カハラホテルの名物シンパンケーキに揚げたてのマラサダ…。「帰りたくなかった」ハワイの食の思い出

ライターの西森路代さんと白央篤司さんによる「食」をめぐるリレーコラム。今回は、白央さんがプレスツアーで訪れたハワイで出会った食の数々を、旅の思い出とともに振り返ります。
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人生、何が起こるか本当に分からない。 

ハワイ州観光局主催のプレスツアーに、なぜか私が招待されてしまったのだ。ライター人生の中でも最大級に「私なんかでいいのか……?」と思ってしまったが、「ハワイのことをあまり(or ほぼ)知らない人にハワイを観てほしい」的な趣旨のツアーらしく、ありがたくお受けした。今回はハワイで食べたものを軸にしつつ、旅の思い出を書いてみたい。 

成田空港を離陸して約7時間20分ほどのフライトで到着、バスに乗り換えて市街地へ。矢印の書かれた標識に英字で「ワイキキ・ホノルル」とあるのを見て、「本当に来ちゃったんだな、ハワイへ」とぼんやり思い始めた。

花を付けた木々が車窓からたくさん見える。有名なプルメリアをはじめ、ねむの木や夾竹桃、デイゴらしき花も揺れて、色がいっぱいだ。

「6月から7月にかけて、ハワイは花の盛りなんですよ」と、観光局の方が教えてくれる。   

6月から7月にかけて、ハワイは花の盛り
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6月から7月にかけて、ハワイは花の盛り

中でも目を引いたのが、レインボーシャワーツリーという木。小さな花弁の集合体があふれんばかりに下がって、色彩的には桃色×薄黄色のグラデーション。ホノルルのいたるところで見かけたが、風が吹くたび花が散って、そのたびにこう……多幸感が吹雪になっているように思われた。

木の多さゆえか鳥も多く、様々なさえずりが街中でも聞こえてくる。日差しは強いが木陰も多いので風は涼やか。ハイビスカスやブーゲンビリアはいたるところに植えられている。着いて数十分のうちにその天国的な環境に圧倒されてしまった。

紅茶をパイナップルジュースで割る定番ドリンク 

ハワイでは定番、プランテーションアイスティー
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ハワイでは定番、プランテーションアイスティー

さあ、食の思い出に移ろう。

ハワイに着いて最初に口にしたのは、プランテーションアイスティーなるもの。紅茶がパイナップルジュースで割られている。これがおいしい! 夏の味だなあ……ハワイでは定番ドリンクとのこと。パイナップルのややもすると強すぎる甘さが、紅茶の苦みとよく合う。

帰国してから早速真似てみた。パイナップルジュースにアイスティーを加えて、さらにカットパインをざくざく刻んで加えてみる。ああ、ハワイの味だ。この夏、何度も作るだろうな。

『ザ・カハラホテル&リゾート』のシンパンケーキ
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『ザ・カハラホテル&リゾート』のシンパンケーキ

先のプランテーションアイスティーをいただいたのは『ザ・カハラホテル&リゾート』内にあるプルメリアビーチハウスにて。ここの名物のひとつという「シンパンケーキ」も忘れがたい一品だ。

薄焼きのパンケーキを丸めてシガールのような形にし、メープルバターシロップとココナッツシロップでいただくもの。厚焼きでは味わえない多層感と、そこに沁み込むシロップが口内であふれてくる感じがとてもいい。シロップが共にパンチのある甘さながら、自然な風合いと香りに満ちているのにも魅せられた。

『アペティート クラフトピッツァ&ワインバー』のマッシュルームのフリット
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『アペティート クラフトピッツァ&ワインバー』のマッシュルームのフリット

忘れがたいといえば、ワイキキビーチからもほど近い『アペティート クラフトピッツァ&ワインバー』でいただいた大きなマッシュルームのフリットが、おつまみとして最高すぎた。

大人の手のひらぐらいに成長した肉厚のマッシュルームは、うま味も香りも実に濃い。その軸とひだの部分を取り除いて揚げてある。食感はふわり軽いのもうれしいところ。

薪焼きピッツアの食欲を誘う香りと皮のおいしさも素晴らしかった
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薪焼きピッツアの食欲を誘う香りと皮のおいしさも素晴らしかった

こちらは日本人の伊藤直美シェフが率いるお店で、マッシュルームフリットは彼女のオリジナル。シンプルなようで、カリフワの食感に揚げるのはなかなか難しいと教えてくれた。薪焼きピッツアの食欲を誘う香りと皮のおいしさも素晴らしかったな。

滞在中、ハワイで働く日本人の方と数多くお会いした。料理人やホテルスタッフ、現地会社の広報担当にフォトグラファーの方などなど。旅行するうちハワイに魅了されて移住を決めた……なんて人も。

ハワイを歩きまわるうち、私も若い頃だったら移住とまではいかなくとも、一度こっちで働いてみるような展望を持ったかも……なんて妄想した。

さて、以下からは自由行動の日の思い出を。 

思わず「うまっ!」と声が出たマラサダ

『レナーズ・ベーカリー』のマラサダ
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『レナーズ・ベーカリー』のマラサダ

「すごくおいしいから、行っとけ!」

多くの友人に推された『レナーズ・ベーカリー』のマラサダ。確かに買って道端で食べたとき「うまっ!」と思わず声に出してしまい、通りすがる人に振り返られてしまった……。

マラサダはざっくりいうと砂糖をまぶした揚げパンで、ルーツはポルトガル。ハワイに移住した人々が広めたものだそう。レナーズのそれは、カリッと焼かれた香ばしさと、内側のふかふか感がとてもいい。素朴でやさしい甘さに、旅先だからか妙にほろりときてしまう。作り置きはしないそうで、揚げたてのぬくもりもうれしかった。行列は日常のよう。

常夏の国で揚げたてに列が絶えないのだから、いかに愛されているかが伺える。常夏といえば、ハワイ在住の女性が「私たちはコートやブーツのおしゃれを楽しめないんですよ」ともらしていたのを思い出す。なるほど、日本では「伊達の薄着」なんていうが、ハワイには「伊達の厚着」なんて言葉があったりするのだろうか。などと、話がそれてしまった。 

『レナーズ・ベーカリー』
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『レナーズ・ベーカリー』

『レナーズ・ベーカリー』、店のたたずまいがまた素敵だったんだ。昔のアメリカ映画の中にまぎれ込めたようで、うれしかったな。青空と白い雲がとてつもなく似合う。次回はクリーム入りのマラサダを絶対に食べるぞ。

『朝日グリル』のオックステールスープ
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『朝日グリル』のオックステールスープ

キリがないので、もう1軒だけ。

体にやさしく沁み入った、『朝日グリル』のオックステールスープを紹介しておきたい。牛の尾を丹念に煮たもので、牛肉ならではのコクはありつつ、味つけはあっさり。塩気もひかえめで、香菜と八角の香りがたまらなかった。

レギュラーサイズとスモールがあって、写真はスモールでごはん付き。日本人の一般的感覚ならじゅうぶんお腹を満たせる量に思う。付いてくるおろし生姜を途中で加えて味変するのもいい。洋食に疲れたとき訪ねてほしい。

『朝日グリル』
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『朝日グリル』

店内の雰囲気も、いいでしょう? 訪ねたとき、BGMでホイットニー・ヒューストンが流れてたのもなんだかよかった。

『朝日グリル』
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『朝日グリル』

『朝日グリル』という名前の店は2店あるのだけれど、私はワードアベニューのほうを訪ねた。日本のどこかにもこんな感じの食堂、ありそうですね。

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ああ、帰りたくなかったな……。

リゾートなぞ興味もなく生きてきたがすっかり魅了されてしまった。ハワイ、恐るべし。あふれる花々と海と山、心地よい風、ゆったりとした時の流れと楽園的な空気感に解放感……ハマる人が多いのに納得しました。

やっぱりもう1店だけ紹介させてほしい。

食いしんぼうの方にぜひ知らせておきたいのが『アーデン・ワイキキ』。日系カナダ人シェフのマコト・オノさん、そしてパティシエであるアマンダ・チェンさんの料理が楽しめるレストランだ。

『アーデン・ワイキキ』は『ロータス・ホノルル・アッと・ダイヤモンドヘッド』というホテルの中にある。立食パーティで出た料理がどれも素晴らしかった。写真はさわらのコロッケ
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『アーデン・ワイキキ』は『ロータス・ホノルル・アッと・ダイヤモンドヘッド』というホテルの中にある。立食パーティで出た料理がどれも素晴らしかった。写真はさわらのコロッケ

地元の食材もたっぷり、素材の持ち味に寄り添う繊細でシンプルな味つけに私はすっかり惚れ込んでしまった……。ハワイを再訪したら絶対にまた行って、今度はフルコースを味わうと決めている。 

野菜多めの機内食にも大満足

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行き帰りはANAの東京~ホノルル便、「FLYING HONU(フライングホヌ)」を利用。この人懐っこいルックス、撮らずにおれなかった。ホヌとはハワイで亀を意味して、幸福の象徴のひとつなのだそう。

機内食
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機内食

ANAの日本→ホノルル行き、エコノミークラス機内食の一例。牛肉の赤ワイン煮、おいしかったな。野菜が多めなのもありがたく。

うーーーーん、まんまと再びハワイに行きたくなっている。次は現地で生きる人々とその食生活をもっとたっぷり取材したい。

プルメリアの花はまちのいたるところに落ちている。朝の散歩で思わず拾ってしまった
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プルメリアの花はまちのいたるところに落ちている。朝の散歩で思わず拾ってしまった

白央篤司さんは、ハワイ州観光局より招待を受け、現地の視察ツアーに参加しました(ハフポスト日本版編集部より)