夏の自動車内はエンジンを切ってから10分で熱中症の厳重警戒レベルに達することが、自動車大手「トヨタ」(愛知県)の実験でわかった。
一方、トヨタの調査に応じた1000人のうち4割弱が「車内のエアコンを切ってから10分は熱中症にならない」と回答したことも判明した。
トヨタは、車の中で起きる熱中症がどれくらい危険か示した動画「トヨタのとけネコ」をXで公開し、「車内に大切なものを残さないで」と注意を呼びかけている。
エアコンを切っても熱中症にならない時間は
トヨタは7月23〜25日、インターネット上で「車内の熱中症対策についての意識調査」を実施。車を日常的に運転する1000人(20〜60歳代)が回答した。
その結果、エアコンの適切使用や車内の事前冷却、日よけなど、車の中での熱中症対策を「完璧にできている」と回答した人は1.7%にとどまった。
つまり、対策を完璧にはおこなえていないと感じている人は98.3%に上るということだ。
特に、車体の温度を下げるのに効果的な「車体への散水」については、85.6%が「どちらかといえばできていない」「全くできていない」と答えていた。
また、「自動車内でエアコンを切っても熱中症にならない時間は何分か」と聞いたところ、27.1%が「10分」と回答した。「15分」や「20分以上」と回答した人を合わせると、「10分」以上と答えた人は39.8%に上る。
しかし、トヨタが実験したところ、10分以上ではエアコンの停止後に熱中症の厳重警戒レベルに到達することがわかった。
実験は、気温35度の静岡県で午後12時半からおこない、エアコン温度を18度で設定した車内のエアコンを切り、15分間のWBGT(暑さ指数) を計測。
すると、エアコン停止後5分後には「警戒」レベルに達し、10分後に「厳重警戒」レベル、15分後に最も深刻な「危険」レベルに達したという。
つまり、トヨタの調査では4割弱の人が車内のエアコンを切っても10分なら熱中症にならないと思っているが、実は厳重に警戒しなければならないレベルに達しているということだ。
ネコの置き物が暑さでスライムに……
トヨタの調査結果にコメントを寄せている名古屋工業大学先端医用物理・情報工学研究センターの平田晃正教授は、「子どもやペットの場合、大人と体型が異なるため体温が上昇しやすい。同じ環境下でも、幼児の体温上昇は大人の1.5倍程度になるとも言われている」と指摘。
その上で、「車内ではエンジン停止から10分程度で熱中症になる可能性がある。長距離ドライブでは、トイレ休憩が取りづらいなどの理由で水分補給を制限する人がいるが、30分程度に一度は水分補給をすることが重要」と述べていた。
また、トヨタは車内で起こる熱中症の危険性を可視化した映像「トヨタのとけネコ」を公式X(@TOYOTA_PR)で公開している。
外気温32.5度の環境下で車内にネコの置き物を設置。その結果、1時間後には車内の温度が55.7度に達し、ネコの置き物がスライムのように変形してしまった。
この映像を見た人たちからは、「凄く怖い。命を車内に置き去りにしないで」「この時期の車内、 自販機で買ったキンキンに冷えた飲み物が一気にぬるくなるくらい洒落にならない」といったコメントが寄せられていた。
トヨタは「車内に大切なものを残さない。少しの時間だからといって車内に取り残さないように意識することが大切」と呼びかけている。