フランス大使館「長崎平和記念式典に参加」の写真、「広島で撮影されたもの」と取材に回答。理由は「技術的なミス」

在日フランス大使館が長崎の平和祈念式典に参加したとして投稿した写真。ハフポスト日本版の取材に、「広島で撮影されたもの」と認めました。「技術的なミスだった」と説明しています。

在日フランス大使館の公式Xアカウント(@ambafrancejp_jp)が8月9日、長崎の平和祈念式典に参加したとして投稿した写真が、長崎のものではないと指摘されていた問題。

同大使館はハフポスト日本版の取材に、「広島で撮影されたもの」と認めた。写真は既に削除しており、「技術的なミスだった」と理由を説明している。

ハフポストは9日夜、この投稿に関する記事を配信。同大使館に事実確認のため、質問を送付していた。

背景に広島の建物。Googleマップで確認

在日フランス大使館は8月9日午後3時半過ぎ、「今日という8月9日、長崎への原爆投下による犠牲者をわたしたちは忘れません。今年もフランスは長崎平和祈念式典に参加し、哀悼の意を捧げました」とXに投稿。

続いて「在日フランス大使館のニコラ・ティリエ公使が代表を務めました」と記述し、花が並べられた机の前にスーツ姿の人物が立つ写真をアップした。

しかし、写真の背景をGoogleマップのストリートビュー(2015年3月撮影)で確認すると、広島の平和記念式典の会場近くにある建物と酷似していることが判明した。

また、6日に広島で開かれた平和記念式典に参加したという「駐日オランダ王国大使館・総領事館」が公式Xアカウント(@PLinTokyo)に投稿した写真を見ても、在日フランス大使館がアップした写真の背景にある建物が写っていることがわかった。

つまり、在日フランス大使館が「長崎平和祈念式典に参加した」としてXに投稿した写真は、広島平和記念式典の様子を撮影した写真だった可能性が高いということだ。

フランス大使館が「長崎平和祈念式典に参加した」としてアップした写真(左)。Googleマップのストリートビューで確認すると、広島にある建物と酷似していた(赤い丸はハフポストが加工したもの)
フランス大使館が「長崎平和祈念式典に参加した」としてアップした写真(左)。Googleマップのストリートビューで確認すると、広島にある建物と酷似していた(赤い丸はハフポストが加工したもの)
左の写真は「在日フランス大使館の公式X」、右の写真は「Googleマップ」
広島の平和記念式典に参加したという「駐日ポーランド共和国大使館」がアップした写真(右)。同じ建物がフランス大使館の写真(左)に写っていることがわかる。(赤い丸はハフポストが加工したもの)
広島の平和記念式典に参加したという「駐日ポーランド共和国大使館」がアップした写真(右)。同じ建物がフランス大使館の写真(左)に写っていることがわかる。(赤い丸はハフポストが加工したもの)
左の写真は「在日フランス大使館」、右の写真は「駐日ポーランド共和国大使館」

フランス大使館は取材に「技術的なミス」

在日フランス大使館が投稿してから約3時間後、ハフポストはこのことを記事にまとめて配信した。

すると、写真が付いていた投稿は削除され、8月9日午後7時20分に「今日という8月9日、長崎への原爆投下による犠牲者をわたしたちは忘れません」などと文字だけで投稿し直されていた。

ハフポストは同日夜、在日フランス大使館に事実確認や、説明をせず当該投稿を削除した経緯について聞くため、5つの質問を送付。5日後の14日夕に返信があった。

まず、在日フランス大使館は「長崎の式典にフランス大使館を代表してニコラ・ティリエ公使が出席した」とした上で、「写真は長崎ではなく広島で撮影されたもの」と認めた。

なお、長崎市調査課も、平和祈念式典の招待状を送ったフランスからニコラ・ティリエ公使が参加したことを確認している。

では、なぜ長崎の平和祈念式典に参加したという投稿に広島の平和記念式典で撮影された写真を使用したのだろうか。

在日フランス大使館は「大使館のSNS投稿準備中の技術的なミス」と説明。「誠に遺憾なこと。誤りに気づき次第、すぐに取り下げた」とした。

「フランス大使館は毎年、広島と長崎の平和式典に出席しており、私たちはこのことを非常に大切に考えている」とも記述した。

当該投稿を巡っては、「長崎と広島、何より被爆者の方々に失礼極まりない行い」などとSNSで批判が集まったが、在日フランス大使館は「式典や犠牲者に対して大使館が表明する敬意について、疑念を持たれたり非難されることがあるとすれば、大変残念なこと」と回答。

「フランスのコミットメントと国際的な立場を誤解することにもなる」と言及し、「私たちとしては、そのような批判をされる方々に対して、よりよく知っていただけるよう努めてまいる所存」と述べた。

一方、説明もなしに当該投稿を削除した経緯については回答しなかった。

注目記事