコメントの代理人にコメントを求めているが、これまでに回答はない。 

ディズニー広報は14日、CNNに対し「私たちは家族がお亡くなりになったことを深く悲しんでいます。このレストランはディズニーが所有・運営していないため、私たちも訴訟の対象にしようとする原告の弁護士に対して自分の立場を主張しているに過ぎません」とコメントしている。

ハフポストUS版の記事を翻訳・編集しました。

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