育休を巡っては、厚生労働省が7月31日、2023年度の「雇用均等基本調査」(速報値)で、男性の育休取得率が過去最高の30.1%になったことを報告している。
一方、育休を短く取得して本来の目的を果たせない「取るだけ育休」や、育休後に予期しない配置転換やハラスメントを受ける「ネガティブな変化」も実際にあることがwithworkの調査で判明した。
育休を取得するだけでなく、“質”を上げていくためにはどうすればいいのだろうか。また、企業が考えなければならない育休取得後のフォローとは何か。
育休は取りやすかった?取得した期間は?
調査は6月18日〜7月14日、ウェブ上でアンケート調査を実施。育休取得経験のある男性194人と、育休取得経験のある男性の配偶者140人の計334人が回答した。
まず、育休の取得のしやすさについて男性に聞いたところ、60.6%が育休を「取得しやすかった」と回答した。「取得しにくかった」は20.7%、「どちらでもない」は18.7%だった。
つまり、約4割が「取得しにくかった」「どちらでもない」と答えたということだが、その理由としては、制度は仕組みは整っているものの「長期は取らないでほしいという趣旨の話があった」「上司の反応がネガティブだった」という声が挙がったという。
実際に育休を取得した期間については、「2週間〜3カ月未満」(44.0%)が最も多かった。次いで、「3カ月〜6カ月未満」(22.8%)、「6カ月〜12カ月未満」(18.1%)だった。
「取るだけ育休」と言われている「5日未満」は1.6%、「5日〜2週間」は5.2%といずれも1割を切った。
どれくらいの育休が適切?
では、育休を取得する期間はどれくらいが適切なのか。
回答が最も多かった「適切」な期間は、「6カ月〜12カ月未満」(85.7%)だった。理由としては、「1歳までの期間が一番成長が早く変化が大きいため、見逃すことなく、夫婦共に見守れた」などの意見がみられた。
一方、「不適切」な期間で最多だったのは「5日〜2週間」(50.0%)で、「2週間では妻の回復が不十分だった」「10日程度では満足に家事育児はできない」などの意見があった。
男性の配偶者の満足度も取得期間で比例する結果となり、夫が「5日未満」の育休しか取得していなかった場合、60.0%が「不満足」と回答した。
次に多かったのは「5日〜2週間未満」の33.3%。以降は「2週間〜3カ月未満」の19.0%、「3カ月〜6カ月未満」の14.3%と続いた。
なお、「6カ月〜12カ月未満」と「12カ月〜18カ月」、「18カ月以上」で不満足と回答した配偶者は一人もおらず、「12カ月〜18カ月」と「18カ月以上」はいずれも100%が「満足」と答えた。
調査では、配偶者の産休中(出生後8カ月)に育休を取得した男性は76.8%に上ることもわかった。
また、主な育休の取り方も4パターンあり、妻の育休中に取得する「夫婦同時型」が84.0%と最も多かった。
そのほかは、妻と育休をずらして取得する「妻とスイッチ型」が6.8%、妻は産休のみ取得して夫が育休を取得する「夫のみ育休取得型」が3.1%、「妻の産休中のみ取得」が1.9%などだった。
最も多かった「夫婦同時型」では、「連帯感が生まれた」「夫婦でともに試行錯誤できた」というメリットを挙げる人が多かった。反対に、「どっちが保育園のお迎えにいくか、残業問題などでもめた」と回答した人もいた。
降格やハラスメント。ネガティブな変化も
出産や子育てを巡っては、職場に復帰した女性が自らの意思とは関係なく出世コースから外れてしまう「マミートラック」の問題がある。
今回、育休を取得した男性にも同様の問題が起きていることが明らかになった。
まず、育休を取得して「満足だった」と答えた男性は86.6%に上ったが、「育休取得後にネガティブな変化があった」と回答した人も76.8%と高水準になった。
ネガティブな反応とはどんなものか。
例えば、「ボーナスの査定に響いた」「予期しない配置換えがあった」「育休を取ったことがない上司の引き継ぎが適当で復帰直後が大変だった」などが挙げられた。
また、「男性が家事育児メインで行っていることに理解を示されず、(育休後の)時短勤務について難色を示されている」「参加していたやりたいプロジェクトから議論の余地なしにはがされた」「降格させられてハラスメントを受けた」という声もあった。
このほか、「自分が育休中の人員が補填されなかった」「上司から育休中に散々陰口を言われていた」と、ネットスラング「子持ち様」問題につながる可能性について言及している人もいた。
男性も早い段階からキャリアを考える
調査結果について、withwork事業開発マネージャーの大野綾さんは「女性に対するジェンダー不平等は依然としてあるが、男性の場合は社内に育児をしてきたロールモデルがいないという問題もある」とハフポスト日本版の取材に答えた。
同社が運営するwithworkにも、育休後にネガティブな変化を受けた男性が転職の相談に来るケースが増えているといい、「このような男性は氷山の一角。企業は現在在籍する従業員の『育休取得と育休後』の両方を大切にしなければ、ますます人材は流出していく」と指摘した。
近年は、男性育休の取得実績がよくない企業は“選ばれない”傾向にあるため、育休の質を担保できていなければ「採用難にも直結する」という。
また、今回の調査では、「夫婦同時型」を筆頭に様々な育休取得のパターンがあることもわかった。
これについて大野さんは、「妻だけが先に職場復帰したり、夫のみ育休を取得したりする比較的新しいパターンも出てきたことは良い傾向だ」とし、「今ある型にはめるのではなく、育休の質を担保できる方法を夫婦で話し合い、自分たちのやり方を見つけてほしい」と語った。
ただ、withworkに寄せられる相談を分析すると、女性は出産や育休を想定したキャリア形成を早い段階から考えている人が多いが、特に40歳前後の男性は突然キャリアの転機に気づいて深く悩む人が多いという。
大野さんは、「夫婦で働き方と育児を両立するには、早い段階から具体的に自分のキャリアを考えておく必要がある。だからこそ育休取得の方法や過ごし方を話し合うことが必要で、それが育休の質や職場復帰後のモチベーションの向上につながる」と話した。