酷暑は「サイレントキラー」日本含むアジアの労働者74.7%が「熱ストレス」に。気候変動の影響でリスク増加

国際労働機関(ILO)は7月25日、酷暑が労働者に及ぼす影響について分析した報告書を発表した。
気温が35度を超えた東京・新宿=2024年7月
気温が35度を超えた東京・新宿=2024年7月
AFP=時事

「気候変動はすでに労働者の安全と健康に深刻な影響を与えています」

国際労働機関(ILO)は7月25日、酷暑が労働者に及ぼす影響について分析した報告書を発表した。

7月22日の世界平均気温が観測史上最高を更新するなど、近年世界的に厳しい暑さが続いている。

最も頻繁に過度の暑さにさらされる労働者は、世界平均で71%、アフリカで92.9%、アラブ諸国で83.6%にのぼる。日本を含むアジア太平洋地域は74.7%で、世界平均を上回った。

仕事中に過度な暑さにさらされると、病気や熱中症を引き起こすだけでなく、長期的に心臓や肺、腎臓に深刻な問題を及ぼすこともあるという。報告書は、酷暑は気付かないうちに命を奪う「サイレントキラー」だと警鐘を鳴らしている。

また、報告書では2020年に熱波※によって4200人の労働者が亡くなっているとの推計も示された。同年、熱波の中で働いた労働者は2億3100万人とされ、20年間で66%増加したという。

※気温が35℃を超える日が3日以上続くなど高温の期間が長く続く状態

ILOのジルベール・F・ウングボ事務局長は「世界が気温上昇と闘う中、労働者を熱ストレスから守らなければならない。猛暑の時期だけでなく、年間を通じて世界の労働者に未曾有の課題を突き付けている」と指摘している。

「これは人権問題であり、労働者の権利の問題であり、また経済問題でもある。労働者を保護するため、年間を通じた暑さ対策の計画と法律、職場における熱ストレスの調査と介入策を専門家間でうまく調整し、協力体制をつくることが必要だ」(ウングボ事務局長)

4月のILOの報告書によると、酷暑だけで毎年2285万人が労働災害に遭い、1万8970人が命を落としているという。さらに気候変動によって、暑さだけでなく紫外線や大気汚染、媒介感染症などの「カクテル(混合状態)」がもたらされている、と報告書は指摘している。

アントニオ・グテーレス国連事務総長はILOの報告書を受け、「この分断された世界で共通項があるとすれば、それは誰もがこの暑さを感じていることだ」とコメント。

「地球の気温は上昇し、あらゆる場所のあらゆる人を脅かしている。気温上昇に立ち向かい、人権に根差しつつ、労働者をいっそう保護しなければならない」と訴えかけた。

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