韓国ドラマ好きであれば、必ず曲を聞いたことがあるといっても過言ではない、人気アーティストがいる。
「10CM(シプセンチ)」は、ヒットする韓国ドラマではOST(オリジナルサウンドトラック)を必ず歌っていると言われるほど、今、引っ張りだこのシンガーだ。
10CMが8月10日、アジアツアーの一環で単独来日公演を開催。日本のファンを魅了した。
10CMの魅力とは。来日公演を取材した。
「10CM」ってどんな人?路上ライブから大ヒットドラマのOSTの常連に
韓国ドラマを観ていたら多くのヒット作品に、高音が美しい似通った歌声のOSTがあることに気付くかもしれない。おそらく、それが10CMの楽曲だ。
大ヒット作「トッケビ」(2016年)や、世界的に話題となり社会現象ともなった「愛の不時着」(2019)などに始まり、「賢い医師生活」(2020)、「マイ・デーモン」(2023)など数々の話題作でOSTを歌っている。
2024年前半の2大ヒット作品とも言われ、日本でも話題になった「ソンジェ背負って走れ」と「涙の女王」でも、2作品の代表的なOST、“Spring Snow”、“Tell Me It’s Not a Dream”を歌った。
デビューは2010年。「アメリカーノ」で大ヒットし、一躍有名に。
ソウルの若者の街・弘大では、今でも「バスキン」と呼ばれる若手アーティストらによる路上ライブが有名だが、10CMは実は、弘大のバスキンで人気を集めたアーティストの第一世代だ。
インディーズシーンからスタートし、「韓国音楽界のアイコン」になった今では、ドラマのOSTや大型フェスティバルの出演オファーが絶えない。
ファン待望の来日、日本公演ならではのアレンジも
今回のアジアツアー「2024 10CM Asia Tour <10CM Closer to You>」では、7月にタイ、マレーシア、シンガポールで公演。韓国ドラマの人気が高まる東南アジア各国などでは、ドラマOSTを歌う10CMのファンも急増している。
その次に訪れた日本での公演でもチケットは完売。Zepp Haneda(東京都大田区)の客席は1100人のファンで埋まった。
10CMは日本語で「会いたかったです」とファンに挨拶し、その後の曲の紹介などのMCも全て日本語でこなした。
コンサートは、ドラマ「スタートアップ」の“Where is Dream”と、「トッケビ」の“My Eyes”のアップテンポな明るいOST2曲でスタート。
その後も、オリジナルソングも挟みつつ、「その年、私たちは」から“Drawer”、「涙の女王」から“Tell Me It’s Not a Dream”、「ソンジェ背負って走れ」から“Spring Snow”などを歌い上げた。
10CMのバラードの魅力は、透き通るような高音の声。メロウな歌声でドラマの世界観も表現しつつ、コンサートでは少しロック風にアレンジしたOSTも披露した。
Spring Snowの歌唱中には、観客が「長い間待っていた。君は私たちの春だよ」と書かれたスローガンを掲げてサプライズ。
客席が黄緑色のスローガンで埋まる様子を見た10CMは、曲の後のMCで「感動しました。ありがとう」と笑い、観客との集合写真撮影時には、皆でフライングカードを掲げた写真も撮った。
オリジナルソングでは、日本公演ならではのアレンジをする一面も。
“Sleepless in Seoul”は、“Sleepless in Tokyo”として歌詞や曲名を東京版にして歌い、“Stalker”は「日本のファンの皆さんのために」と日本語に翻訳した歌詞で歌った。
(動画:東京公演の様子)
その他、日本の人気アーティスト・米津玄師の楽曲“Lady”を日本語で披露するなどして、来日を心待ちにしていた日本のファンからの応援に応えた。
アンコールでは1、2曲だけではなく、観客からのリクエストも聞きながら演奏を続け、デビュー当時のヒット曲「アメリカーノ」も披露。観客とやり取りもしながら演奏する、路上ライブ出身の「10CMらしさ」を見せた。
アジアツアーはこの後、8月末にはフィリピン、9月にマカオ、11月に香港とインドネシアでの公演を予定している。
10CMは、今後の日本での公演に関しても「またすぐに会えることを祈っています」「毎年お会いできるようにがんばります」とファンに語りかけた。