アフリカの一部地域で発生した「エムポックス」(Mpox)について、世界保健機関(WHO)が8月14日に「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」を発表した。
アフリカを中心に、その他の地域での感染も確認され、感染拡大が懸念されている。
エムポックスはどんな感染症なのか。
どんな感染症か
国立感染症研究所のページ(2023年5月26日改訂)によると、エムポックスは、エムポックスウイルス感染による急性発疹性疾患。感染症法で4類感染症(動物への措置を含む消毒等の措置が必要)に位置付けられている。
主な症状は発熱と発疹。「多くは2〜4週間で自然に回復するが、小児らで重症化、死亡した症例の報告もある」と説明している。
これまで主にアフリカ中央部から西部にかけて発生しており、自然宿主はアフリカに生息するげっ歯類が疑われているが、現時点では不明という。
WHOの発表によると、エムポックスは2023年、コンゴ民主共和国で感染報告数が激増。2024年はさらに増えているといい、これまでに1万5600人以上の感染が確認され、537人以上が死亡したという。
感染状況は?
エムポックスは、コンゴ民主共和国の周辺国に加えて、アフリカ以外の地域でも、スウェーデンとパキンスタンでの感染が確認されている。
スウェーデンの保健当局は8月15日、国内でエムポックスの感染者が確認されたと発表。アフリカへの渡航中に感染し、今回の感染拡大においてアフリカ大陸以外で診断・確認された初めてのケースと説明している。
NHKによると、パキスタンの保健当局は8月16日、国内で1人の感染が確認されたと発表している。
エムポックスウイルスは2022年にも世界的に大流行し、WHOが緊急事態宣言を出している。アフリカだけでなくヨーロッパやアメリカで感染が拡大したが、その後に減少して宣言が解除された。
エムポックスウイルスには、大きく分けて2つ系統群ある。今回は2022年よりも重症化しやすく、ヒトからヒトへの感染力が高いとされる系統群の新株(クレード1b)が広まっているという。
予防法や日本への影響は?
WHOの緊急事態宣言を受けて、外務省は8月15日、アフリカ7カ国(コンゴ民主共和国、ブルンジ、ケニア、ルワンダ、ウガンダ、コンゴ共和国、中央アフリカ共和国)を対象に感染症危険情報(レベル1:十分注意してください)を発出。
国立感染症研究所は予防法として、家庭や市中における感染対策について「マスク着用」「咳エチケット」「手洗い」などを挙げている。
ワクチンについて「天然痘のワクチンである痘そうワクチンがエムポックス予防にも有効」と説明しているが、日本では1976年以降、痘そうワクチンの接種は行われていないという。
2022年に名称変更
以前は「サル痘」という名称だったが、 WHOが2022年11月28日、「Mpox(エムポックス)」の使用を推奨することを公表した。
名称変更の理由について、「2022年の世界的な流行時、人種差別的でスティグマを植え付けるような言葉がネットやその他の環境、コミュニティにおいて確認されたため」と説明している。