半数以上の保護者が「車内に子どもを置き去りにしたことがある」と答えたーー。
一般財団法人「日本気象協会」(東京)が推進する「熱中症ゼロへ」プロジェクトは7月17日、子どもの置き去り防止に関する呼びかけをおこなった。
夏の車内は20分で熱中症の厳重警戒レベルまで上昇するといい、「短時間だから大丈夫」という油断が命取りになるという。
子どもが熱中症死、各地で相次ぐ
車内に置き去りにされた子どもが熱中症死する事案は各地で相次いでいる。
新潟市で2022年5月、車内に3時間以上置き去りにされた1歳5カ月の幼児が死亡した。運転していた家族が子どもを保育園に送るために車に乗せたが、降ろし忘れてそのまま出勤してしまった。
神奈川県厚木市では22年7月、車内に残された幼いきょうだい2人が死亡した。母親は交際相手の家を訪れ、2人は駐車場の車内に置き去りにしていた。
この事件を受け、神奈川県は「子どもを車内に放置することは児童虐待(ネグレクト)にあたる」とウェブサイトで発信。
「日中の車内温度は50度を超える」「エンジンを停止させて15分後には熱中症指数が危険レベルにまで達する」などと注意喚起している。
50%超が子どもの置き去り経験あり
一方、一般社団法人「日本自動車連盟(JAF)」(東京)が2022年12月〜23年1月、12歳以下の子どもがいる246人に対し、「時間の長さに関わらず、少しの時間であっても子どもを車内に残したまま車を離れたことがあるか」と聞いたところ、54.9%が「ある」と回答した。
外気温がそれほど高くない日でも直射日光の当たる場所に駐車すると車内温度が上昇するといい、JAFのユーザーテストでは、気温34度の屋外に駐車したバスとミニバンの車内温度は1時間後に40度を超えたという。
また、熱中症予防指数「暑さ指数(WBGT)」は、駐車から20分後に「厳重警戒(28以上31未満)」となり、40分後には「危険(31以上)」レベルに達していた。
帝京大学医学部の三宅康史教授は、同プロジェクトの発表の中で「体が小さく暑さの影響を受けやすい子どもや、体温の調節機能が落ちて暑さを自覚しにくくなる高齢者は、通常時でも熱中症に特に注意が必要なため、暑い環境に置き去りにすることは絶対にやめましょう」と指摘。
熱中症の症状は時間がたって発生する場合もあるため、「すぐ戻るから大丈夫」といった油断は大変危険だとし、「運転者が責任を持つこと」や「ヒューマンエラーを防ぐための行動・設備の見直し」を呼びかけた。
また、社会の見守りにも言及し、「買い物や病院などで子どもを連れていても周囲が優しい目で見守ることが重要」としていた。
同プロジェクトも、「天候や気温に関わらず、子どもや高齢者、ペットを車内に置き去りにすることは絶対にやめましょう」と発信。
その上で、①理由を問わず残さない②少しの時間でも残さない③季節や天候を問わず残さないーーの頭文字をとった標語「りすきー」を周知した。